コラム

2024年の住宅ローン金利はどうなる?2023年の推移も解説

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マイホームの購入を考えている方にとって、住宅ローン金利は今後どうなるのかは、非常に気になるものです。

 

そこでこの記事では、2023年の住宅ローン金利がどのように推移し、2024年にどうなる可能性があるのかを解説します。

 

 

2023年の住宅ローン金利を振り返る

 

住宅ローン金利には大きく「変動金利」と「固定金利」の2種類があります。

 

変動金利は、返済の途中で金利が見直される可能性がある金利タイプです。

 

固定金利は、返済開始から一定期間あるいは完済まで金利が変わらないタイプです。

 

借入時の金利(借入金利・適用金利)は、変動金利の方が低く設定されています。

 

変動金利と固定金利は異なる指標をもとに決められているため、2023年の傾向にも違いがみられます。

 

まずは、2023年までの住宅ローン金利がどのように推移したのかをみていきましょう。

 

 

変動金利は歴史的な低水準を更新し続ける

 

2023年の変動金利は、非常に低水準で推移しました。

 

主な理由は「日銀(日本銀行)による金融緩和政策」と「金融機関の金利引き下げ競争の激化」の2点です。

 

まず、変動金利は「短期プライムレート」という業績などが優良な企業に適用する貸出金利を指標に決められています。

 

短期プライムレートは、日銀が金融政策によってコントロールする「政策金利(金融機関が日銀に預ける当座預金の一部に適用される金利)」の影響を受けます。

 

日銀はマイナス金利政策により、政策金利を−0.1%に設定しており、その影響で短期プライムレートは低く抑えられているため、変動金利も低水準となっています。

 

それに加え、各金融機関は顧客を獲得するために、変動金利の優遇幅(基準金利からの引き下げ幅)を年々拡大してきています。

 

そのため、2023年においても住宅ローンの変動金利は、歴史的な低水準を更新し続けており、金融機関によっては年0.3%前後での借り入れも可能な状況となりました。

 

 

固定金利はやや上昇

 

固定金利は「新発10年物国債」という金融商品の金利を指標に決まります。

 

新発10年物国債の金利は、日銀によって年0%程度で推移するようにコントロールされています。

 

ただし、厳密に年0%となるようにコントロールされるわけではなく、2022年11月ごろまでは年±0.25%は許容範囲とされていました。

 

しかし、2022年12月に日銀は10年国債金利の許容幅を±0.25%から±0.5%に拡大。

 

これは、インフレを抑えるために利上げをする米国と、金融緩和政策により低金利が続く日本とのあいだで金利差が生じ、10年国債の金利に上昇圧力がかかっていたためです。

 

また、2023年7月には±0.5%を"目処”とし、年1.0%を超えないようにコントロールするという方針に変更されています。

 

これらの影響により、10年国債金利が上昇したために、2023年の固定金利も上昇傾向にありました。

 

一方で、毎月上昇していたわけではなく、10年国債金利が一時的に下がることもあったため、それにともなって固定金利が引き下げられる月もありました。

 

 

2024年の住宅ローン金利はどうなる?

 

2023年は変動金利が下がり続けた一方で、固定金利はやや上昇しました。では、2024年の住宅ローン金利はどのようになる可能性があるのでしょうか。

 

 

変動金利は賃上げと物価上昇が継続しない限り低いまま

 

2024年に、変動金利が急上昇する可能性は低いと考えられます。

 

日銀が、マイナス金利政策をはじめとした金融緩和政策を実施する目的は「2%の物価安定目標」を達成するためです。

 

2%の物価安定目標とは、簡単にいえば賃金が上昇しながら、モノやサービスの価格が毎年2%ずつ上昇することをいいます。

 

近年の日本では、原材料価格やエネルギー価格などが高騰しているため、モノやサービスの価格は上昇傾向にあります。

 

総務省が発表する「消費者物価指数」をみても、物価は前年同期比で2%以上の上昇をみせています。

 

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※画像引用:総務省「2020年基準 消 費 者 物価指数 全国2023年(令和5年)12月分

 

「物価が2%ずつ上昇したのであれば、日銀の金融緩和政策の目的が達成されたのではないか」と思われたかもしれません。

 

しかし、ここで重要になるのが、賃金の上昇をともなっていないということ。

 

厚生労働省の調査によると、2023年11月における実質賃金(物価の上昇を考慮した賃金)は、前年同月比−2.5%であり、20か月連続でマイナスという結果でした。

※出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和5年11月分結果速報

 

毎年3月ごろに行われる春闘では、全体的に労働者から企業側に賃金の増加を求める交渉が行われる予定であるため、中には賃上げをする企業も出てくるかもしれません。

 

とはいえ、賃金の上昇が一時的であり、2%の物価安定目標は達成されていないのであれば、マイナス金利政策は解除されず変動金利は低水準のままでしょう。

 

2024年に実質賃金が継続的にプラスとなり、物価も引き続き上昇して2%の物価安定目標したといえる状況になって初めてマイナス金利政策は解除されると考えられます。

 

 

固定金利は横ばいかやや低下の可能性

 

固定金利は、2023年においては上昇傾向にありましたが、2024年にはほぼ横ばいかやや低下すると思われます。

 

固定金利が上昇した要因であった、日米の金利差が縮小する可能性があるためです。

 

米国では強烈なインフレを抑えるために段階的な利上げが行われており、政策金利は年5.5%にまで達していました。

 

しかし、2023年の後半から米国のインフレは鈍化してきたと見られており、2024年は政策金利が据え置かれるか、または利下げが実施されるという見方が優勢となっています。

 

米国の政策金利が引き下げられれば、日本との金利差が縮まり、10年国債金利にかかる上昇圧力が弱まると想定されます。

 

金利差の縮小によって、10年国債金利が再び下がり始めれば、住宅ローンの固定金利も引き下げられるかもしれません。

 

ただし、10年国債金利は投資家の心理や予測の影響を受けて変動する可能性があるため、厳密にコントロールするのは困難です。

 

また、10年国債金利というのは、市場の金利以外にもさまざまな要因で変動します。

 

そのため、2024年においても住宅ローンの固定金利は、10年国債金利の影響を受けて借入金利が毎月変わる可能性があります。

 

 

まとめ

  • 2023年の住宅ローン金利は、変動金利が歴史的な低水準である一方、固定金利はやや引き上げられた
  • 2024年の変動金利は、モノやサービスの価格だけでなく実質賃金も継続的に上昇しない限り引き上げられない
  • 2024年の固定金利は、米国との金利差が縮まることで昨年よりもやや引き下げられる可能性がある

 

 

【コラム執筆者】

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品木 彰(シナキ アキラ)

プロフィール

保険・不動産・金融ライター。ファイナンシャルプランナー2級技能士。大手生命保険会社や人材会社での勤務を経て2019年1月に独立。年間で700本以上の記事執筆に加えて、不動産を始めとしたさまざまな記事の監修も担当している。

https://daisakukobayashi.com/