変動金利は今後どうなる?日銀のマイナス金利の解除と追加の利上げ影響

住宅ローンを組んでマイホームを購入する人にとって、特に気になるのが「これから変動金利はどうなるのか」ではないでしょうか。
日本の中央銀行である日本銀行(日銀)が政策金利を引き上げると、変動金利も連動して上昇する可能性があります。
2024年、日銀は政策金利を少しずつ引き上げており、その影響で変動金利は上昇傾向にあります。
今回は、変動金利の仕組みや今後の見通し、金利が上昇したときの対策方法を解説します。
変動金利の決まり方と日銀の利上げによる影響
まずは、変動金利が何をもとに決められており、日銀の金融政策にどのような影響を受けるのかを解説します。
変動金利は政策金利とほぼ連動する
金融機関の多くが変動金利を決めるときの指標としているのが「短期プライムレート」という優良企業に対する短期貸出の金利です。
短期プライムレートは、日銀が定める政策金利の影響を受けます。
そのため、日銀が政策金利を引き上げると、基本的には変動金利も上昇します。
一方、固定金利は「新10年物国債」という金融商品の金利をもとに決まります。
新発10年物国債の金利は、政策金利の変動だけでなく、景気や為替ないさまざまな要因の影響を受けて変動するため、これからどうなるのか予測をするのは難しいでしょう。
マイナス金利が解除されたときの影響は限定的
これまでは、各金融機関が日銀に保有する当座預金口座の一部にマイナス金利を適用していました。
これがいわゆるマイナス金利政策です。
2024年3月に行われた金融政策決定会合で、日銀はマイナス金利政策の解除を決めました。
以後は、政策金利を+0〜0.15%で推移するよう促す政策へと変更されました。
マイナス金利政策からゼロ金利政策に変更され利上げとなりましたが、この時点で各金融機関は基本的に短期プライムレートを引き上げず、変動金利も据え置いています。
2016年1月に日銀が、それまでのゼロ金利政策をやめてマイナス金利政策を始めたとき、各金融機関は短期プライムレートを据え置いたためです。
追加の利上げ後は変動金利が上昇する
2024年7月30日と31日に開催された金融政策決定会合で、日銀は政策金利を+0.25%へ引き上げました。
その影響により、各金融機関は2024年10月から短期プライムレートを引き上げ、それにともない変動金利も年0.1〜年0.15%ほど引き上げられています。
ネット銀行が取り扱う変動金利は、基本的に短期プライムレートとは連動していませんが、利上げにともない全体的に引き上げられました。
変動金利の基準金利を決める要素の1つである借入金の調達コスト(=預金の金利など)が上昇したためです。
一方、大手都市銀行の一部は、利上げが実施されたあとも、新規借入時の変動金利を引き上げませんでした。
ネット銀行の変動金利は借入金利の低さが魅力でしたが、利上げが実施されたあとでは、一部の大手都市銀行のほうが低いという逆転現象が起きています。
変動金利の今後はどうなる?
2024年9月19日と20日に開催された金融政策決定会合では「経済や物価の動向が順調に推移するようであれば、早ければ2025年度後半に1.0%に向けて段階的に利上げをする」という意見が出されています。
通常、日銀が利上げをする場合、1回の会合につき年0.25%ずつ引き上げられます。
この意見の通りになるのであれば、2025年の後半までに計3回の利上げが行われ、政策金利は年0.75%引き上げられるでしょう。
しかし、経済が上向いておらず物価も上昇していない状況で利上げをすると、日本の景気が冷え込んでしまいかねません。
日銀は、企業の賃金や海外の経済、為替などさまざまな要素をもとに金融政策を判断しています。
日銀が今後いつ政策金利を引き上げるのかを予測するのは難しいですが、少なくとも急激な利上げをする可能性は低いでしょう。
変動金利の上昇に対策する方法
これから変動金利型の住宅ローンを組んでマイホームを購入する方は、返済途中で上昇するケースに備え、以下の方法で対策をしておくとよいでしょう。
- 繰上返済の資金を準備する
- 全期間固定金利を借り入れる・借り換える
- 5年ルール・125%ルールがある金融機関を選ぶ
対処方法を1つずつ解説します。
1.繰上返済の資金を準備する
変動金利を選ぶ場合は、計画的に繰上返済の資金を準備しておくことをおすすめします。
返済の途中で金利が上昇した際に、まとまった資金で繰上返済をすると、返済額の上昇を抑えられるためです。
住宅ローンの返済が始まったあと、毎月5万円や10万円などを将来に備えて積み立てるとよいでしょう。
もし金利の上昇が起きなかった場合や、上昇幅がわずかであった場合、積み立てたお金を老後資金や教育資金など他の目的に使うことも可能です。
繰上返済の資金は、現金で積み立てることをおすすめします。
投資信託などの金融商品で積み立てをすると、金利が上昇したときに運用成果が振るわず元本割れとなっており、かえって損をする可能性があるためです。
また、金融機関によっては繰上返済をする際に、手数料がかかります。
住宅ローンを借り入れる際に、繰上返済手数料の金額や無料になる条件などをよく確認しておくことが大切です。
全期間固定金利への借り入れる・借り換える
金利上昇リスクを避けるために、全期間固定金利型の住宅ローンを借り入れるまたは借り換える方法もあります。
全期間固定金利であれば、返済期間中ずっと金利が変わらないため、金利上昇に対する不安を抱えることはないでしょう。
ただし、金利の上昇を心配したくないという理由だけで、全期間固定金利を選ぶのはおすすめできません。
全期間固定金利は、借入当初の金利が変動金利よりも高めに設定されているためです。
変動金利と全期間固定金利で借り入れた場合の返済額をシミュレーションで比較し、返済負担が重くなっても金利が変わらない安心を取るべきかよく考えることが大切です。
また、住宅ローンを借り換える場合は、事務手数料や印紙税などの手数料がかかります。
変動金利から全期間固定金利に借り換える場合は、手数料に見合うだけのメリットがあるかどうかもよく考えましょう。
3.5年ルール・125%ルールがある金融機関を選ぶ
金融機関の多くは、金利が上昇したときに返済負担が急増しないよう、変動金利型の住宅ローンに「5年ルール」と「125%ルール」を設けています。
それぞれがどのようなルールなのかは、以下でご確認ください。
- 5年ルール:借入金利が上がっても5年間は返済額を据え置くルール
- 125%ルール:見直し後の返済額は見直し前の1.25倍を上限とするルール
上記のルールがある金融機関で住宅ローンを組めば、変動金利が上昇したときの、返済負担の増加が抑えられます。
一部のネット銀行は、変動金利型の住宅ローンに5年ルールと125%ルールを設けていません。
変動金利型の住宅ローンを借り入れる場合は、これらのルールが設けられているかをよく確認しておくことが大切です。
まとめ
- 日銀が政策金利を引き上げると基本的に変動金利も上昇する
- 日銀は2025年後半までに段階的に利上げをする可能性があるが、急激な利上げをする可能性は低い
- 変動金利の上昇に備えるには、繰上返済の資金を準備したり、全期間固定金利に借り換えたり、5年ルールや125%ルールがある金融機関を選んだりするとよい

品木 彰(シナキ アキラ)
プロフィール
保険・不動産・金融ライター。ファイナンシャルプランナー2級技能士。大手生命保険会社や人材会社での勤務を経て2019年1月に独立。年間で700本以上の記事執筆に加えて、不動産を始めとしたさまざまな記事の監修も担当している。