コラム

気を付けよう!家族に認知症の方がいる場合の相続について解説

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相続の性質上、故人の家族が高齢になっており認知症を患っているケースが少なくありません。今回は、家族に認知症の方がいる場合の相続について解説していきたいと思います。

 

 

 

相続と遺産分割はセット

 

 

相続が発生すると、遺言書がなければ、ほとんどの場合相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産の分け方を決定する必要があります。法律では、遺産の取り分の割合を定めるのみで、具体的に誰がどの財産を受け継ぐのかなどは決まっていないので、それを決める必要があるからです。

 

しかし、遺産分割協議に参加するためには意思能力(自分の状況を理解して物事を判断する能力)が必要です。例えば、夫がなくなり、夫の財産について相続が開始された場合、認知症を患って意思能力のないその妻と子ども達では、亡くなった夫の遺産について有効な遺産分割協議を行うことができません。

 

 

 

成年後見人が必要

 

相続人の中に認知症の方がいる場合、遺産分割協議の前に、家庭裁判所に申立をして成年後見人を選任してもらう必要があります。成年後見人とは、認知症、精神障害、知的障害等の理由で判断力が欠けている方のために家庭裁判所が選任する代理人で、財産の管理等を本人に代わって行うことができます。成年後見人には本人の家族が選任されるケースもありますが、弁護士や司法書士等の第三者が選任されるケースもあります。

 

成年後見人が選任されると、遺産分割協議には認知症を患っている本人(成年被後見人)ではなく成年後見人が参加することとなり、相続人全員で有効な遺産分割協議を行うことが可能になります。
先ほどの例ですと、認知症の妻の代理人である成年後見人と子ども達で遺産分割協議を行うことになります。

 

最高裁判所の統計によれば、平成30年中の成年後見関係事件申立ての主な動機の約8.4%が「相続手続」であるとされています。

 

 

 

成年後見人が参加する遺産分割協議の注意点

 

誰が成年後見人に選任されたとしても、成年後見人は、少なくても法定相続分以上の財産を取得する内容の遺産分割協議でなければ、原則応じることができないことに注意が必要です。

 

例えば相続人全員にとって相続税の負担が最もかからないようによく検討された内容だとしても、被後見人が取得する財産が法定相続分を下回る内容の遺産分割協議を成立させることはほとんどできません。成年後見人は、あくまで代理人ですので客観的に被後見人本人の利益になる行動しかとれないからです。

 

 

 

ご家族に認知症の方がいる場合

 

ご家族に認知症の方や意思能力のない方がいる場合は、生前に遺言書を作成することを強くお勧めします。

 

遺言書で各相続人が取得する財産を決めておけば、相続発生後に相続人が遺産分割協議をする必要はなく、したがって、相続手続のために成年後見制度を利用する必要はないということになります。また相続人全体の利益を考えた柔軟な分割も可能となります。

 

 

 

 

【コラム執筆者】

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髙橋 朋宏

プロフィール

経堂司法書士事務所代表司法書士。一般社団法人相続総合支援協会理事。不動産と相続に関する分野に専門性を有する。難しいことを分かりやすく説明することを得意とし、ラジオ出演、新聞・雑誌への寄稿、セミナー、講演活動などを行うタレント文化人。

経堂司法書士事務所|世田谷区で30年の実績 (kyodo-office.com)