コラム

地震保険の加入を検討するときのポイントとは?

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マイホームを購入するとき、地震保険に加入すべきかどうか悩む人は少なくありません。

 

世界有数の地震大国といわれる日本で住宅を購入する場合、地震保険は必要なのでしょうか。

 

今回は、持ち家がある人が地震保険の加入を慎重に検討すべき理由を解説します。

 

 

地震保険の必要性を考えるときのポイント

 

まずは、地震保険に加入すべきか検討するうえで知っておきたいポイントをご紹介します。

 

日本は世界有数の地震大国

 

日本には、全国で2,000以上もの活断層があるといわれており、住む場所にかかわらず地震の被害にあうリスクがあります。

 

2010年以降は、最大震度7を記録した地震が2024年2月までの14年間で計4回も発生しました。

 

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2024年1月1日に能登半島で大地震が発生したのも記憶に新しいところ。

 

この地震では、家屋の倒壊や土砂災害などで甚大な被害が発生し、241人※もの尊い命が奪われました。

※2024年2月16日時点

 

また、今後30年以内に「南海トラフ巨大地震」が70〜80%の確率で発生し、日本各地に甚大な被害をもたらすと予測されています。

 

政府の中央防災会議によると、南海トラフ巨大地震が発生した場合、静岡県から宮城県の一部で震度7、それらに隣接するエリアで6弱・6強の強い揺れが起こるとされています。

 

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※画像引用:気象庁

 

 

火災保険では地震での火災は補償されない

 

地震や噴火、それらによる津波によって生じた損害は、火災保険の補償対象外です。

 

例えば、地震による火災で火災保険の補償対象である建物や家財が燃えてしまったとしても、保険金は支払われません。

 

また、洪水や土砂崩れなどによる損害をカバーする「水災補償」を火災保険にセットしていても、津波によって建物や家財が受けた損害は補償対象外となります。

 

地震や津波による損害に備えるためには、火災保険に加えて地震保険にも加入しておく必要があります。

 

 

公的な制度では不足する可能性がある

 

地震や津波などで自宅が損害を受けたときは「被災者生活支援制度」による支援金を受け取れる可能性があります。

 

支援金には基礎支援金と加算支援金があり、支給額は以下の通りとなっています。

 

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※内閣府 防災情報のページ「被災者生活再建支援法の概要

 

支援金が支給されるかどうかは、地震や津波などで住宅が負った損害の程度によって決まります。

 

また、最高300万円の支援金を受け取るためには、地震によって自宅が全壊しており、かつ新しい住宅を建築・購入しなければなりません。

 

300万円以内で新築や購入ができる住宅は非常に限られるため、被災者生活支援制度による保障だけでは再建が難しい可能性もあります。

 

 

地震保険の補償内容

 

続いて、地震保険の保険金の決まり方や保険料の算出基準をみていきましょう。

 

保険金は損害の程度に応じて支払われる

 

地震保険の保険金額は、火災保険の保険金額の30〜50%のあいだで設定します。

 

例えば、火災保険の保険金額が建物4,000万円、家財1,000万円であった場合、地震保険の保険金額は、建物1,200万〜2,000万円、家財300万〜500万円の範囲で設定が可能です。

 

ただし、建物5,000万円、家財1,000万円を超える金額には設定できません。

 

地震保険の補償対象となる建物や家財が損害を負ったとき、損害の程度に応じて保険金の支払額が決まります。

 

  • 全損:保険金額の100%(時価が限度)
  • 大半損:保険金額の60%(時価の60%が限度)
  • 小半損:保険金額の30%(時価の30%が限度)
  • 一部損:保険金額の5%(時価の5%が限度)

 

損害の程度は、建物や家財の損害状況に応じて判定されます。建物の場合「主要構造部(軸組・基礎・屋根・外壁等)の被害額」または「焼失・流失した部分の床面積」で損害の程度が判定されます。

 

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家財については、以下の通りです。

 

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保険料はエリアや建物の構造などで異なる

 

地震保険の保険料は、住宅の所在地によって異なります。

 

エリアによって、地震が発生するリスクが異なるためです。

 

建物の構造も地震保険の保険料に影響します。

 

地震保険では、以下のイ構造とロ構造によって保険料が異なります。

 

  • イ構造:鉄骨・コンクリート造の建物、耐火建築物など
  • ロ構造:木造などのイ構造以外の建築物

 

また、地震保険には建物の免震・耐震性能に応じた割引制度があります。割引率は、以下の通りです。


地震保険の契約期間は1〜5年であり、契約期間が長ければ長いほど割引幅が大きくなります。

 

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地震保険の保険料は、日本損害保険協会や各損害保険会社のWebサイトで試算できます。

 

地震保険の加入を検討する際に活用すると良いでしょう。

 

 

地震保険に加入するメリット

 

地震保険に加入する主なメリットは、以下の通りです。

 

  • 震災発生時にスムーズに生活を再建できる
  • 地震保険料控除を受けられる

 

 

震災発生時にスムーズに生活を再建できる

 

地震は、いつどこで発生するのかを予測するのが困難です。

 

その一方で、ひとたび地震が発生すると家屋や所有物に甚大な被害をもたらす可能性があります。

 

地震の被害を受けると、家屋の修理や建て替え、家財の再購入などに多くのお金がかかるかもしれません。

 

また、住宅ローンの返済中である場合、地震によって建物が倒壊すると、旧居と新居2つの住宅ローンを抱えることもあります。

 

地震保険の保険金を受け取ることができれば、そのお金を活用して、スムーズに生活を建て直しやすくなるでしょう。

 

また、地震保険の保険金額は火災保険の最大50%ですが、保険会社によっては「地震危険等上乗せ補償特約」をセットすることで最大100%の補償が受けられるようにすることも可能です。

 

火災保険の100%が補償されるようにしていれば、地震で自宅が全壊をしたときに保険金で新居の購入や建築をしやすくなります。

 

地震のリスクは、防災科学技術研究所の「J-SHIS Map」で確認が可能です。また、自治体が公表するハザードマップを確認するのも有効です。

 

地震の被害に遭うリスクが想定されるエリアに持ち家を購入するのであれば、地震保険の加入を検討してはいかがでしょうか。

 

 

地震保険料控除を受けられる

 

地震保険に加入している人は「地震保険料控除」という所得控除を受けられます。

 

地震保険料控除を受けられると、所得税や住民税を計算するときに一定の金額が所得から控除されるため、税負担を軽減できます。

 

所得から控除される金額は、以下の通りです。

 

1709199596-bhUx7.png※出典:国税庁「No.1145 地震保険料控除

 

 

地震保険の注意点

 

地震保険に加入したとしても、以下のようなケースでは保険金が支払われません。

 

  • 故意もしくは重大な過失または法令違反による損害
  • 地震の発生日から10日以上経過後に生じた損害
  • 戦争、内乱などによる損害
  • 地震等の際の紛失・盗難の場合

 

また、以下は地震保険の補償対象外です。

 

  • 工場、事務所専用の建物など住居として使用されない建物
  • 1個または1組の価額が30万円を超える貴金属・宝石・骨とう
  • 通貨
  • 有価証券(小切手、株券、商品券等)
  • 預貯金証書
  • 印紙
  • 切手
  • 自動車等

 

加えて地震保険は、火災保険と必ずセットで加入する必要があります。

 

火災保険には加入せず、地震保険のみに加入するということはできません。

 

 

まとめ

 

  • 日本は地震大国であり将来的には南海トラフ巨大地震が発生する可能性がある
  • 地震保険に加入すると建物や家財の損害の程度に応じて保険金が支払われる
  • 地震保険の保険金を受け取ることができれば、スムーズに生活を再建しやすくなる

 

 

【コラム執筆者】

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品木 彰(シナキ アキラ)

プロフィール

保険・不動産・金融ライター。ファイナンシャルプランナー2級技能士。大手生命保険会社や人材会社での勤務を経て2019年1月に独立。年間で700本以上の記事執筆に加えて、不動産を始めとしたさまざまな記事の監修も担当している。

https://daisakukobayashi.com/