リバースモーゲージとは?利用するメリットやデメリットを解説
マイホームを所有する人は、リバースモーゲージを利用することで、自宅を担保にお金を借りることができます。
賃貸住宅と持ち家のどちらにしようか悩んでいる方は「リバースモーゲージが利用できるか」という視点で検討してみるのも方法です。
本記事では、リバースモーゲージのメリットやデメリット、向いている人の例などを分かりやすく解説します。
リバースモーゲージの基礎知識
リバースモーゲージは、住宅を担保に資金を借り入れることができる商品・制度です。
銀行をはじめとした金融機関だけでなく、自治体や社会福祉協議会などの公的機関もリバースモーゲージを取り扱っています。
資金を借り入れたあとは利息のみを支払っていき、借り入れた人が亡くなったときに担保となっている自宅を処分して借入金を返済します。
借入金は一括でまとめて受け取る他にも、定期的に一定金額を受け取ったり、契約金額の範囲内で必要なときに都度受け取ったりすることも可能です。※商品内容によって異なります。
老後資金を借り入れることができる
リバースモーゲージは、老後資金を借り入れることができる商品です。リバースモーゲージを利用することで、主な収入源が年金である高齢者でも生活に必要な資金を調達できます。
老後資金、教育資金、住宅購入資金は、人生の三大資金といわれるほど一般的に高額です。このうち、教育資金は教育ローンや奨学金、住宅購入資金は住宅ローンで借り入れることができます。
特に住宅ローンは、多くの金融機関が力を入れて取り扱っています。
一方で老後資金は、教育資金や住宅購入資金とは異なり借り入れで調達するのは困難です。
しかし、持ち家を所有しているのであれば、リバースモーゲージを利用することで老後資金を借り入れで準備できます。
毎月の支払いは利息のみ
一般的なローンは、借り入れをしたあとに元金と利息を合わせて支払っていきます。借入金額が高いほど、毎月の返済負担は重くなっていきます。
その点、リバースモーゲージであれば、借り入れたあとに支払うのは利息のみです。
借入金額が増えると返済負担が増える点は他のローンと同じですが、元金は亡くなるときまで返済をする必要がないため、支払いの負担が老後の家計を圧迫しにくいです。
住宅に住みながら老後資金を調達できる
まとまった資金が必要なときは、住宅を売却して売却代金を得るのも選択肢の1つです。しかし、売却後は新たな住処を探さなければなりません。
高齢であり主な収入源が年金である人は、賃貸住宅の申し込みをしても、審査に落ちてしまうかもしれません。
また、住み慣れた家を手放すことに抵抗を感じる人にとっては、売却は有効な選択肢とはいえないでしょう。
リバースモーゲージを利用すると、自宅は担保にはなるものの失うことはありません。まとまった資金を調達しつつも、引き続き住み慣れた住宅で暮らし続けることが可能です。
リバースモーゲージのデメリット
一方でリバースモーゲージには、以下3点のデメリットがあると考えられます。
- 資金の使い道が限られる
- 融資限度額がある
- マンションは対象外になることが多い
それぞれについて解説します。
資金の使い道が限られる
リバースモーゲージは、一般的に借り入れた資金の使い道が指定されています。資金の使い道はリバースモーゲージの取扱先によって異なりますが、代表的なものは以下の通りです。
- 老後での生活や医療、介護に必要となる費用
- 老人ホームの入居金
- 自宅のリフォーム費用
- 住宅ローンの残債の支払い
- 趣味やレジャーの費用
- 子どもや孫を支援するための費用
リバースモーゲージを利用する際は、借り入れたお金を希望通りの方法で利用できるかどうかを確認することが大切です。
融資限度額がある
リバースモーゲージには融資限度額が設定されます。取扱先によって融資限度額は異なりますが、一般的には自宅の評価額の50〜80%程度です。
リバースモーゲージの融資限度額を超える借り入れはできません。想定外に長生きをすると、融資限度額の上限に達してしまい、リバースモーゲージで資金を調達できなくなる可能性があります。
何歳まで生きられるかを予測するのは困難です。長生きによってリバースモーゲージの融資上限額に達したときに備えて、貯蓄でも老後資金を準備しておくことが大切です。
マンションは対象外になることが多い
リバースモーゲージのほとんどは戸建住宅が対象であり、マンションは対象外となっています。そのため、マンションに住んでいる方はリバースモーゲージの利用が困難です。
マンションが対象外である主な理由は、住宅の担保価値が主に土地の評価額で決められるためです。戸建住宅であれば、建物の価値が経年劣化によって失われても、土地の価値は残るでしょう。
しかし、マンションの場合は建物がある土地の一部の権利を所有しているに過ぎません。建物の経年劣化が進めば、区分所有のマンションの価値はとても低くなる可能性があります。
そのため、マンションを担保にリバースモーゲージを利用できるケースは非常に限られます。
リバースモーゲージとリースバックの違い
自宅を利用して資金を調達する方法には、リバースモーゲージの他にも「リースバック」があります。
リースバックは、所有者が自宅を売却したあと、不動産会社と賃貸契約を結び家賃を払うことで引き続き住み続けられる仕組みの商品です。
リースバックを利用すると売却金を得られますが、自宅の所有者は不動産会社となり、定期的に家賃を支払っていかなければなりません。
それに対してリバースモーゲージは自宅を担保に資金を借り入れる仕組みであるため、リースバックとは異なり自宅を引き続き所有できます。
また、毎月の支払いは利息のみであるため、リースバックよりも毎月の負担は抑えられるでしょう。
一方で、リバースモーゲージで調達した資金の使い道には一定の制限がありますが、リースバックで得た売却金は自由に使えます。
リバースモーゲージとリースバックには、それぞれに一長一短があるため、よく比較したうえで自分自身に合った方を選択することが大切です。
リバースモーゲージの利用が向いている人の例
リバースモーゲージの利用が向いている人の例は、以下の通りです。
- 老後の生活資金が不足している人
- 自宅を相続する必要がない人
- 施設への入居費用を準備したい人
計画的な貯蓄ができておらず、老後の生活資金が不足する可能性があるとき、持ち家があればリバースモーゲージを利用してまとまった資金を得られます。
リバースモーゲージを利用した場合、亡くなったときに自宅を売却しなければなりませんが、自宅の相続を希望する人がいないのであれば、さほど問題ではないでしょう。
老人ホームに入居するときは、多額の入居金がかかるかもしれません。そこで、リバースモーゲージを利用して自宅を担保にお金を借り、入居金を準備するのも方法です。
老後生活では、生活費だけでなく医療費や介護費用、老人ホームの入居費用などさまざまな費用がかかります。
老後資金を準備できるかどうか不安な人は、持ち家を所有し、リバースモーゲージによって資金を調達できるようにしておくのも1つの方法です。
まとめ
- リバースモーゲージを利用すると自宅を担保にお金を借りることができる
- 借り入れたお金は契約者が亡くなったときに自宅を処分して返済するため、毎月の支払いは基本的に利息のみ
- マンションはリバースモーゲージの対象にならないことがある。また、融資限度額を超える借り入れはできない
【コラム執筆者】
山本 健司
プロフィール
ミライアス株式会社代表取締役。大手不動産会社で全国1位の成績を連続受賞。不動産相談件数16,000件超。著書『初めてでも損をしない 不動産売却のヒケツ(サンルクス出版)』『損しない! モメない! 実家の不動産相続のヒケツ(サンルクス出版)』『全部一人でできる人になる不動産の仕事大全(ソシム社)』