コラム

「うちは大丈夫」は間違い!? 相続でなぜ家族が揉めるのか 争いの原因を解説

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相続対策は重要です。

 

「遺言さえ残しておけば、残された家族同士がこんなに争うことなんてなかったのに」というケースを相続に関わる専門家として数多く見てきました。

 

相続対策をしていない方の中には、「うちはお金がないから平気」、「うちの家族は仲が良いので大丈夫」と思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

今回のコラムでは、相続でなぜ争いになるのか解説したいと思います。

 

 

遺産が少ないから大丈夫は間違い

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図は、裁判所の「司法統計」をもとにした、相続財産額別に「遺産分割事件」の調停成立件数の割合を示したものです。

 

全調停成立件数のうち78%の事件が、「遺産の価額が5,000万円以下」となっています。

 

統計上、遺産が少なかったら争いが起こらないとは言えないのです。

 

むしろ、図を見て分るとおり、遺産の価額が高額になればなるほど、争いの件数は減っています

 

もちろん、遺産の価額が高額になればなるほど、そのような相続の件数自体が減っていくということはありますが、いわゆる資産家の方は、遺産が多いゆえに事前にトラブルを予測して、しっかりと相続対策をしていることが多く、その結果、相続時の争いが少ないということがあります。

 

相続対策をしっかりとしておけば未然に防ぐことができた争いも、何の対策もせずに放置しておくと、当然、残された家族の間で揉め事が発生する危険性が高まります。

 

  • 遺産の価額が少なくても相続時に争いが起こる危険性がある
  • 相続対策をしっかりと行うと残された家族間で争いになるリスクを回避できる

 

 

遺産を平等に分けることが難しいケースがある

 

遺言がない場合には、遺産は、原則として、法律で定められた割合=法定相続分に従って、相続人間で平等に分けられることになります。

 

しかし、遺産構成や相続人が元々保有している資産によっては、平等に分けることが難しいケースがあります。

 

事案例----------------------------------------------


高齢の母親とその長男が、母親所有の自宅に、同居していました。

 

母親が亡くなり、その遺産を長男と次男とで分けることになりましたが、母親のめぼしい遺産は実家(4,000万円相当)のみでした。

 

長男は、母親と住んでいた実家にそのまま住み続けたいと主張し、次男は既に実家を離れていたため、それを承諾しましたが、代償金として、実家の価額の半分に値する現金2,000万円を要求しました。

 

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このようなケースで、長男が4,000万円相当の実家を受け継ぎ、次男が2,000万円を代償金として受け取ることができたなら、特に問題は起きません。

 

長男は、4,000万円相当の実家を取得し、代償金2,000万円を支払うことにより、結果、2,000万円プラスになる計算で、次男は代償金2,000万円取得するので、法定相続分通り各相続人が遺産の1/2にあたる2,000万円を取得することになるからです。

 

ただ、もし、長男が代償金を用意することができなければ、上記のような遺産分割は不可能であり、また、不動産を代償分割する際の代償金は、上記の2,000万円のように、通常、大金となるため、特別な準備がない状況で捻出するのは困難と言わざるをえません。

 

遺産を法定相続分通りに平等に分割するためには、実家を売却し、その売却代金を兄弟で分けることが一つの解決策になりますが、そうすると、長男は、いままで住み続けてきた実家を追い出される格好となってしまうため、争いに発展しやすく、特に実家に強い思い入れ等があると、より争いが激化する危険性もあります。

 

 

遺産を平等に分けても不公平となってしまうケースがある

 

遺産を平等に分けたとしても、それによって、相続人間で不公平な分配となってしまい、争いに発展するケースがあります。

 

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例えば、亡き父の遺産4,000万円を、長女と次女が、それぞれ2,000万円ずつ相続したとします。

 

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これは、法定相続分通りの平等な分配であり、一見すると、争いが発生する余地はないようにも思えます。

 

ただ、もし以下のような事情があった場合はどうでしょうか。

 

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実は、父は生前から長女を特に可愛がっており、留学のための資金や、マイホーム購入資金を援助しており、その総額は2,000万円になる。

 

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このような事情があった場合には、長女は、生前に特別な援助を2,000万円、遺産として2,000万円、合計すると4,000万円分の恩恵を受けており、遺産2,000万円分しか恩恵を受けることのできない次女からすると不公平に映ります。

 

また、感情面からも、次女が「姉さんばっかり可愛がってもらってズルい」というような感情を心のどこかに抱いてるケースも少なくなく、積もり積もった感情、今まで抱いてきた不満を、相続時に爆発させるということも珍しくありません。

 

上記のようなケースでは、法律上、特別受益というものを主張すると、生前の特別な援助を遺産として計算し直し、合計6,000万円の遺産を、それぞれ半分ずつ相続人に分配し、長女は特別受益2,000万円+遺産1,000万円を取得し、次女は遺産を3,000万円取得することができます。

 

ただ、そのような専門的知識を当事者が持っているとは限らず、一方は平等に分けることを主張し、他方は、それが不公平であることを理由に分け前の変更を求め、争いになることが多々あります。

 

 

相続で揉める原因まとめ

 

相続においては、形式的な平等だけでなく、実質的な公平を求め争われることが多々あります。

 

また、感情面の不満から、争いに発展することも少なくなく、その感情には、相続人への不満もあるでしょうが、亡き父・母などへの不満も混ざった複雑な想いであることも珍しくありません。

 

残された家族同士が争ってしまわないようにするためには、遺言などにより、しっかりと相続対策することが大切です。

 

遺言を残す際には、「付言事項」という注意書・説明書を付け加えることが可能で、そこに家族への「想い」を綴ることで、感情的な対立を防ぐ効果も期待できます。

 

当事務所では、長年、相続問題・相続対策に携わってきた専門家が、無料相談を実施しています。

 

相続対策について気になる方、お悩みの方は、お気軽に当事務所までご相談ください。

 

 

【コラム執筆者】

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髙橋 朋宏

プロフィール

経堂司法書士事務所代表司法書士。一般社団法人相続総合支援協会理事。不動産と相続に関する分野に専門性を有する。難しいことを分かりやすく説明することを得意とし、ラジオ出演、新聞・雑誌への寄稿、セミナー、講演活動などを行うタレント文化人。

経堂司法書士事務所|世田谷区で30年の実績 (kyodo-office.com)