コラム

遺言保管制度の押さえておくべきポイントを解説

1635577834-c9cGO.jpg遺言保管法(正式名称「法務局における遺言書の保管等に関する法律」)により、各地の法務局で自筆証書遺言の保管の申請手続が可能となりました。今回のコラムでは、この制度の詳細について解説します。

 

保管の対象となる遺言

 

法務局への保管申請の対象になるのは、あくまで自筆証書遺言のみです。遺言には、他に公正証書遺言や秘密証書遺言があるのですが、保管の対象となるのは自筆証書遺言のみとなります。

 

 

遺言保管の申請

 

申請は、遺言者の住所地又は本籍地、又は遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する法務局に対してすることになります。ただし、法務局の本局又は支局のみが取り扱うこととなり、出張所では取り扱いされない可能性が高いと考えられます。

 

遺言書の保管申請をする際には、必ず遺言者本人が法務局に出頭しなければなりません。郵送での申請や代理人による申請は認められません。例えば入院中や寝たきりなど、外出が困難である方には制度の利用はできません。

 

 

遺言が保管されると

 

いったん法務局で遺言書が保管されると、遺言者の生存中、遺言者以外の方は遺言書の閲覧等を行うことができません。遺言者本人は、保管された遺言書の閲覧を請求することができます。また、遺言書の保管の申請を撤回することもできます

 

特定の死亡した方について、相続人や受遺者等は、自分が相続人や受遺者等となっている遺言書が法務局に保管されているかどうかを証明した書面(遺言書保管事実証明書)の交付を請求することができます。遺言者の死亡後、遺言者の相続人、受遺者等は、遺言書の画像情報等を用いた証明書(「遺言書情報証明書」)の交付請求及び遺言書原本の閲覧請求をすることができます

 

この保管制度を利用した場合、家庭裁判所での検認手続が不要になります。しかし、保管申請される自筆証書遺言について、法務局はあくまで形式的な審査しか行いません。法務局が保管した自筆証書遺言でも、内容に不備があれば、遺言者の死後、遺言書の一部又は全部が無効となってしまう可能性もありますので注意が必要です。

 

 

【コラム執筆者】

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髙橋 朋宏

プロフィール

経堂司法書士事務所代表司法書士。一般社団法人相続総合支援協会理事。不動産と相続に関する分野に専門性を有する。難しいことを分かりやすく説明することを得意とし、ラジオ出演、新聞・雑誌への寄稿、セミナー、講演活動などを行うタレント文化人。

経堂司法書士事務所|世田谷区で30年の実績 (kyodo-office.com)