コラム

知らないと損をする不動産売却時の税金の話

1629510525-oClBp.png不動産を購入した価格よりも高い金額で売却して、譲渡所得(利益)が出た場合は税金がかかってきます。この税金は分離課税として給与所得などほかの所得とは分けて計算し、年度末には確定申告をする必要があります。譲渡所得がなければ、もちろん課税はされません。


不動産売却後の税金や確定申告については、不動産仲介会社が詳しく説明してくれるとは限りませんし、正確な知識をもっていない営業担当者も多くいます。このため、売主さんが、確定申告を前にどうしたらよいのかわからず困るケースや、適用できる特例の存在を知らずに損をしてしまうケースが少なくありません。今回は、そんな知らないと損をする不動産売却時の税金の話を解説します。



課税のベースとなる課税譲渡所得をまず求める

税金がかかるといっても、不動産を5千万円で売却したから、その5千万円に課税されるということではありません。税金がかかるのは、譲渡価額(売却価格)から、物件の取得費や譲渡で発生した費用と特別控除を控除した「課税譲渡所得」に対してです。


譲渡価額から控除できる取得費や譲渡費用、特別控除には、次のようなものが含まれます。


 
1 取得費
 売った土地や建物を買い入れたときの購入代金、建物の建築代金(建物の購入代金・建築代金からは減価償却費相当額を差し引く、土地の造成費用や測量費などの合計金額。実際の取得費の金額が譲渡価額の5%に満たない場合は、譲渡価額の5%相当額を取得費として計上することができる。


2 譲渡費用
 仲介手数料、印紙税、貸家の売却に際して支払った立ち退き料、建物を取り壊して土地を売った際の取り壊し費用と、その建物の損失額など。


3 特別控除
 自分の住んでいる家屋と土地を売った場合は、最高3千万円を控除できる。ほかにも併用可能な特例等があれば活用する。

 

 

取得費の計算法は2種類。金額が大きくなるほうを使う

取得費等が大きければ大きいほど課税譲渡所得は小さくなりますから、税金を抑えるうえで有利になります。取得費を求めるには2つの方法がありますので、金額が大きくなるほうを選ぶようにしましょう。


取得費を求める方法のひとつは実額法で、不動産取得時の契約書や領収書などを根拠に、実際に支払った実額取得費を求めます。もうひとつは概算法で、「譲渡収入金額×5%」を概算取得費とします。不動産取得時の書類がなくて実額取得費が不明な場合、または実額取得費より概算取得費のほうが大きい場合は、概算法を使用してください。今より貨幣価値が低かった時代に取得した不動産では、購入価格100万円などということもあります。そうしたケースでは概算取得費を用いるほうが有利です。

 

 

税率は不動産の所有期間で変わるので注意しよう

不動産の売却利益がでたとき、実際にかかってくる税金は、復興特別所得税※を含む所得税(国税)と住民税(地方税)ですが、税率は売主さんがその不動産をどのくらいの期間所有していたかにより変わってきます。
居住用住宅を例にとってみましょう。所有期間が5年以下であれば短期譲渡所得に区分され、税率は39・63%。5年超なら長期譲渡所得となり税率は20・315%です(いずれも所得税と住民税の合計)。


また、所有期間が10年を超える居住用住宅では、課税譲渡所得6000万円以下の部分については軽減税率が設定されています。
ここでいう所有期間とは、「不動産取得の日から、譲渡日が属する年の1月1日まで」です。不動産取得の日から譲渡の日までではありませんので、注意してください。


所有期間は、「不動産取得後、何回お正月を迎えたか」と考えると、わかりやすいでしょう。取得日から5年超はお正月を6回以上、10年超なら11回以上迎えていることになります。長期譲渡所得のほうが、短期譲渡所得より税率が低くなりますので、実際の所有期間が分岐点付近という方は特に、この判定を間違わないよう気をつけましょう。


不動産の取得日と譲渡日は、契約日(売買契約を締結した日)か、物件(鍵)の引き渡し日かを選べます。所有期間が長くなるように選択してください。

※復興特別所得税 東日本大震災の復興に必要な財源確保を目的に、平成25(2013)年に導入された

 

 

3千万円で購入した木造のマイホームを所有している方が、10年後にその家を同じ3千万円で売却したとします。

こういうケースでは、譲渡所得がないので非課税と思っている方が多いのですが、残念ながらその認識は間違いです。


建物は10年間の間に一定の劣化をしており、建物の取得費は、その劣化分を差し引いた金額としなければなりません。この建物の劣化分に相当する金額を〝減価償却費〟といいます。
建物の法定耐用年数は構造ごとに決まっており、減価償却費はこの法定耐用年数をもとに算出します。定額法では非事業用の建物の耐用年数は、事業用建物の1・5倍です。木造のマイホームやセカンドハウスなら、耐用年数は33年で、償却率は0・031。(鉄骨)鉄筋コンクリートであれば、耐用年数70年で償却率0・015などのように、減価償却率も決められています。


住宅用建物の減価償却費の計算方法には、毎年同額を減価償却する前出の「定額法」と、毎年同率を減価償却する「定率法」の2種類の方法があります。

年数により計算が複雑になりますので、必要に応じて税務署や税理士に相談し、正しい減価償却費、そして取得費を計算するようにしましょう。

 


マイホームを売るなら 活用を検討すべき4つの特例

特別控除の条件は、所有者自身がそこに住んでいたこと

次に特別控除についてお話します。マイホームの売却については課税が緩和できるよう、次の4つの特別控除や特例が用意されています。特別控除の金額が大きいほど、支払う税額は少なくてすみます。特例を受ける条件は、売却した物件が、所有者本人が生活の拠点として利用していた居住用財産であること。実際には税務署や税理士に相談することをお勧めしますが、不動産購入当時の契約書や領収書が必要になりますので、そろえておきましょう。

 

①居住用不動産を譲渡した場合の3000万円特別控除
マイホーム売却の際、所有期間の長短に関係なく、譲渡所得から最高3000万円まで控除される特例です。ただし譲渡の前年、前々年にこの特例を適用している場合は使えません。②の10年超所有軽減税率を除いて、ほかの特例や、住み替え用の物件を購入する際の住宅ローン控除との併用もできません。

 

②10年超所有軽減税率の特例
「3000万円特別控除」の適用があり、マイホームの所有期間が10年を超えたもの(取得後にお正月を11回迎えている)である場合には、長期譲渡所得の税額より低い軽減税率が適用可能です。①の3000万円の特別控除とも併用できるため、大きな節税効果が期待できます。譲渡所得6千万円までの部分については軽減税率14・21%(所得税10・21%、住民税4%)、6000万円を超える部分は通常の長期譲渡の場合と同税率となります。

 

③居住用財産の買い換え等の場合の、譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
所有期間5年を超える(取得後にお正月を6回迎えた)マイホームを売却して損失が出た場合、一定の要件を満たすマイホームに買い換えることにより、譲渡損失をその年のほかの所得と損益通算して、税金を安くすることができます。1年で控除しきれなかった損失は、翌年以降3年間繰り越して控除可能です。この特例を受けるためには、税務署に確定申告しなければなりません。


④特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

所有期間が5年を超える(取得後お正月を6回迎えた)マイホームを売却して損失が出た場合、「譲渡所得の損失金額」と「住宅ローンの残高から売却価額を差し引いた金額」のいずれか少ない金額を限度として、その年のほかの所得と損益通算できます。売却契約締結日の前日時点で、住宅ローン償還期間が10年以上ある場合に適用できる特例です。損益通算しても赤字となった金額は、確定申告で翌年以降3年間繰り越して所得から控除できます。

古い物件を売ったときの3000万円特別控除と、新しい物件を購入するための住宅ローン控除は併用できません。買い換えの際には注意しましょう。

 

まとめ


・取得費や譲渡費用を控除した課税譲渡所得に課税

・不動産の所有期間は、取得後の正月の回数で数える

・特例の条件は、自分が暮らしていた家屋であること

・10年超所有軽減税率と3000万円控除は併用可能

・譲渡損失は所得と損益通算して節税できる

 

 

 

 

 

 

 

【コラム執筆者】

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山本 健司

プロフィール

ミライアス株式会社代表取締役。大手不動産会社で全国1位の成績を連続受賞。不動産相談件数16,000件超。著書『初めてでも損をしない 不動産売却のヒケツ(サンルクス出版)』