
不動産売却時の税金はいつ払う?タイミングや計算方法を解説
不動産を売却するときは、印紙税や登録免許税などさまざまな税金がかかります。
売却時の資金計画を立てる際は、税金を支払う時期や税額の計算方法をよく理解することが大切です。
今回は、不動産の売却時に課せられる税金の種類や支払うタイミング、税額の計算方法を解説します。
不動産売却時の税金と支払うタイミング
不動産を売却する際に課税される可能性がある税金は、下記の通りです。
- 印紙税
- 登録免許税
- 譲渡所得税
- 住民税
それぞれの内容や支払う時期をみていきましょう。
印紙税は売買契約時に支払う
印紙税は、不動産売買契約書や建築工事請負契約書など特定の文書に課税される税金です。
不動産の売買契約を結ぶ際、契約書に税額分の収入印紙を貼り付けて納税します。
不動産の売買契約書は、売主用と買主用の2通作成されるのが一般的です。
そのため、それぞれの契約書に課税される印紙税を負担します。
登録免許税は抵当権抹消登記の際に支払う
登録免許税は、登記手続きをする際に課せられる税金です。ローンを返済中の不動産を売却するとき、売主は登録免許税を納めます。
通常、ローンを組んで取得した不動産には「抵当権」が設定され、借入金の返済が滞ったときの担保となります。
不動産を売却する際は、借入金を完済し抵当権を抹消しなければなりません。
不動産を買主に引き渡したあと、抵当権を抹消する登記(抵当権抹消登記)をするときに、登録免許税を納めます。
そのため、ローンを返済していない不動産を売却するとき、売主には原則として登録免許税はかかりません。
不動産の所有権を買主に移転する際の「所有権移転登記」の登録免許税は、買主が負担するのが一般的です。
なお、登記手続きを司法書士に依頼するときは、別途報酬を支払う必要があります。
譲渡所得税は確定申告時に支払う
譲渡所得税は、不動産を売却して発生した利益(譲渡所得)にかかる税金です。
譲渡所得税がかかる場合、不動産を売却した翌年の3月15日※までに確定申告をして納税をする必要があります。
※土日祝により前後します。
例えば、2023年10月に不動産を売却した場合、譲渡所得税の納税期限は、翌2024年の3月15日です。
なお、2037年(令和19年)までは、所得税とあわせて復興特別所得税も納めます。
住民税は譲渡所得税の支払い翌年に支払う
不動産の売却時に譲渡所得が発生する場合は、住民税もかかります。
住民税を納めるタイミングは、確定申告をした翌年です。
例えば、2024年10月に不動産を売却した場合、確定申告の期限は2024年3月15日であるため、住民税を納めるのは2025年となります。
住民税の納税方法は、以下の2通りです。
- 普通徴収:市区町村から送られてくる納税書をもとに自分自身で納める方法
- 特別徴収:住民税を12回に分けて給与から天引きして納める方法
譲渡所得税の確定申告をするときに、納税方法を選択します。
普通徴収の場合、確定申告をした翌年の6月ごろに納税通知書が届きます。
一括納税の他にも、年4回の分割で納めることも可能です。
特別徴収の場合は、確定申告をした翌年の6月の給与から翌年5月まで計12回にわたって給与から天引きされます。
不動産売却時の税金はいくらかかる?計算方法を解説
続いて、印紙税や登録免許税、譲渡所得税、住民税の税額を詳しくみていきましょう。
印紙税の計算方法と税額
印紙税は、売買契約書に記載されている契約金額に応じて税額が決まります。具体的には、以下の通りです。
※出典:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」
不動産売買契約書が2027年(令和9年)3月31日までに作成されていれば、軽減税率の対象となり、印紙税額が軽減されます。
例えば、売買契約書に記載される不動産の売却金額が5,500万円である場合、本来の印紙税額は6万円ですが、軽減税率により3万円となります。
登録免許税の計算方法と税額
登録免許税は、登記の書類によって異なります。
抵当権抹消登記の場合、登録免許税の税額は「不動産1個につき1,000円」です。
例えば、土地と建物を売却した場合、抵当権抹消登記の際に2,000円の登録免許税を支払います。
また、司法書士に登記手続きを依頼するときの報酬額は5万〜10万円程度です。
譲渡所得税・住民税の計算方法と税額
不動産売却時の譲渡所得税と住民税は、譲渡所得金額に税率を乗じて計算します。
譲渡所得金額の計算方法は、以下の通りです。
- 譲渡所得=譲渡価額 -(取得費+譲渡費用)
※譲渡価額:不動産の売却価格
※取得費:売却した不動産を取得したときに支払った費用
※譲渡費用:不動産を売却するときに支払った諸経費
上記で計算した金額から、後述する3,000万円特別控除などの特別控除額を差し引いた残り(課税譲渡所得金額)に、以下の税率をかけると税額が算出されます。
例えば、2,000万円で取得した不動産を6年後に3,000万円で売却したとしましょう。
譲渡費用が200万円の場合、譲渡所得金額は「3,000万円−(2,000万円+200万円)=800万円」です。
売却した年の1月1日時点での所有期間は5年であるため、税率は所得税:15.315%、住民税5%となります。
特別控除額が0円である場合、譲渡所得税と住民税の税額は、それぞれ以下の通りです。
- 譲渡所得税:800万円×15.315%=約122.5万円
- 住民税:800万円×5%=40万円
- 合計:約122.5万円+40万円=約162.5万円
よって、不動産を売却した翌年の3月15日までに約122.5万円の譲渡所得税を納め、さらにその翌年に40万円の住民税を納めます。
不動産売却時の税負担を軽減できる3,000万円特別控除とは
「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例(以下、3,000万円特別控除)」は、マイホーム(居住用財産)を売却するときの特例です。
所定の要件を満たすと、譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。
3,000万円特別控除を適用できれば、不動産売却時の譲渡所得が3,000万円を超えない限り、譲渡所得税や住民税はかかりません。
この特例を受けられるのは、住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売るときです。
以前に住んでいた家屋や敷地などを売却する場合は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があります。
他にも、特例を受けるためにはいくつかの要件を満たす必要があります。
特例の要件や申請方法などの詳細は、下記記事をご覧ください。
「3,000万円特別控除とは?制度内容や利用時の注意点を解説」
まとめ
- 不動産を売却する際に課税される可能性がある税金には、印紙税、登録免許税、譲渡所得税、住民税がある
- 印紙税は売買契約を結ぶとき、登録免許税は抵当権抹消登記をするとき、譲渡所得税は確定申告をするとき、住民税は確定申告の翌年にそれぞれ支払う
- 3,000万円特別控除を適用できれば、最高3,000万円までの譲渡所得が非課税となる
品木 彰(シナキ アキラ)
プロフィール
保険・不動産・金融ライター。ファイナンシャルプランナー2級技能士。大手生命保険会社や人材会社での勤務を経て2019年1月に独立。年間で700本以上の記事執筆に加えて、不動産を始めとしたさまざまな記事の監修も担当している。
https://daisakukobayashi.com/