不動産を売却すると住民税はかかる?計算方法や納税方法を解説
不動産を売却して生じた利益(譲渡所得)は、所得税と住民税の課税対象です。
そのため、不動産の売却で利益が出ると、翌年の住民税が上がることがあります。
今回は、不動産売却時の住民税の計算方法や納税方法、税負担を抑える特例を解説します。
不動産売却をすると住民税は上がる?
不動産を売却すると、売却価格から取得費や譲渡費用を差し引いた利益(譲渡所得)に対して税金がかかります。
譲渡所得にかかる税金は、所得税(譲渡所得税)、住民税の2種類です。
2037年(令和19年)までは、復興特別所得税も課税されます。
不動産の売却で利益が出ると住民税が上がる
不動産の売却によって利益が出た場合、確定申告が必要になります。
確定申告の際に納めるのは、所得税および復興特別所得税のみですが、申告された所得をもとに、翌年の住民税が算出されます。
つまり、不動産売却で利益が出ると、翌年の住民税が上がる可能性があるということです。
不動産売却による住民税の計算方法
譲渡所得の計算方法は、以下の通りです。
- 譲渡所得=譲渡価額 -(取得費+譲渡費用)
※譲渡価額:不動産の売却価格
※取得費:売却した不動産を取得したときに支払った費用
※譲渡費用:不動産を売却するときに支払った諸経費
譲渡所得に課税される税金の税率は、売却した不動産の所有期間に応じて決まります。
所有期間は、売却した年の1月1日時点で判定します。
売却した住宅で何回お正月を迎えたのか考えると分かりやすいでしょう。
例えば、売却した不動産でお正月を4回迎えたのであれば、所有期間は4年であるため、住民税の税率は9%となります。
売却した不動産でお正月を迎えた回数が7回であれば、所有期間は7年であり、住民税の税率は5%です。
所有期間が5年以下のタイミングで不動産を売却するよりも、5年を超えてから売却をした方が税率は低くなります。
不動産売却時の住民税額をシミュレーション
実際に不動産を売却した場合、どのくらいの住民税がかかるのでしょうか。
売却価格や所有期間などの条件を設定し、シミュレーションしてみましょう。
シミュレーションの条件は、以下の通りです。
- 売却価格:4,000万円
- 取得費:3,000万円
- 譲渡費用:100万円
- 所有期間:7年
上記の条件で計算すると、譲渡所得は以下の通りとなります。
- 譲渡所得 = 4,000万円 - (3,000万円 + 100万円) = 900万円
所有期間は7年であるため、900万円は長期譲渡所得となり、税率は15.315%となります。
税額は、以下の通りです。
- 譲渡所得税・住民税の税額 = 900万円 × 15.315%
= 137万8350円
上記税額のうち、住民税分は以下の通りとなります。
- 住民税 = 900万円 × 5% = 45万円
そのため、不動産の売却した翌年に45万円の住民税を納めることになります。
不動産売却後の住民税はいつ、どのように支払う?
では、不動産を売却して利益が出たとき、譲渡所得にかかる住民税はどのように納めれば良いのでしょうか。
住民税の支払い時期と納税方法をみていきましょう。
住民税の支払いは不動産売却の翌年の6月以降
住民税は、前年中の所得に対して課税される税金です。
そのため、不動産の売却によって譲渡所得が発生した年の翌年に、その所得に対する住民税を納付することになります。
また、住民税が課税されるのは、翌年の6月以降です。
例えば、2023年中に不動産を売却して譲渡所得が発生した場合は、2024年の3月15日までに確定申告をし、同じ年の6月以降に住民税を納めます。
一方、所得税や復興特別所得税を納めるのは、確定申告をしたときです。
不動産売却をした年の翌年3月15日までに確定申告を行い、納税も済ませなければなりません。
納税方法は普通徴収と特別徴収の2種類
住民税の納め方には、普通徴収と特別徴収という2種類があります。
不動産を売却した翌年の確定申告で住民税の納税方法を選択します。
普通徴収とは、6月ごろに市区町村から送付される納税通知書をもとに納税者自身が納付する方法です。
納税通知書に記載された税額を、指定された納付期限までに、金融機関やコンビニエンスストアなどで納めます。
普通徴収の場合、住民税は4回に分けて支払うのが原則であり、納期限は6月末、8月末、10月末、翌年1月末であるのが一般的です。
また、一括で納めることも可能です。
会社員や公務員など給与収入を得ている人は「特別徴収」で住民税を納めることもできます。
特別徴収は、勤務先の会社が毎月の給与から住民税を差し引き(天引きし)、従業員に代わって市区町村に納付する方法です。
特別徴収で住民税を納める場合、6月から翌年5月までの12回に分けて給与から天引きされます。
特別徴収の方が1回あたりの納付額は少なくなりますが、普通徴収とのあいだで合計の税額に違いが生じることはありません。
不動産売却時の住民税を抑える方法
不動産を売却したときの住民税の負担を軽減したいときは、譲渡所得に関する特別控除や特例を利用する方法があります。
ここでは、不動産売却時の住民税の負担を抑えられる代表的な方法を2つご紹介します。
3,000万円特別控除を利用する
3,000万円特別控除は、マイホーム(居住用財産)を売却したとき、所定の要件を満たすと譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度です。
例えば、3,000万円で購入した自宅を3,500万円で売却したとしましょう。
譲渡費用は100万円でした。
本来であれば「3,500万円−(3,000万円+100万円)=400万円」の譲渡所得が発生しますが、3,000万円特別控除を適用できると、課税の対象となる譲渡所得は0円となります。
課税譲渡所得が0円になるのであれば、住民税や所得税はかからず納税も不要です。
3,000万円特別控除を適用するためには、売却する本人が住んでいる家を売る必要があります。
また、家を売却する前後の一定期間に、マイホームの売却に関する他の特例を適用していると、3,000万円特別控除は受けられなくなることがあります。
3000万円特別控除について詳しくは、下記の記事をご覧ください。
10年超所有軽減税率の特例を利用する
所有期間が10年を超えるマイホームを売却する場合、所定の要件を満たすと特例により、譲渡所得にかかる税金の税率が軽減されます。
通常、所有期間が5年を超える不動産を売却したときの税率は、20.315%(所得税・復興特別所得税:15.315%、住民税5%)です。
10年超所有軽減税率の特例を適用できると、課税の対象となる譲渡所得のうち6,000万円までにかかる税率が14.21%(所得税:10.21%、住民税4%)に軽減されます。
そのため、6,000万円までにかかる住民税の税率が5%から4%に下がります。
まとめ
- 不動産の売却で利益(譲渡所得)が出ると、翌年の住民税が上がることがある
- 譲渡所得にかかる住民税の税率は、不動産の所有期間が5年以下であれば9%、5年超であれば5%となる
- 3,000万円特別控除や10年超所有軽減税率の特例を利用すると、不動産売却時の住民税を抑えられる可能性がある
品木 彰(シナキ アキラ)
プロフィール
保険・不動産・金融ライター。ファイナンシャルプランナー2級技能士。大手生命保険会社や人材会社での勤務を経て2019年1月に独立。年間で700本以上の記事執筆に加えて、不動産を始めとしたさまざまな記事の監修も担当している。
https://daisakukobayashi.com/