
空き家対策措置法が改正!所有者への影響を解説
近年の日本では、増加し続ける空き家が問題視されています。
そこで2014年に、管理が行き届いていない空き家の増加を減らすために「空き家対策措置法」が制定されました。
しかし、その後も空き家問題は深刻化し続けていたため、2023年には空き家対策措置法が改正されることになりました。
空き家を所有する方にとって、今回の改正は他人事ではありません。
そこで今回は、改正空き家対策措置法の概要を解説します。
そもそも空き家対策措置法とは?背景と目的
空家等対策特別措置法(以下、空き家対策措置法)は、2014年(平成26年)11月に成立した法律です。
空き家対策措置法では、空き家の所有者の責務や市町村の役割などに加えて、特に危険な状態にある「特定空家等(以下、特定空き家)」に対する措置が規定されています。
特定空き家とは、周囲に著しい悪影響を及ぼしかねない空き家のことです。
以下のうち、どれか1つでも当てはまると、自治体から認定されてしまいます。
- 倒壊など著しく保安上危険となるおそれがある
- アスベストの飛散やゴミによる異臭の発生等、著しく衛生上有害となるおそれがある状態
- 適切な管理がなされていないことで著しく景観を損ねている状態
- その他、立木の枝の越境や棲みついた動物の糞尿などの影響によって、周辺の生活環境を乱している状況
※出典:政府広報オンライン「年々増え続ける空き家!哲朗にしないためのポイントは?」
特定空き家と認定された家屋の所有者は、自治体による助言や指導の対象です。
助言や指導をしても改善がみられないと、自治体から勧告や命令を受けることになり、さらにそれにもしたがわない場合は、最大50万円以下の過料に課されます。
また、特定空き家等に認定されると、固定資産税や都市計画税に「住宅用地の特例」が適用されなくなります。
住宅用地の特例とは、戸建て住宅やマンションなど、人が住むための家屋の敷地として利用されている土地の税負担を軽減する特例のことです。
この特例が適用されなくなると、土地部分の固定資産税は最大6倍、土地部分の都市計画税は最大3倍に増えてしまいます。
改正の必要性と目的空き家の適切な管理と活用促進
近年の日本では、少子高齢化の進行や人口の減少などの影響により、空き家が増加傾向にあります。
総務省の調査によると、使用目的のない空き家の数は1998年では182万戸であったのが、2018年には349万戸と約1.9倍に増加したとされています。
また、2030年には470万戸にまで増加する見込みです。※出典:総務省「住宅・土地統計調査」
2014年(平成26年)に制定された空き家対策措置法では、特定空き家への対処を中心に措置の内容が定められていました。
しかし、特定空家となってからでは、自治体が対応するにも限界があるのが実情でした。
こうした状況を踏まえ、2023年(令和5年)12月23月に「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」が施行されましたので。
改正後の空き家対策措置法では、空き家の所有者に課せられる責務が強化されました。
加えて「活用拡大」、「管理の確保」「特定空家の除去等」の3本柱で、空き家の対応を強化することが定められました。
改正空き家対策措置法の主なポイントと影響
では、改正後の空き家対策措置法は、改正前とどのような点が異なるのでしょうか。
ここでは、法改正による変更点のうち、すでに空き家を所有している方や、将来的に相続などで空き家を所有する可能性がある方が押さえておきたいポイントを解説します。
所有者の課される責務が強化された
改正前の空き家対策措置法では、空き家の所有者に適切な管理の努力をすることが求められていました。
改正法では、空き家の所有者に課せられる責務が強化され、国や自治体の施策への協力する努力義務が追加されています。
空き家の管理の確保
改正後の空き家対策措置法では、管理が不適切な段階から所有者に働きかけを行うことで、特定空き家の発生を未然に防ぐ措置が強化されました。
これまでの空き家対策措置法では、周囲に著しい悪影響を及ぼす可能性があり、特定空き家と認定されたあとに、自治体による指導や勧告などの対象となっていました。
それが今回の改正で、そのまま放置すれば特定空き家になる恐れがある空き家は「管理不全空家」と認定され、その時点で指導や勧告の対象となります。
また、勧告を受けた管理不全空家の敷地には、固定資産税等の住宅用地の特例が適用されません。
つまり、これまでよりも自治体の指導・勧告の対象になりやすくなっただけでなく、固定資産税や都市計画税の負担も増えやすくなったということです。
空き家の活用拡大
空き家対策措置法の改正により、空き家の活用を促進するための規定が設けられました。
まず、中心市街地や地域の再生拠点など、空き家の活用を重点的に進めたいエリアは、自治体により「空家等活用促進区域」と指定されるようになりました。
空家等活用促進区域内では、市区町村が定める活用指針に沿っていれば、規制が合理化され、用途変更や建て替えなどがしやすくなります。
例えば、接道規制が緩和される区域内では、狭い道路に面した空き家でも、安全確保を条件として、空き家を活用するためのリフォームや建て替えができるようになります。
また市区町村長は、所有者に対して指針に沿った空き家の活用の要請ができるようになりました。
さらに改正法では、NPO法人や社団法人などを「空家等管理活用支援法人」として指定する制度が創設されました。
指定を受けた法人は、所有者に寄り添い、空き家の管理・活用をサポートします。
特定空家等に対する措置の強化
これまでも特定空き家については、市区町村長が所有者に対し、除却や修繕などの必要な措置を講ずるよう助言、指導、勧告、命令を行うことができました。
所有者が命令にしたがわない場合、行政代執行により、市区町村が強制的に家屋の解体や雑草・樹木の伐採などを行うことも可能です。
今回の改正では、特定空き家に対する措置をさらに強化するため、いくつかの新しい制度が導入されました。
まず挙げられるのが「緊急代執行」の創設です。
緊急代執行は、命令などの事前手続きを経る時間的余裕がないほど危険な状態である特定空き家に、所有者への事前通知がなくても行政代執行で対処ができる制度です。
また、所有者が分からない空き家や相続放棄された空き家がある場合、市区町村は裁判所に財産管理人の選任を請求できるようになりました。
裁判所によって選ばれた財産管理人※は、所有者に代わって修繕や処分などができます。
※相続財産清算人、不在者財産管理人、所有者不明建物管理人など
空き家は適切に管理することが大切
空き家対策措置法の改正により、所有者には国や自治体の施策に協力する努力義務が加わり、空き家の適切な管理がより求められるようになりました。
管理が不十分なまま放置された空き家は、雑草が伸び放題になったり、外壁が剥がれ落ちたりと、周囲の生活環境に悪影響を及ぼしかねません。
空き家を所有しているのであれば「窓を開けて空気を入れ換える」「水道や排水設備を定期的に点検・清掃する」「庭木を剪定して越境を防ぐ」などで適切に管理をしましょう。
また改正後は、管理が行き届いておらず「管理不全空家」と認定された時点で、市区町村による助言・指導、さらには勧告の対象となります。
自分自身による管理が難しい場合は、改正法で創設された空家等管理活用支援法人に相談をするのも選択肢の一つです
また、将来的に空き家を利用する予定がないのであれば、売却をした方が良いかもしれません。
空き家の売却も選択肢に含まれるのであれば、早めに不動産会社に相談することをおすすめします。
まとめ
- 空き家対策措置法の改正により、所有者の責務が強化され、「活用拡大」「管理の確保」「特定空家の除去等」の3本柱で空き家の対応が強化された。
- 改正後は、そのまま放置すれば特定空き家になる恐れがある空き家は「管理不全空家」と認定され、指導や勧告の対象となる
- 管理不全空家と認定され、自治体から勧告を受けた時点で固定資産税や都市計画税に住宅用地の特例が適用されなくなる
【コラム執筆者】
品木 彰(シナキ アキラ)
プロフィール
保険・不動産・金融ライター。ファイナンシャルプランナー2級技能士。大手生命保険会社や人材会社での勤務を経て2019年1月に独立。年間で700本以上の記事執筆に加えて、不動産を始めとしたさまざまな記事の監修も担当している。
https://daisakukobayashi.com/