コラム

住宅ローンの変動金利の仕組みとは?選ぶ前に確認すべきポイントも解説

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変動金利は、住宅ローンの金利タイプの中でも特に人気です。住宅金融支援機構の調査によると、住宅ローンを借り入れた人の約6割が変動金利を選択しています。

※出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者調査(2020年5月調査)

 

 

しかし、多くの人が選んでいるからといって、変動金利が正解とは限りません。変動金利には、良い面もあれば悪い面もあるため、仕組みを理解したうえで借り入れることが大切です。

 

本記事では、住宅ローンの変動金利の仕組みだけでなく、メリットやデメリット、借り入れる際の注意点もわかりやすく解説していきます。

 

 

 

住宅ローンの変動金利の仕組み

 

変動金利とは、住宅ローンの返済途中で経済情勢に応じて利息計算に用いられる金利が見直される金利タイプです。そのため、変動金利を選択して住宅ローンを借り入れると、借り入れから完済までのあいだに毎月の返済額や返済総額が変動する可能性があります。金利が見直されるのは、半年に1度です。

 

 

 

■変動金利の5年ルールと125%ルールとは

 

変動金利は、金利が見直されたときに毎月の返済額がただちに変わるわけではなく、急激に増える心配もありません。変動金利には、5年ルールや125%ルール(1.25倍ルール)が適用されるためです。

 

  • 5年ルール:毎月の返済額が見直されるのは5年に1度

 

  • 125%(1.25倍)ルール:見直し後の返済額は見直し前の1.25倍を超えない

 

金利が見直されても返済額が見直されるタイミングでなかった場合、毎月の返済額は据え置かれて、借入元本と利息の割合のみが変化します。

 

例えば、毎月の返済額が10万円で、借入元本が8万円、利息が2万円であったとしましょう。借り入れや返済額の見直しから5年間は、10万円という金額はかわりません。金利が上昇した場合は、借入元本7万円、利息が3万円、のように内訳のみが変わります。

 

返済額が変わるのは、5年に1度です。見直し前の返済額が毎月10万円であった場合、その1.25倍である12.5万円以上には増えません。ただし、金利の上昇によって利息額が毎月の返済額を上回った場合、超過分は「未払利息」として計上されます。返済期間が終了したときに、未払利息が残っていた場合は一括返済しなければなりません。

 

また、変動金利に5年ルールや125%ルールを設けていない金融機関もあるため、入念に確認をして借り入れをする必要があります。

 

 

 

■変動金利の金利が変動する仕組み

 

 

変動金利は、簡単にいえば景気によって金利が上下する仕組みです。

 

日本の中央銀行である日銀は、景気が悪くなったときに金融緩和政策を実施し、個人や企業がお金を借りやすい状態にして、経済を活性化させようとします。反対に、景気が良くなりすぎた場合は、金融緩引き締めを実施して、景気の加熱を防ごうとするのです。

 

詳細な説明は省きますが、政府が金融緩和政策を実施すると住宅ローン金利は下がり、金融引き締めを実施すると上がります。2020年12月現在、政府は大規模な金融緩和政策を実施しているため、変動金利は非常に低い値で推移しています。

 

 

 

住宅ローンの変動金利のメリットとデメリット

 

ここでは、変動金利のメリットとデメリットを解説していきますので、1つずつ確認していきましょう。

 

 

 

■変動金利のメリット

 

 

変動金利を借り入れるメリットは、以下の2点です。

 

  • 借入当初の金利が低い

 

  • 返済負担が急上昇しない仕組みがある

 

 

変動金利は、他の金利タイプよりも借入時の金利が低く設定されています。そのため他の金利タイプよりも毎月の返済額が少なくなり、借入元本を効率的に減らしていけます。

 

また、変動金利には5年ルールと125%ルールがあるため、たとえ金利が上昇しても、返済負担が急激に上昇する心配はありません。

 

もし変動金利に5年ルールがなかったとしたら、金利の上昇が続くと返済負担が半年に1回ごとに増えていき、家計が圧迫されて返済が困難となるでしょう。

 

5年ルールがあることで、借入時もしくは前回の返済額見直しから5年間は、金利が上昇しても毎月の返済額は変わりません。たとえ返済額が見直されても、1.25倍以上には増えないため、金利が上昇したからといってすぐに生活が破綻するリスクは低いでしょう。

 

 

 

■変動金利のデメリット

 

 

一方で変動金利には、以下2点のデメリットがあります。

 

  • 金利上昇リスクがある

 

  • 返済計画や将来のライフプランが立てにくい

 

 

変動金利には、返済途中で金利が上昇すると毎月の返済額や返済総額が増えてしまう恐れがあります。

 

2020年12月現在、政府の金融緩和政策と金融機関同士の競争により、住宅ローン金利は底値といえる値まで低下しました。今後住宅ローン金利は、下がる可能性よりも上がる可能性の方が高いでしょう。

 

5年ルールや125%ルールがあるとはいえ、金利の上昇が発生したときに利息が免除されているわけではありません。金利が上昇し、毎月の返済額に占める利息の割合が増えると、借入元本が減りづらくなります。

 

また変動金利は、借入時に毎月の返済額が確定しないため、将来の計画が立てにくい点もデメリットです。例えば、毎月の返済額が増えてしまうと、子どもの進学費の貯蓄に支障が生じて、希望通りの学校に進学させてあげられないかもしれません。

 

 

 

■変動金利で住宅ローンを借り入れるときに確認すべきこと

 

では、変動金利を借り入れるときは、何に注意すれが良いのでしょうか?最後に、変動金利を選ぶ時にチェックすべきポイントを解説していきます。

 

 

■返済シミュレーションを確認・比較して選ぶ

 

変動金利を借り入れるときは、返済シミュレーションで、以下の点を確認することが大切です。

 

  • 他の金利タイプで借り入れた場合との返済額の差

 

  • どのような金利上昇が起きたら返済総額が他の金利タイプを上回るのか

 

 

金利が低いという理由だけで、変動金利を選択するのはおすすめできません。変動金利と他の金利タイプの返済負担を比較することで、ご自身にとって最適な金利タイプを判断しやすくなります。

 

例えば、変動金利と固定金利の返済額の差が、毎月1.5万円であったとしましょう。「毎月1.5万円しか変わらないなら、金利を固定させた方が安心だ」と考える人もいれば「毎月1.5万円も変わるなら、変動金利にして元本を減らしていこう」と考える人もいるはずです。

 

また、返済途中で金利が上昇したとしても、変動金利の返済総額が、他の金利タイプで借り入れた場合よりも、多くなるとは限りません。特に、借り入れから20年後や30年後に金利が上昇しても、借入元本が減っているため返済負担はあまり変わらない場合があります。

 

さまざまな返済シミュレーションを確認し、納得したうえで変動金利を借り入れることで、金利上昇に対する不安の軽減に繋がります。

 

 

■繰り上げ返済をするために貯蓄をする

 

繰り上げ返済とは、住宅ローンを借り入れるときに決めた返済計画とは別で、まとまった金額を返済することです。金利が上昇したときに繰り上げ返済をして借入元本を減らすことで、利息負担の増加を抑えられます。

 

そのため、借入当初の金利がもっとも高い全期間固定金利と、変動金利を借り入れたときの返済額の差額を繰り上げ返済資金に当てるのも一つの方法です。

 

例えば、毎月の返済額が、変動金利で約7.7万円、全期間固定金利で約8.9万円であった場合、差額の約1.2万円を繰り上げ返済するために貯蓄していきます。

 

金利上昇が起こった場合の対処方法を決めて変動金利を借り入れることで、マイホームを購入したあとに充実した生活を送れるでしょう。

 

 

 

まとめ

 

●変動金利は、借り入れた当初の金利がもっとも低いため、毎月の返済負担や返済総額が他の金利タイプで借り入れた場合よりも少なくなる可能性があります。しかし変動金利には、金利上昇のリスクがあるため、将来的に返済負担が増える恐れがある点に注意が必要です。


●「金利が上昇すると返済額がいくら増えるのか」「返済額が増えた時に繰り上げ返済はできるのか」など、さまざまな要素を考慮して借り入れることが大切です。

 

 

【コラム執筆者】

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品木 彰(シナキ アキラ)

プロフィール

保険・不動産・金融ライター。ファイナンシャルプランナー2級技能士。大手生命保険会社や人材会社での勤務を経て2019年1月に独立。年間で700本以上の記事執筆に加えて、不動産を始めとしたさまざまな記事の監修も担当している。

https://daisakukobayashi.com/