
令和7年度税制改正大綱の内容とは?マイホーム購入を考える人の影響を解説
2024年(令和6年)12月27日に「令和7年度税制改正の大綱の概要」が発表されました。
税制改正大綱は、簡単にいえば「来年度の税金に関するルールをどのように変えるのかを決める方針が書かれた文書」です。
令和7年度の税制改正大綱には、住宅ローン控除の優遇措置や基礎控除の引き上げなど、個人の生活に影響する内容も盛り込まれました。
今回は、マイホームを購入する人が押さえておきたい令和7年度税制改正大綱の内容を解説します。
子育て世帯等を対象とした住宅ローン控除の拡充
令和7年度税制改正大綱では、2024年(令和6年)に引き続き子育て世帯や若者夫婦世帯に対して「住宅ローン控除」の優遇措置が実施されることが明記されました。
ここでは、住宅ローン控除の基本的な制度内容や2025年に実施される優遇措置の内容について紹介します。
住宅ローン控除の基礎知識
住宅ローン控除は、マイホームを購入する際に住宅ローンを借り入れた人が受けられる税の優遇制度です。
所定の要件を満たすと、年末時点のローン残高に一定の割合(原則0.7%)を乗じた金額を、所得税から差し引くことができます。
余りの分は翌年度の住民税から一定金額を上限に控除できるため、住宅ローン控除を受けることができれば、税負担を大幅に軽減できます。
控除を受けられる期間は以下の通りです。
- 新築住宅・買取再販住宅:最長13年
- 既存住宅(中古住宅):最長10年
買取再販住宅とは、不動産会社が中古住宅を買い取り、リフォームやリノベーションを施したうえで再販売する住宅のことです。
住宅ローン控除を受けるためには「登記上の床面積が50㎡以上※かつその2分の1以上が自らの居住用」「合計所得金額が2,000万円以下」などの要件を満たす必要があります。
※一定の要件を満たす場合は床面積40㎡以上50㎡未満でも可
また、2024年からは新築住宅や買取再販住宅を取得して住宅ローン控除を受けるためには、所定の省エネ基準に適合することが必須となりました。
子育て世帯等を対象に借入限度額が引き上げ
住宅ローン控除には、控除額を計算する際に対象となるローン残高に上限が設けられています。
この上限を「借入限度額」といいます。
2024年には、子育て世帯(19歳未満の子どもがいる世帯)や若者夫婦世帯(夫婦のいずれかが40歳未満の世帯)を対象に借入限度額の引き上げが実施されました。
令和7年度税制改正大綱では、2025年もこの優遇措置が適用されることが決まりました。
子育て世帯や若者夫婦世帯が、所定の省エネ性能がある新築住宅や買取再販住宅を購入する場合、借入限度額が下記の通りに引き上げられます。
※出典:国土交通省「令和7年度税制改正概要」
認定長期優良住宅や認定低炭素住宅は500万円、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅は1,000万円、それぞれ借入限度額が引き上げられます。
借入限度額が引き上げられると、より多額のローン残高を控除の対象にできるため、より多くの減税を受けることが可能です。
また、新築住宅を取得する場合は、合計所得金額が1,000万円以下であれば、床面積が40㎡以上50㎡未満でも住宅ローン控除の対象となる緩和措置も実施されます。
その一方で、一定の省エネ基準に適合しない新築住宅と買取再販住宅は、引き続き住宅ローン控除の対象外です。
中古住宅の場合、省エネ基準に適合しなくても控除を受けることは可能ですが、子育て世帯や若者夫婦世帯を対象にした借入限度額の優遇措置はありません。
2025年に住宅ローンを組んで戸建て住宅やマンションを取得する予定であれば、住宅ローン控除の改正点についてよく理解することが大切です。
マンション長寿命化促進税制の延長
マンション長寿命化促進税制は、寿命を伸ばす効果が期待できる大規模修繕工事を行ったマンションの区分所有者に課せられる固定資産税を減額する措置です。
減税の対象となるのは下記のすべてを満たすマンションです。
- 築後20年以上
- 総戸数が10戸以上
- 適切な管理計画を有するマンションであることが自治体から認定されている
※管理計画の認定基準未満から認定基準以上に修繕積立金を引き上げた場合のみ減税の対象
上記のマンションにおいて、対象の期間内に2回目の長寿命化工事を完了すると、工事の翌年に区分所有者が納める建物部分の固定資産税が1/2〜1/6の範囲内で減額されます。
長寿命化工事とは、外壁塗装等工事、床防水工事、屋根防水工事の3種類です。
減額幅は、自治体ごとに条例で定められます。
減税の対象になるのは、2023年(令和5年)4月1日〜2025年(令和7年)3月31日のあいだに2回目の長寿命化工事が完了した対象マンションの固定資産税でした。
令和7年度の税制改正大綱では、この対象期間が2年間延長され、2025年(令和7年)4月1日~2027年(令和9年)となることが明記されています。
また、申請方法も簡略化され、管理組合が市町村に必要書類を一括で提出すれば、区分所有者が個別に申告しなくても減税が受けられるようになりました。
その他の主な改正点
令和7年度の税制改正大綱では、住宅ローン控除やマンション長寿命化促進税制の延長の他にも、個人に課せられる税金に関わるさまざまな見直しが記載されています。
ここでは、改正点の中から基礎控除と給与所得控除の引き上げについて解説します。
基礎控除の引き上げ
基礎控除は、所得税や住民税を計算する際に、所得から差し引ける所得控除の一種です。
納税者やその家族の最低限の生活を保障するために設けられた制度であり、1年間の合計所得金額が2,500万円以下であるすべての人が受けられます。
これまで、基礎控除の控除額は所得金額2,400万円以下に適用される48万円が最高でした。
令和7年度税制改正大綱では、所得金額2,350万円以下の人を対象に基礎控除の控除額が10万円増額され58万円となることが決まりました。
近年の物価上昇により、食費や水道光熱費などの負担が重くなっていることから、可処分所得を増やすために基礎控除額が引き上げられることになったのです。
一方、合計所得金額が2,400万円を超えると控除額は段階的に引き下げられ、2,500万円を超えると0円になる点は変わりません。
2,400万円超~2,450万円以下は32万円、2,450万円超~2,500万円以下は16万円、2,500万円超は0円となります。
給与所得控除の引き上げ
給与所得控除は、所得税や住民税を計算する際に、給与収入に応じて決まる一定金額を必要経費とみなして、所得から差し引くことができる制度です。
給与所得控除の金額は55万〜195万円であり、給与等の収入金額に応じて決まります。
令和7年度税制改正では、最低額が10万円上乗せされ、65万円に引き上げられることが決められました。
また、先述の基礎控除の引き上げと合わせて、所得税の課税対象となるいわゆる年収の壁が103万円から123万円に上昇します。
まとめ
- 令和7年度税制改正では、子育て世帯や若年夫婦世帯向けに住宅ローン控除の借入限度額が引き上げられることが決められた
- マンション長寿命化促進税制が延長され、固定資産税の減額や申請手続きの簡略化が行われる
- 基礎控除と給与所得控除はそれぞれ10万円引き上げられ、年収の壁は103万円から123万円に上昇した
【コラム執筆者】
品木 彰(シナキ アキラ)
プロフィール
保険・不動産・金融ライター。ファイナンシャルプランナー2級技能士。大手生命保険会社や人材会社での勤務を経て2019年1月に独立。年間で700本以上の記事執筆に加えて、不動産を始めとしたさまざまな記事の監修も担当している。
https://daisakukobayashi.com/