
投資型減税とは?所得税から差し引かれる金額や要件を解説
投資型減税(認定住宅等新築等特別税額控除)は、国が定める基準を満たした高性能な住宅を取得した人が受けられる税の優遇制度です。
所定の要件を満たすと、所得税が最大で65万円減税されます。
また、住宅ローン減税(住宅ローン控除)とは異なり、現金のみで住宅を取得した人も対象です。
本記事では、投資型減税の制度内容や適用する方法などについて詳しく解説します。
投資型減税(認定住宅等新築等特別税額控除)の概要
投資型減税の大きな特徴は「税額控除」である点です。
これは、計算された所得税から一定の金額が直接差し引かれる控除制度です。
税率を掛ける前の所得金額から差し引かれる「所得控除」に比べて、高い節税効果が期待できます。
投資型減税の対象となるのは、2025年(令和7年)12月31日までに「認定長期優良住宅」「認定低炭素住宅」「ZEH(ゼッチ)水準省エネ住宅」を取得して入居した人です。
投資型減税の対象となる住宅の種類
続いて、投資型減税の対象となる「認定長期優良住宅」「認定低炭素住宅」「ZEH(ゼッチ)水準省エネ住宅」について詳しくみていきましょう。
認定長期優良住宅
認定長期優良住宅とは、長期間にわたって良い状態で使い続けられるような対策が施された高性能住宅のことです。
認定長期優良住宅に認定されるには、耐震性能や劣化のしにくさ、点検・修繕のしやすさ、省エネ性能などが所定の基準を満たしている必要があります。
長く安心して暮らせるだけでなく、将来的な資産価値も維持しやすいのが認定長期優良住宅の特徴です。
認定低炭素住宅
認定低炭素住宅は、二酸化炭素(CO2)の排出量を抑える工夫がなされた住宅です。
通常の省エネ基準適合住宅よりも高い断熱性能を備えており、空調や換気、照明などで消費されるエネルギー量(一次エネルギー消費量)も抑えられているという特徴があります。
ZEH水準省エネ住宅
ZEHは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略称です。
建物の断熱性能を高め、太陽光発電など効率の良い設備を導入することで、1年間に消費するエネルギー消費量をおおむねゼロにすることを目指した住宅を指します。
投資型減税の対象となるのは、断熱性能と一次エネルギー消費量がZEHの基準を満たしている「ZEH水準省エネ住宅」です。
投資型減税の控除額はいくら?計算方法と上限
では、投資型減税を受けるといくらの税金が戻ってくるのでしょうか。
控除額の計算方法と上限額を解説します。
控除額の計算方法
投資型減税を受けると「標準的な性能強化費用相当額×10%」が所得税から差し引かれます。
標準的な性能強化費用相当額は、住宅が所定の基準に適合するために必要となる標準的な費用です。
住宅の構造(木造・鉄骨鉄筋コンクリート造など)にかかわらず「45,300円」となります。
例えば、住宅の床面積が100㎡の場合、標準的な性能強化費用相当額と控除額は以下の通りです。
- 標準的な性能強化費用相当額:45,300円×100㎡=453万円
- 控除額:453万円×10%=453,000円
控除額には上限がある
投資型減税の「標準的な性能強化費用相当額」は650万円が上限です。
そのため、実際に税金から控除される額は、最大で「650万円×10%=65万円」となります。
例えば、床面積が150㎡の住宅の場合、標準的な性能強化費用相当額は「45,300円×150㎡=679万5,000円」です。
しかし、標準的な性能強化費用相当額は650万円が上限であるため、差額の29万5,000円は控除の対象外となり、控除額は65万円となります。
控除しきれない場合は翌年に繰り越せる
投資型減税の控除額がその年の所得税額よりも高い場合、控除しきれなかった分は、翌年の所得税から差し引くことができます。これを「繰越控除」と言います。
ただし、繰り越しできるのは翌年の1年間のみです。
翌年分の所得税から控除してもなお余りが生じたとしても、翌々年以降には繰り越せません。
投資型減税を利用するための主な要件
投資型減税を受けるためには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 控除を受ける本人が所有し、主に生活の本拠として住むための家屋である
- 家屋の引き渡しを受けた日、または工事が完了した日から6か月以内に住み始める
- 登記簿上の床面積が50㎡以上である
- 店舗等併用家屋の場合、全体の床面積の半分以上が居住用である
- 控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下である
- 断熱性能等級5以上(結露の発生を防止する対策に関する基準を除く)かつ一次エネルギー消費量等級6以上の基準を満たしている
- 2025年(令和7年)12月31日までに対象の住宅を取得し、居住を開始する
※出典:国土交通省「認定住宅等新築等特別税額控除(投資型減税)の概要」
別荘や賃貸目的の物件を取得する場合や床面積が50㎡に満たない住宅を取得する場合などは、投資型減税の対象外となります。
一方、住宅ローンを組まず現金のみで住宅を取得する場合でも、要件を満たしていれば減税を受けられます。
投資型減税を利用する際の注意点
メリットの大きい投資型減税ですが、いくつか注意すべき点があります。
ここでは、投資型減税の主な注意点を解説します。
住宅ローン控除との併用はできない
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、住宅ローンを組んでマイホームを取得した人を対象とした税の優遇制度です。
所定の要件を満たすと、年末時点の住宅ローン残高に応じた一定金額が所得税から控除され、余りが生じる場合は翌年分の住民税※から差し引くことも可能です。
※住民税から控除できる金額には上限があります
投資型減税は、住宅ローン控除と同時に受けることができません。
両制度の要件を満たしている場合は、どちらを受けた方がより大きな節税メリットを得られるのかを慎重に検討することが大切です。
判断に迷うようであれば、最寄りの税務署や税理士、不動産会社などに相談すると良いでしょう。
利用するには確定申告が必須
投資型減税を受けるためには、ご自身で「確定申告」を行う必要があります。
会社員や公務員など年末調整の対象であり、通常であれば確定申告をする必要がない方でも投資型減税を受ける場合は申告手続きが必要です。
住宅に入居した年の翌年、通常は2月16日〜3月15日※までに必要な書類を揃えて税務署に申告しなくてはなりません。※土日祝によって前後します。
確定申告を失念すると控除を受けられなくなってしまうため、要件を満たすマイホームを取得したときは忘れずに手続きをしましょう。
投資型減税の申請に必要な書類
確定申告で投資型減税を申請する際の必要書類は、以下の通りです。
必要書類は複数あり、また確定申告書や計算明細書は作成が必要なため、スケジュールに余裕をもって収集を開始しましょう。
まとめ
- 投資型減税は、一定の要件を満たす場合に標準的な性能強化費用相当額(上限650万円)の10%が所得税額から控除される制度
- 住宅ローンを利用せずに高性能な住宅を現金で購入する方も要件を満たせば投資型減税を受けられる
- 住宅ローン控除との併用はできないため、どちらを利用するかは慎重な検討が必要
品木 彰(シナキ アキラ)
プロフィール
保険・不動産・金融ライター。ファイナンシャルプランナー2級技能士。大手生命保険会社や人材会社での勤務を経て2019年1月に独立。年間で700本以上の記事執筆に加えて、不動産を始めとしたさまざまな記事の監修も担当している。
https://daisakukobayashi.com/