コラム

中古住宅購入後のトラブルを防ぐために理解しておきたい契約不適合責任とは

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住宅は、人生でもっとも高い買い物であるといわれています。新築住宅よりも価格が安い中古住宅とはいえ、購入後にトラブルが発生する事態は避けたいと思われる方がほとんどでしょう。

 

中古住宅を購入したあとのトラブルを防ぐためには「契約不適合責任」に対する理解が不可欠です。契約不適合責任を理解すると、中古住宅を購入したあとのトラブルを防ぎやすくなるだけでなく、トラブルに対処しやすくもなります。

 

本記事では、中古住宅を購入したあとに起こりやすいトラブルや、契約不適合責任について、わかりやすく解説していきます。

 

 

 

中古住宅購入後に発生しやすいトラブルとは

 

中古住宅の購入後にもっとも発生しやすいトラブルは、住み始めてから判明する物件の欠陥でしょう。

 

例えば、戸建て住宅では、シロアリ被害や雨漏り、断熱材の劣化など物件をひと目見ただけではわからないような欠陥が発覚して、トラブルに発展するケースがあります。

 

またマンションでは、共用部分の給排水管が老朽化している場合や、管理組合が機能しておらず建物の修繕が十分に行われていない場合に、トラブルが発生します。

 

中古住宅の購入後にトラブルが発生しても、売主や不動産会社が適切に対応してくれず、泣き寝入りするケースは珍しくありません。購入後のトラブルを防ぐためには、中古住宅の契約を結ぶ段階から対策をすることが大切です。

 

 

 

 

中古住宅の購入を成功させるには契約不適合責任を理解する

 

 

では、購入後のトラブルを防ぐためには、何を確認すれば良いのでしょうか?それは、住宅の売買契約書に記載されている内容です。購入後に発覚した欠陥が、売買契約書に記載されていなかった場合、売主に対して契約不適合責任を追及できるためです。

 

契約不適合責任とは、契約の内容が事実と異なっていた場合に、売主が買主に対して責任を負うこと。ここでは、契約不適合責任の内容についてわかりやすく解説します。

 

 

 

瑕疵担保責任と契約不適合責任

 

契約不適合責任は、2020年4月1日の民法改正により、瑕疵担保責任に代わって始まった制度です。

 

瑕疵担保責任とは、建物に隠れた欠陥(瑕疵)がある場合、売主が買主に対し責任を負うことです。購入した住宅に隠れた瑕疵があった場合、一定期間内であれば買主は売主に対して損害賠償の請求や契約の解除ができます。

 

瑕疵担保責任では、欠陥が隠れていたかどうかを証明するのが困難でした。瑕疵担保責任から契約不適合責任へと変わったことで、欠陥が隠れていたかではなく、契約書に記載されていたかどうかで判断されるようになったのです。

 

例えば、中古住宅購入後に発覚したシロアリ被害が、売買契約書に記載されていない場合、売主は修繕費用を負担したり、購入代金の減額に応じたりしなければなりません。

 

ただし契約不適合責任には時効があり、民法では買主が物件の不具合を知ってから1年以内に売主への通知する必要があります。なお、一般個人間の不動産売買では、3か月以内と取り決めされることが一般的です。

 

 

 

 

契約不適合責任で買主が売主に対して請求できる権利

 

契約不適合責任で、買主が売主に対して請求できるのは以下の通りです。

 

  • 追完請求

 

  • 代金減額請求

 

  • 催告解除・無催告解除

 

  • 損害賠償請求

 

 

それぞれについて、確認していきましょう。

 

 

●追完請求

 

追完請求とは、引き渡しされた物件が契約内容と合致していなかった場合に、修繕や代替物との交換を売主に対して請求できる権利です。例えば、引き渡された物件の給排水管が故障していた場合、買主は売主に対して修繕を請求できます。

 

契約書と異なる部分があった場合、まず買主は追完請求を売主に請求します。代金減額請求や催告解除などは、売主が追完請求を履行できない場合に請求できる権利です。

 

 

 

 

●代金減額請求

 

代金減額請求とは、追完請求ができなかった売主に対して物件の売買価格の減額を請求できる権利です。物件の修繕が難しい場合だけでなく、売主が物件の修繕や代替物と交換になかなか応じてくれない場合、売主は代金減額請求をします。

 

代金減額請求をすると、不適合の度合いに応じた金額が物件価格から減額されます。

 

瑕疵担保責任では、購入後に隠れた歌詞が発覚しても売主に対して物件の減額請求ができませんでした。よって代金減額請求は、契約不適合責任が始まったことで買主に対して新たに認められた権利です。

 

 

 

 

●催告解除・無催告解除

 

追完請求をしても売主が履行しない場合は、催告解除によって契約を解除し代金の返還を請求できます。ただし、社会通念から考えて軽微な不履行に対しては、催告解除を請求できません。

 

一方で無催告解除は、契約内容に重大な不適合があり、買主が契約の目的を達成できない場合に、催告することなくただちに契約を解除できる権利です。

 

無催告解除ができるのは「債務の全部が履行できないとき」や「売主が債務の履行を拒絶する意思を明確に示したとき」といった場合です。

 

 

 

 

●損害賠償請求

 

売主の過失による不適合があった場合は、買主は損害賠償を請求できます。

 

瑕疵担保責任でも、買主は売主に対して損害賠償を請求できました。しかし契約不適合責任で損害賠償を請求できるのは、売主に過失がある場合のみである点が異なります。

 

 

 

中古住宅の購入後に後悔しないために契約不適合責任を確認する

 

中古住宅を購入する場合、契約不適合責任があるからといってトラブルが完全に防げるわけではありません。なぜなら契約不適合責任は「任意規定」であり、売主と買主の合意によって、適用される期間や範囲などを自由に決められるためです。

 

契約不適合責任では、売買契約書に記載されている内容で売主が責任を負うかどうかが判断されます。そのため売買契約書には、契約不適合責任が免責となる部分や、買主が請求できる期限が記載されます。

 

買主が確認を怠れば、欠陥が発覚しても売主に対して修繕や減額を請求できないかもしれません。中古住宅を購入するときは、売買契約書に記載されている契約不適合責任の内容について、入念に確認することが大切です。

 

一方で、売主が不動産会社(宅建業者)である場合、最低でも2年間は契約不適合責任を負わなければならないと、宅地建物取引業法で定められています。

 

 

 

中古住宅引き渡し後のトラブル を防ぐためには不動産会社選びが大切

 

中古住宅を購入するときは、不動産会社選びが最も大切であると言っても過言ではありません。ここでは中古住宅購入後のトラブルを避けるために、必要な不動産会社の選び方を解説していきます。

 

 

●契約不適合責任に対応した不動産会社を選ぶ

 

契約不適合責任は、2020年4月に始まった新しい制度です。 不動産会社によっては、契約不適合責任を十分に理解していないかもしれません。

 

もし契約不適合責任の理解が不足している不動産会社を選んでしまうと、 適切な契約書が作成されず、購入後にトラブルが生じやすくなります。

 

不動産の取引は、法律に関する専門的な知識が不可欠です。中古物件を探すときは、不動産に関する法律や規定に精通した不動産会社を選びましょう。

 

 

 

●アフターフォローに力を入れた不動産会社を選ぶ

 

中古住宅を購入するときは、アフターフォローに力を入れている不動産会社を選ぶと良いです。

 

例えば不動産会社の中には、住宅に精通したプロによる建物検査や、瑕疵に対する保証を実施しているところがあります。検査によって建物の性能が証明され、瑕疵があったとしても修繕費用を保証されるため、安心して住宅を購入できるでしょう。

 

また「給湯器が壊れた」「鍵が開かない」など、身近なトラブルに対応してくれる不動産会社もあるのです。売ったら終わりと考えている不動産会社ではなく、アフターフォローに力を入れている不動産会社を選んでみてはいかがでしょうか。

 

 

 

 

まとめ

 

・中古住宅を購入したあとは、建物の欠陥に関するトラブルが発生しやすい

 

・2020年4月の民法改正で契約不適合責任が開始

 

・中古住宅購入後のトラブルを防ぐためには、頼れる不動産会社選びが大切

 

 

 

 

 

【コラム執筆者】

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品木 彰(シナキ アキラ)

プロフィール

保険・不動産・金融ライター。ファイナンシャルプランナー2級技能士。大手生命保険会社や人材会社での勤務を経て2019年1月に独立。年間で700本以上の記事執筆に加えて、不動産を始めとしたさまざまな記事の監修も担当している。

https://daisakukobayashi.com/