コラム

不動産売買契約書とは?書かれている内容と確認すべき項目を解説

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不動産の売買契約を結ぶときは「不動産売買契約書」を取り交わすのが一般的です。

 

不動産売買契約書には難しい専門用語が多く書かれていますが、1つひとつの項目をきちんと確認しなければ後でトラブルになりかねません。

 

今回は、不動産売買契約書に書かれている内容や契約時にチェックすべきポイントを解説します。

 

 

不動産売買契約書の基礎知識

 

不動産売買契約書は、主と買主の間で交わされる契約の内容を明文化したものであり、法的拘束力を持っています。

 

 

不動産売買契約書の内容

 

不動産売買契約書に記載される内容は、契約ごとに異なります。

 

全国宅地建物取引業協会連合会が作成する不動産売買契約書のフォーマットには、以下の項目が記載されます。

 

  • 売買の目的物の表示:土地と建物の所在地、地番、地目、地積、家屋番号、構造、階建、床面積などの詳細
  • 売買代金総額:土地代金、建物代金、消費税額及び地方消費税額の合計額
  • 手付金:契約締結時支払いの金額
  • 中間金:支払いの回数、日付、金額
  • 残代金:支払い日と金額
  • 所有権移転・引渡し・登記手続きの日:具体的な日付
  • 公租・公課分担の起算日:具体的な日付
  • 手付解除の期限:具体的な日付と期間
  • 違約金の額:売買代金の何%相当額か
  • 反社会的勢力排除に係る違約金の額:売買代金の何%相当額か
  • 反社会的勢力の事務所等活動の拠点に係る制裁金の額:売買代金の何%相当額か
  • 融資利用の場合の詳細:融資申込先、融資承認予定日、融資金額、契約解除期限
  • 契約不適合責任の通知期間:具体的な期間

 

また、以下の全24条の不動産売買契約条項も記載されています。

 

  • 第1条:売買の目的物及び売買代金
  • 第2条:売買対象面積
  • 第3条:手付
  • 第4条:境界の明示
  • 第5条:売買代金の支払時期及びその方法
  • 第6条:所有権移転の時期
  • 第7条:引渡し
  • 第8条:所有権移転登記の申請
  • 第9条:物件状況の告知
  • 第10条:付帯設備の引渡し
  • 第11条:負担の消除
  • 第12条:印紙代の負担
  • 第13条:公租・公課の負担
  • 第14条:収益の帰属・負担金の分担
  • 第15条:手付解除
  • 第16条:引渡し前の滅失・損傷
  • 第17条:契約不適合を除く契約違反による解除
  • 第18条:反社会的勢力の排除
  • 第19条:融資利用の場合
  • 第20条:契約不適合責任
  • 第21条:諸規約の承継
  • 第22条:協議事項
  • 第23条:管轄の合意
  • 第24条:特約条項

 

上記の点をすべて確認し、特段の問題がなければ、契約書に売主と買主の署名・押印をします。

 

不動産売買契約書の記載項目は非常に多く、すべてを確認するのには時間がかかります。

 

しかし、不動産を円滑に取り引きするためには、すべての内容に目を通し充分に理解しなければなりません。

 

契約書の内容に不明な点がある場合は、不動産会社の担当者に質問するなどして、契約内容を十分に理解してから署名・押印するようにしましょう。

 

 

不動産売買契約書が必要な理由

 

不動産売買契約書が必要である主な理由は、以下の通りです。

 

  • 口頭での合意だけではあとでトラブルに発展する可能性がある
  • 売主と買主の権利と義務を明確にし、法的な拘束力を持たせることができる
  • 第三者に対しても契約内容を証明できる
  • 金銭のやり取りや所有権移転のタイミングを明記することで、スムーズな取引が可能になる
  • 契約不履行や物件の欠陥などの対処方法を事前に取り決めておける

 

このように、不動産売買契約書は売主と買主の双方にとって、安心・安全な取引を行うために不可欠な書類なのです。

 

 

不動産売買契約書でよく確認すべきポイント

 

続いて、不動産売買契約を結ぶ際に、契約書でよく確認すべきポイントをみていきましょう。

 

 

売買する物件と売買代金に関する確認事項

 

不動産売買契約書を交わす際は、まず売買物件の情報と売買代金が正しく記載されているかどうかを入念に確認することが大切です。

 

具体的には、以下のような点をチェックしましょう。

 

  • 売買物件の表示内容(所在地、地番、地目、面積など)に間違いがないか
  • 実際の面積と登記簿上の面積に差があった際の精算の有無・内容
  • 売買代金の金額に相違がないか
  • 手付金の額や支払期日が双方の合意通りとなっているか
  • 売買代金の支払方法(現金、銀行振込など)や支払期日が明確に記載されているか

 

上記は、不動産売買契約における根幹ともいえる部分です。

 

金額や数値などに誤りがないかを1つずつよく確認することが大切です。

 

また、実際の不動産売買契約書では、取引対象となる土地の面積について、登記簿上と実測値に差があった場合の取り扱いが規定されています。

 

例えば、実際に測った面積が登記簿に記載されている面積よりも狭い場合、減少分に応じて売買代金を精算する旨が規定されていることがあります。

 

 

所有権移転や引渡しに関する確認事項

 

不動産の売買契約を締結したあとは、その1〜2か月後に物件の引渡しが行われ、売主から買主へと所有権が移転されます。

 

所有権移転と引渡しに関する条項も、売買契約書で細かく規定されているため、1つずつ慎重に確認することが大切です。

 

確認すべき主なポイントは、次の通りです。

 

  • 所有権が移転する時期はいつか
  • 所有権移転登記などの登記費用を売主と買主のどちらが負担するのか
  • 付帯設備表に記載された設備と不具合に対する責任
  • 引渡しの時期や方法は、売主と買主の認識通りか
  • 引渡し前における物件の滅失や毀損が生じた場合の対応

 

通常の不動産取引では、所有権移転登記や抵当権設定登記の費用は買主が負担します。

 

売主が負担するのは、住所や氏名の変更手続きに要する費用などです。

 

ただし、契約内容によっては上記とは異なる場合もあるため、所有権の移転に関する費用を誰がどのように負担するのかは、不動産売買契約書で確認しておきましょう。

 

付帯設備表は、売却の対象となる物件に残される家具や設備などを買主に明示するための書類です。

 

物件と同時に引き渡される設備や、故障・不具合が合った場合に売主が取る責任の有無もよく確認すべき項目となります。

 

また、不動産取引の多くでは、物件が引き渡される前に自然災害などで土地や建物が使えない状態になった場合、契約解除ができるとされています。

 

しかし、一部を破損している場合は、原則として売主負担で補修をしなければならず、契約解除は認められないのが一般的です。

 

引き渡し前に滅失や損傷が発生した場合、どのようなケースで契約解除となるのかも入念に確認することが大切です。

 

 

契約解除に関する確認事項

 

手付解除や契約違反による解除などに関する条件も、確認しておきたいポイントです。

 

  • 手付金解除ができる期間やその方法
  • 契約違反による解除の場合の違約金はいくらか

 

手付解除とは、手付金を交付することによって、契約を解除できるようにすることです。

 

一般的に不動産売買では、物件の売買契約が締結された後から引き渡し日までのあいだに、買主は売主に支払った手付金を放棄すると契約解除ができます。

 

一方、売主の都合で契約解除をする場合、受領している手付金の倍額を買主に支払わなければなりません。

 

手付解除の内容や契約解除ができる期限についても、不動産売買契約書でよく確認しておきましょう。

 

 

契約不適合責任の確認事項

 

契約不適合責任は、引き渡された物件が契約内容に適合しないとき、売主が負う責任です。

 

例えば、引き渡された物件に、契約時には明らかにされていなかったシロアリ被害や雨漏りなどの瑕疵があった場合、契約不適合責任により売主に補修費用などを請求できます。

 

契約不適合があったとき、買主が売主に請求をするための条件や、請求できる期間も不動産売買契約書に記載されているため、よく目を通しておくことが大切です。

 

 

住宅ローンを利用する場合の確認事項

 

住宅ローンを利用して不動産を購入する場合は、以下の項目を確認しましょう。

 

  • 買主が住宅ローンを借り入れる金融機関名
  • 融資の承認予定日
  • 借入予定額
  • 借入れが成立しなかった場合の契約解除(ローン特約)の規定

 

特に確認すべきなのが、ローン特約です。

 

売買契約を締結したものの、買主が金融機関の本審査に通過できず、住宅ローンの借り入れができなくなった場合、ローン特約による契約解除ができるのが一般的です。

 

通常、住宅ローンの本審査を受けるためには、仮審査(事前審査)に通過しなければなりません。

 

仮審査に通過できたとしても「仮審査の申込時に申告していない借り入れがあった」「本審査までに新たな借り入れをした」などの理由で、本審査に落ちるケースがあります。

 

買主側が住宅ローンを利用するのであれば、売主は不動産売買契約書でローン特約が規定されていることを確認しておくと安心です。

 

 

まとめ

 

  • 不動産売買契約書は売主と買主の間で交わされる重要な書類であり、法的拘束力を持つため、内容を十分理解し納得した上で締結することが重要
  • 売買物件の情報と売買代金が正しく記載されているか入念に確認が必要。面積の差異への対応、支払方法や期日なども明確に規定されているかもチェックする
  • 所有権移転の時期、登記費用の負担、付帯設備の引き継ぎ、物件の滅失・毀損時の対応など、所有権移転や引渡しに関する条項を1つずつ慎重に確認することが大切​​​​​​​​​​​​​​​​



【コラム執筆者】

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品木 彰(シナキ アキラ)

プロフィール

保険・不動産・金融ライター。ファイナンシャルプランナー2級技能士。大手生命保険会社や人材会社での勤務を経て2019年1月に独立。年間で700本以上の記事執筆に加えて、不動産を始めとしたさまざまな記事の監修も担当している。

https://daisakukobayashi.com/