リースバックとは?メリットやデメリット、失敗を防ぐポイントを解説
リースバックは、自宅を利用した資金調達方法です。通常の不動産売却とは異なり、自宅を手放すことなくまとまった現金を手にできます。
ただし、リースバックにはデメリットもあるため、仕組みや契約内容をよく理解したうえで契約しなければ失敗してしまいかねません。
そこで本記事では、リースバックのメリットやデメリット、失敗を防ぐために知っておきたいポイントを分かりやすく解説します。
リースバックの基礎知識
リースバックは、自宅を売却したあとも、家賃を支払うことで住み続けられるサービスです。
不動産会社やファイナンス会社などの業者に自宅を売却して売却代金を受け取ったあと、その業者と賃貸契約を結びます。
自宅の所有権は、リースバックへと移ります。
その後、業者に対して家賃(リース料)を支払っていくことで、売却した自宅に引き続き居住することが可能です。
また契約内容によっては、リースバックで売却した自宅を、一定期間が経過したあとに買い戻せることがあります。
リースバックの主なメリット
リースバックの主なメリットは、以下の通りです。
- すぐにまとまった資金を手にできる
- 引っ越しをする必要がない
- ランニングコストがかからなくなる
すぐにまとまった資金を手にできる
一般的に不動産を売却して資金を調達する場合、不動産会社に仲介を依頼して買主を探し、売買契約を結ばなければなりません。
不動産の売却にかかる期間は3〜6か月ほどであり、長い場合は1年以上かかることもあります。
そのため、通所の売却で資金を調達しようとすると、長い時間がかかりやすいのです。
その点、リースバックは、不動産会社やファイナンス会社などと契約を結ぶと、すぐにまとまった資金を手に入れることが可能です。
「事故に遭って入院が必要になった」「年収が下がって住宅ローンの返済が難しくなった」などの理由で突発的にお金が必要になったとき、リースバックは役に立つかもしれません。
引っ越しをする必要がない
自宅を売却してまとまった資金を得る場合、当然ながら引っ越しが必要となります。
そのため、自宅を売却したあとは別の家で暮らさなければなりません。また、新居を探すための手間や時間、引っ越しをするための費用もかかるでしょう。
リースバックであれば、リースバック業者に家賃を支払うことで引き続き売却した住まいに住み続けることができます。
「愛着のある家を手放したくない」「子どもを転校させたくない」などの理由で引っ越しをしたくない方にとっては、リースバックは魅力的といえます。
売却の事実を周囲に知られる心配がない
通常の不動産売却では、自宅の販売情報が不動産ポータルサイトや広告などに掲載されます。
そのため、近隣住民や家族に自宅を売却する事実を知られてしまう可能性があります。
リースバックであれば業者に直接売却するため、不動産ポータルサイトや広告などに自宅の情報が掲載されることはありません。
また、売却後も同じ家に住み続けるため、自分自身から言わない限り、売却の事実が周囲に気が付かれる可能性は低いといえます。
リースバックの主なデメリット
リースバックには、以下のようなデメリットがあります。
- 相場よりも売却価格が安くなる
- 家賃の支払いが発生する
- いつまでも住み続けられるとは限らない
相場よりも売却価格が安くなる
リースバックの売却価格は、相場の6〜8割程度といわれています。
これは、売主が家賃を滞納するリスクや将来的に物件が値下がりするリスクを、リースバック業者が負うことになるためです。
例えば、自宅の価格相場が3,000万円である場合、リースバックの売却価格は1,800万〜2,400万円となります。
住宅ローンを返済中である場合、リースバックで売却すると不動産会社による仲介で売却をしたときよりも、手元に残る金額は少なくなるでしょう。
残債が多いと、そもそもリースバックでは売却ができないかもしれません。
家賃の支払いが発生する
リースバックで売却した物件に住み続けるためには、リースバック業者に家賃を支払わなければなりません。
売却した自宅の築年数や立地、売却価格などによっては、毎月支払う家賃が相場よりも高くなることがあります。
売却後も引き続き自宅に住み続けられるとしても、家賃負担が重いと生活が苦しくなってしまいかねません。
リースバックで自宅を売却するときは、売却価格だけでなく、毎月の家賃を問題なく支払っていけるかどうかもよく確認することが大切です。
いつまでも住み続けられるとは限らない
リースバック業者と結ぶ賃貸契約は「定期借家契約」であるケースがほとんどです。
定期借家契約は、賃貸期間が終了したとき借主と貸主の双方が合意しなければ契約を更新できません。
賃貸契約が終了したあとも引き続き自宅に住みたいと考えていても、貸主であるリースバック業者が契約の更新を認めなければ、別の家に転居する必要があります。
リースバックを利用するのであれば、業者と結ぶ賃貸契約が定期借家契約であるかどうかを確認しておきましょう。
もし定期借家契約となっているのであれば、契約期間や更新の可否などもリースバック業者に尋ねることをおすすめします。
リースバックとリバースモーゲージの違い
リバースモーゲージとは、自宅を担保にお金を借りることができる商品のことです。
借入金を受け取ったあとは利息のみを支払っていき、契約者が亡くなったときに、担保の不動産を売却して得られた売却代金で借入金を返済します。
リースバックは自宅を売却して売却代金を受け取るのに対して、リバースモーゲージは自宅を担保に資金を借り入れる点が異なります。
また、リースバックの売却代金の使い道に制限はありません。
一方、リバースモーゲージの借入金は「介護費用」「老後の生活資金」「老人ホームの入居一時金」など、使い道が制限されます。
加えて、リースバックをすると自宅の所有権はリースバック業者へと移りますが、リバースモーゲージであれば所有権は移転しません。
他にも、リースバックは成人の年齢に達していれば幅広く利用できますが、リバースモーゲージは55〜80歳を対象にしている点が異なります。
安易なリースバックの利用は危険!仲介による売却も含めて慎重に検討することが大切
よく検討せずにリースバックを利用してしまったことで、トラブルに発展してしまうケースがあとを絶ちません。
以下は、リースバックの利用で起こったトラブルの一例です。
- 賃貸契約の更新時に家賃が値上がりした
- 相場よりも著しく安い金額で自宅を売却してしまった
- 契約が更新できずに退去を求められた
- 買戻し金額が高く、自宅を買い戻せなかった
自宅を1度手放すとやり直すことはできないため、よく検討せずにリースバックを利用するのは避けた方が賢明でしょう。
不動産売却で特に重要なのは、所有する不動産をできるだけ高く良い条件で売ることです。
すぐに売却すべき特段の理由がなく、住み替えをすることに抵抗がないのであれば、不動産会社の仲介による売却も検討することをおすすめします。
仲介による売却であれば、相場と同程度、あるいはそれ以上の価格で売却できる可能性があります。信頼できる不動産会社に売却を依頼すると、早いケースでは3か月ほどで買い手を見つけることも可能です。
リースバック業者だけでなく、買主探しをサポートしてくれる不動産会社にも相談のうえ、自宅の売却方法を慎重に検討することが大切です。
まとめ
- リースバックを利用すると、自宅を売却したあとも、家賃を支払うことで引き続き住み続けることができる
- リースバックの売却価格は相場の6〜8割程度であり、また自宅に住み続けるためには家賃の支払いが必要
- 安易にリースバックを利用するとトラブルに発展しかねないため、不動産会社の仲介による売却も含めて慎重に検討することが大切
【コラム執筆者】
品木 彰(シナキ アキラ)
プロフィール
保険・不動産・金融ライター。ファイナンシャルプランナー2級技能士。大手生命保険会社や人材会社での勤務を経て2019年1月に独立。年間で700本以上の記事執筆に加えて、不動産を始めとしたさまざまな記事の監修も担当している。
https://daisakukobayashi.com/