コラム

首都圏のマンション価格が高騰する背景とは?価格の推移も解説

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近年は、首都圏のマンションの価格が上昇傾向にあります。特に、都心部は価格の高騰が続いている状況です。

 

では、首都圏におけるマンション価格の相場はいくらであり、何が要因で価格が上昇しているのでしょうか。

 

本記事では、首都圏におけるマンション価格の推移と2024年の価格予想をご紹介します。

 

 

首都圏のマンション価格

 

国土交通省が発表する不動産価格指数によると、2013年ごろからマンション(区分所有)価格は右肩上がりであることが分かります。

 

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※画像引用:国土交通省「不動産価格指数 令和5年8月 令和5年第2四半期分

 

調査結果を見ると、マンション価格の上昇幅は、住宅地や戸建て住宅よりも高いことも見て取れます。

 

2012年ごろからマンション価格が上昇しているのは、当時の第二次安倍内閣による、いわゆるアベノミクスの効果によるものです。

 

アベノミクスにより日経平均株価が上昇したことで、それを追うように不動産価格も上昇していきました。

 

2020年に新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、一時的にマンション価格は下がったものの、その後間もなく再び上昇に転じています。

 

では、首都圏にあるマンションに絞ると、価格はどう推移したのでしょうか。新築マンションと中古マンションに分けてご紹介します。

 

 

新築分譲マンションの価格

 

不動産経済研究所の調査によると、首都圏における新築マンション価格の推移は以下の通りです。

 

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※参考:不動産経済研究所「マンション市場動向

 

途中で上昇幅が緩やかになってはいるものの、基本的には右肩上がりであることが分かります。

 

特に、2023年の平均価格は8,101万円となっており、前年の2022年から+1,801万円(+28.8%)と大幅に上昇しました。

 

続いて、同調査をもとにエリア別の平均価格をみていきましょう。

 

  • 東京23区:1億1,483万円(+39.4%)
  • 東京都下(23区外):5,427万円(+3.7%)
  • 神奈川県:6,069万円(+12.2%)
  • 埼玉県:4,870万円(−7.5%)
  • 千葉県:4,786万円(+4.0%)

※参考:不動産経済研究所「マンション市場動向

 

東京23区では、平均価格が1億1,483万円と前年比で39.4%も上昇しています。

 

その一方で、同じ東京都でも八王子市や町田市などでは、新築分譲マンションの価格が5,427万円(前年比3.7%)となっており、23区内とは大きな差があります。

 

また、埼玉県と千葉県は新築分譲マンションの平均価格が5,000万円を下回る結果となりました。

 

 

中古マンションの価格

 

次に、中古マンションの平均価格の推移を見ていきましょう。

 

東京カンテイの調査によると、三大都市圏における中古マンションの70㎡換算価格は、以下の通りです。

 

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※画像引用:東京カンテイ「中古マンション価格(年間版)

 

近畿圏や中部圏と比較して、首都圏のマンション平均価格は高い傾向にあることが見て取れます。

 

しかし、その一方で2023年における首都圏の中古マンション価格は4,802万円と前年比+1.8%であり、上昇が鈍化している状況です。

 

また、近畿圏や中部圏でも同様の傾向がみられます。

 

次に、首都圏のエリア別に中古マンション価格の推移を詳しくみていきましょう。結果は、以下の通りです。

 

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※画像引用:東京カンテイ「中古マンション価格(年間版)

 

東京23区にある中古マンションが、平均価格を大きく引き上げているといえます。

 

2023年における東京23区の中古マンション価格は7,055万円であり前年比+3.1%でした。

 

一方で、同調査によると、中古マンション平均価格の前年比は、都心部が+6.3%、城南・城西エリアが+3.7%、城北・城東エリアが+1.6%であり、エリアによって大きな差があることが分かります。

 

 

首都圏のマンションが高騰している背景

 

首都圏のマンション価格が高騰している背景には、以下の通りであると考えられます。

 

  • 低金利の住宅ローン
  • 供給コストの上昇
  • 富裕層や投資家からの需要

 

 

低金利の住宅ローン

 

マンション価格が上昇する理由の1つ目は、歴史的な低水準となっている住宅ローン金利です。

 

日本では、長らく日銀(日本銀行)が金融緩和政策を実施しています。

 

それに加え、金融機関の顧客獲得競争も激しくなってきており、金利の引き下げ幅を年々拡大しているため、住宅ローン金利は減少の一途をたどっています。

 

特に変動金利は、金融機関によっては年0.3%前後での借り入れが可能です。※2024年2月現在

 

固定金利については、2023年に上昇傾向が見られたものの、歴史的にみれば低金利の状態が続いています。

 

住宅ローン金利は、バブル期では年7%程度と高水準でしたが、近年は非常に低水準であり、マンションの需要を後押しする要因となっています。

 

 

供給コストの上昇

 

マンション価格が上昇する2つ目の理由は、建築資材や人件費などのコストが上昇したことです。

 

新型コロナウイルス禍によって停滞していた経済が回復し、世界各国でモノやサービスに対する需要が戻りつつあります。

 

しかし、需要に供給が追いつかず物価が上昇するという減少が起きていきます。

 

供給が追いつかない主な要因は、ロシア・ウクライナ情勢によるエネルギーや原材料などの価格が高騰したためです。

 

また、強烈なインフレが続く米国と低金利の日本との間で拡大する金利差による円安も重なり、建築資材の価格は上昇しました。

 

さらには、人員不足による人件費の高騰もマンション価格の上昇に影響していると考えられます。

 

 

富裕層や投資家からの需要

 

マンション価格が上昇する3つ目の理由は、富裕層や投資家からの需要が堅調であることです。

 

都心部のマンションを購入しているのは、相続税対策を考えているシニア層や高収入の夫婦共働き世帯、医師、経営者など、世帯収入や保有資産が多い層です。

 

また、海外の投資家は投資目的で都心部にあるマンションを購入しています。

 

海外の投資家からすると、円安の影響で割安になった日本の不動産は魅力的な投資対象です。

 

富裕層だけでなく海外の投資家も投資を目的に都心部のマンションを購入したために、価格は上昇し続けていると考えられます。

 

 

2024年のマンション価格は今後どうなる?

 

不動産経済研究所の発表によると、2024年の首都圏マンション供給量は前年比10.7%増の3.1万戸と予測されています。

 

また、東京都23区内では引き続き安定した新築マンションの需要が期待できるとされています。

 

※参考:不動産経済研究所「首都圏・近畿圏マンション市場予測―2024年の供給予測―

 

供給量が増えることに加え、引き続き高い需要も期待できるのであれば、2024年もマンション価格は高水準を維持するでしょう。

 

加えて、2024年2月現在もロシア・ウクライナ情勢をはじめ世界情勢は不安定な状態が続いているため、エネルギーや原材料の価格が下がらないかもしれません。

 

さらには、日本国内における企業への賃上げ要請と、働き方改革関連法によりトラックドライバーなどの時間外労働が制限される「2024年」問題により、人件費が高騰する可能性も考えられます。

 

以上の点から、2024年のマンション価格は2023年よりもさらに上昇する可能性もあります。

 

とはいえ、海外の富裕層や投資家の需要の影響も受けるため、マンション価格が今後どのように推移するのかを予測するのは困難です。

 

不動産会社ともよく相談し、マンションを購入するタイミングを慎重に検討することが重要です。

 

 

まとめ

  • マンション価格は新築と中古のどちらも上昇傾向にあり、特に都心部の物件が高騰している
  • マンション価格が高騰する背景には「低金利の住宅ローン」「供給コストの上昇」「富裕層や投資家からの需要」がある
  • 2024年も引き続きマンション価格は上昇する可能性はある



【コラム執筆者】

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品木 彰(シナキ アキラ)

プロフィール

保険・不動産・金融ライター。ファイナンシャルプランナー2級技能士。大手生命保険会社や人材会社での勤務を経て2019年1月に独立。年間で700本以上の記事執筆に加えて、不動産を始めとしたさまざまな記事の監修も担当している。

https://daisakukobayashi.com/