コラム

遺言が重要になる事実婚の夫婦の相続

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近年、夫婦としての実態があってもあえて入籍はせず、事実婚を選択するという夫婦は珍しくありません。今回はこのような事実婚の夫婦の相続について解説したいと思います。

 

 

内縁の夫婦の相続権

 

事実婚では、一方が亡くなったとき、もう一方の内縁者は法定相続人になることはできません。たとえ50年連れ添った内縁の妻であっても、内縁の夫の遺産を法定相続人として受け取ることはできないのです。

 

同性同士の事実婚のカップルも同様です。現在の日本では同性婚は認められていません。自治体が条例により同性カップルを結婚に相当する関係と認めるいわゆる「同性パートナーズシップ制度」を利用し、その証明書等があったとしても、一方が亡くなった場合にもう一方のパートナーがその法定相続人になることはできません。

 

現在の相続法は、法律婚(法律に定められた入籍によって婚姻関係が生じる)を前提とした相続関係を基本としているので、事実婚の夫婦は法定相続人にはなれないのです。

 

兄弟姉妹が先に亡くなっている場合は、その子である甥や姪が法定相続人となる(代襲相続)点にも注意が必要です。妻から見て兄弟姉妹よりもさらに疎遠で他人同然だったとしても、甥や姪が夫の法定相続分を取得するのです。前述の配偶者の兄弟姉妹よりも遺産分割協議が難航することも容易に想像がつきます。

 

親族関係なので円満に話し合いで協議が整うこともありますが、相続財産という大金が絡むとどうしても問題が起こりやすいのです。

 

 

内縁の夫婦の子どもの相続権

 

内縁の夫婦で2人の間に子供がいれば、例えば夫が先に亡くなった場合、法定相続人であるその子供が遺産を相続することができます。ただし、その子供はいわゆる非嫡出子(※)であり、父親が認知という手続きをしていなければ相続を受けることはできませんので注意が必要です。

※非嫡出子 : 婚姻関係にない男女間に生まれた子ども

 

 

内縁夫婦の相続問題

 

内縁の夫婦で子供がいない場合、一方が先に亡くなると、その親や兄弟姉妹、又は戸籍上の配偶者、前妻との子供等が法定相続人となります。何の手立てもしなければ遺産は全てこれら法定相続人のものとなり、何年連れ添った内縁の妻であっても、夫の遺産を受け取る権利もない、ということになってしまうのです。

 

 

 

残された内縁者が相続を受ける2つの方法

 

残された内縁者が相続を受ける方法は主に2つあります。

 

 

1.特別縁故者の申立をする方法

 

家庭裁判所に特別縁故者の申立をする方法です。実際に被相続人と長年生計を共にしていた内縁者であれば、家庭裁判所が特別縁故者と認める見込は充分にあり、認められれば被相続人の相続財産を受け取ることができます。しかし、これは被相続人に法定相続人が誰もいないことが前提で、兄弟姉妹等他に法定相続人がいるケースでは、その全員が相続放棄をしない限り、制度を利用することがそもそもできません。

 

特別縁故者制度とは、相続人がいない場合に、家庭裁判所が、被相続人と特定の関係があった者に対して、相続財産の一部を分与するという制度です。

 

 

2.遺言書を作成する方法

 

生前から遺産を内縁者に遺贈する内容の遺言書を残しておけば、遺言者の死後、内縁者は相続財産を受け取ることができます。勿論、遺留分や税金には注意が必要ですが、遺言書がなければそもそも内縁者に相続の権利が全くないことからすると、法律婚の夫婦よりも事実婚の夫婦の方が、遺言書を作成する必要性ははるかに高いといえます。

 

 

 

 

 

【コラム執筆者】

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髙橋 朋宏

プロフィール

経堂司法書士事務所代表司法書士。一般社団法人相続総合支援協会理事。不動産と相続に関する分野に専門性を有する。難しいことを分かりやすく説明することを得意とし、ラジオ出演、新聞・雑誌への寄稿、セミナー、講演活動などを行うタレント文化人。

経堂司法書士事務所|世田谷区で30年の実績 (kyodo-office.com)