
省エネ住宅が受けられる税金の優遇措置は?
省エネ住宅は、高い断熱性能やエネルギー効率により光熱費を抑えながらより快適な生活を送れる住宅です。
所定の省エネ基準に該当したマイホームを取得すると、税金の優遇措置を受けることで税負担が軽減され、より家計が楽になる可能性があります。
今回は、省エネ住宅の定義に加えて住宅ローン控除や固定資産税・不動産取得税などの軽減措置について詳しく解説します。
省エネ住宅の基礎知識
まずは、省エネ住宅の定義や種類をみていきましょう。
省エネ住宅の定義
省エネ住宅は、建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)で定められる省エネ基準に適合する住宅です。
屋根・外壁・床・窓などの断熱性能を示す「外皮基準」と、住宅全体で消費されるエネルギーの総量である「一次エネルギー消費量基準」が一定の基準値以下の住宅を指します。
省エネ住宅のメリットは、所定の省エネ基準をクリアすることにより夏は涼しく冬は暖かい快適な住環境を保ちやすい点です。
また、省エネ住宅では空調や給湯などの設備がより効率的に稼働しやすくなるため、光熱費を削減する効果も期待できます。
ZEH・長期優良住宅・認定低炭素住宅などの種類がある
省エネ住宅には、ZEH・長期優良住宅・認定低炭素住宅といった種類があります。
それぞれの特徴は以下の通りです。
上記の住宅は、通常の省エネ基準適合住宅よりも省エネルギー性が優れており、さらに住まいの快適性や経済性を向上させる効果が期待できます。
省エネ住宅の購入時に利用できる優遇制度
省エネ住宅を購入すると受けられる税の優遇制度は以下の通りです。
- 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)
- 固定資産税の減額措置
- 不動産取得税の軽減措置
- 登録免許税の軽減措置
- 所得税の投資型減税(省エネ改修等)
- 住宅取得等資金の贈与税非課税措置
制度内容を1つずつご紹介します。
住宅ローン控除
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、住宅ローンを組んだ人が所定の要件を満たすと受けられる税の優遇制度です。
住宅ローンを利用して住宅を新築または取得し、一定の要件を満たすと、年末のローン残高の0.7%が所得税および一部の住民税から控除されます。
控除を受けられる期間は、新築住宅と買取再販住宅が最長13年、既存住宅(中古住宅)が最長10年です。
2024年1月以降に、新築住宅と買取再販住宅を取得して入居する場合、所定の省エネ基準に適合することが必須となります。
また、省エネ性能が高いほど借入限度額(控除額を計算する際に対象となる借入額の上限)も高く設定されるため、より大きな控除を受けられる可能性があります。
子育て世帯は19歳未満の子どもがいる世帯、夫婦世帯は夫婦のいずれかが40歳未満の世帯であり、借入限度額が高く設定されています。
固定資産税の減額措置
固定資産税は、毎年1月1日時点で土地や建物などの固定資産を所有する人に課せられる地方税です。
税額は、自治体が算出する固定資産の評価額(固定資産税評価額)に原則1.4%の税率を乗じて算出されます。
新築住宅の場合、所定の要件を満たすと建物部分の固定資産税が一定期間1/2に減額されます。
減額が受けられる期間は、マンションが5年間、戸建て住宅が3年間です。
認定長期優良住宅の基準を満たしている場合、減額される期間が2年間延長され、マンションは7年間、戸建て住宅は5年間となります。
不動産取得税の軽減措置
不動産取得税は、土地や建物を取得した際に1度だけ課される地方税です。
税額は、土地と建物それぞれの課税標準額に税率をかけて算出されます。
課税標準額は、固定資産税評価額と同額ですが、土地の場合は2027年(令和9年)3月31日までに取得すると評価額の1/2となります。
税率は通常4%ですが、住宅と宅地の場合は3%です。
新築住宅を取得する場合、要件を満たすと建物部分の不動産取得税を計算する際、課税標準額から最大1,200万円が差し引かれます。
認定長期優良住宅を取得した場合は、控除される金額は最大1,300万円が控除され、さらに税負担が軽減されます。
登録免許税の軽減措置
登録免許税とは、登記手続きをする際に納める国税のことです。
税額は、登記の種類と不動産の固定資産税評価額などで異なります。
住宅を取得するときは、不動産の最初の所有者を記録する「所有権保存登記」や、所有権を新しい所有者に変更する「所有権移転登記」をします。
長期優良住宅を取得する場合、登録免許税の税率が以下の通りに引き下げられます。
所得税の投資型減税
認定長期優良住宅や認定低炭素住宅、ZEH水準省エネ住宅を取得する場合、所定の要件を満たすと「投資型減税」を利用できます。
投資型減税を受けられると、住宅を取得した年分の所得税額から一定金額が控除されます。
控除される金額は、住宅の性能を向上させるために必要となる標準的な費用(標準的な性能強化費用相当額)の10%(上限65万円)です。
住宅ローンと投資型減税は併用できません。
一方で、住宅ローンを組まず現金で住宅を取得した場合も要件を満たせば投資型減税を受けられます。
2025年4月から省エネ基準の適合が義務化
2025年4月1日以降に新築されるすべての住宅・建築物に省エネ基準への適合が法律で義務付けられます。
これまで、省エネ基準の適合義務は主に大規模または中規模の非住宅建築物に限られていましたが、今回の改正により一般的なマンションや戸建て住宅なども対象となります。
2025年4月1日以降に着工される住宅は、省エネ性能を満たさなければ建築確認が下りず、工事を始めることもできません。
また、2030年にはマンションや戸建て住宅などにZEH水準の省エネ性能を有していることが義務付けられる予定です。
省エネ住宅の購入を検討している方にとって、今後は「省エネ基準に適合しているか」が判断材料の1つとなるでしょう。
省エネ住宅を取得すると将来的に高値で売却しやすくなる可能性があります。
これからマイホームを購入しようと考えている方は、省エネ基準に適合しているか確認することをおすすめします。
まとめ
- 省エネ住宅とは、断熱性能やエネルギー効率が一定基準を満たす住宅
- 省エネ住宅を購入すると、住宅ローン控除や固定資産税・不動産取得税・登録免許税の軽減などの税制優遇措置を受けられる
- 省エネ住宅には、ZEH、長期優良住宅、認定低炭素住宅などの種類があり、これらの住宅はより税金が優遇されることがある
品木 彰(シナキ アキラ)
プロフィール
保険・不動産・金融ライター。ファイナンシャルプランナー2級技能士。大手生命保険会社や人材会社での勤務を経て2019年1月に独立。年間で700本以上の記事執筆に加えて、不動産を始めとしたさまざまな記事の監修も担当している。
https://daisakukobayashi.com/