コラム

【2023年最新】住宅ローン金利の傾向と金利タイプを選ぶときのポイント

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マイホームを購入する人にとって、住宅ローンの金利選びは、非常に悩ましいです。

 

住宅ローンの返済期間は20年や30年などの長期にわたるため、マイホームの入居後に後悔しないよう、慎重に金利タイプを選ぶことが大切です。

 

そこで今回は、2023年11月現在の状況をもとに住宅ローンの金利タイプを選ぼうとしている人が知っておきたいポイントをご紹介します。

 

 

変動金利と固定金利の特徴

 

変動金利は、返済途中で利息の計算をする際に用いられる金利が、市場の金利や政府の金融政策などの影響で変更される可能性がある金利タイプです。

 

固定金利は、5年や10年などの一定期間の金利を固定する「固定期間選択型」と、完済まで固定される「全期間固定金利」の2種類があります。

 

まずは、変動金利と固定金利のメリット・デメリットをご紹介します。

 

 

変動金利のメリット・デメリット

 

変動金利の主なメリットとデメリットは、以下の通りです。

 

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変動金利は、固定金利よりも借入当初の金利が低く設定されています。

 

完済まで金利が上昇しなかった場合や上昇幅がわずかであった場合は、固定金利よりも総返済額は少なくなるでしょう。

 

また、金融機関の多くは変動金利に5年ルールと125%ルールを設けており、金利が上昇したとしても返済負担が急上昇しないようにしています。

 

  • 5年ルール:返済額が見直されるのは5年に1度である
  • 125%(1.25倍)ルール:見直し後の返済額は見直し前の1.25倍を超えない

※変動金利に5年ルールや125%(1.25倍)ルールを設けていない金融機関もあります

 

一方で変動金利には、返済途中で借入金利が上昇して返済負担が増える可能性があります。

 

また、毎月の返済額や総返済額が借入時点で確定しないため、返済計画が立てにくい点にも注意が必要です。

 

 

固定金利のメリット・デメリット

 

続いて、固定金利の主なメリットとデメリットをご紹介します。

 

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固定金利は、借入当初から一定期間または返済期間を通じて金利が変わらないため、そのあいだは途中で返済額が増える心配はありません。

 

また、全期間固定金利であれば借り入れた時点で毎月の返済額と総返済額が決まるため、返済計画や今後のライフプランを立てやすいといえます。

 

一方で、借入当初の金利は変動金利よりも高く設定されており、毎月の返済負担は重くなりやすいです。

 

返済が終わるまでに世の中の金利があまり上昇しなかった場合は、総返済額や利息総額は変動金利よりも高くなってしまうでしょう。

 

 

【2023年11月時点】変動金利と固定金利の傾向

 

2023年11月現在、変動金利は歴史的な低水準となっている一方で、固定金利については少しずつ上昇してきています。

 

 

変動金利は金利引き下げ競争が激化している

 

変動金利では、各金融機関の金利引き下げ競争がますます激化しています。

 

金利が低い傾向にあるネット銀行であれば、年0.2%後半〜年0.3%前半での借り入れも可能です。また、大手都市銀行でも、最優遇金利は年0.3〜年0.4%台となっています。

 

住宅ローンの利息は、基本的に前回返済後のローン残高と金利に応じて決まります。返済当初の借入残高が多いときに金利が低いと、より効率的に元金を返済することが可能です。

 

今後もしばらく低金利が続くと考えるのであれば、変動金利で借り入れて金利が低いうちに元金を減らしておくのも1つの方法です。

 

 

固定金利は上昇傾向にある

 

引き下げが続く変動金利とは対照的に、固定期間選択型と全期間固定金利は上昇傾向にあります。

 

例えば、全期間固定金利型住宅ローンの一種である「フラット35」の金利は、2021年10月は1.3%であったのが、2023年10月には1.88%まで上昇しました。

※参考:フラット35

 

また、固定期間選択型はほとんどの金融機関が年1.0%以上としています。少し前までは、変動金利に迫る低金利で借り入れができましたが、昨今では難しくなりました。

 

 

固定金利が上昇傾向にある背景

 

固定金利が上昇傾向にある主な理由は、日米との金利差による長期金利の上昇です。

 

強烈なインフレを抑えるために金利を段階的に引き上げる米国と、金融緩和政策により歴史的な低金利が続く日本では、金利差が拡大しつつあります。

 

その影響により、固定金利の指標となっている長期金利は徐々に上昇しているため、固定期間選択型や全期間固定金利もじわじわと引き上げられている状況です。

 

固定金利には返済額が上昇する心配がないというメリットがあります。

 

しかし、変動金利との金利差が拡大しているため、借入金額や返済期間などが同じである場合、固定金利を選ぶと毎月の返済額や返済総額は大きく増えるかもしれません。

 

金利タイプを検討する際は、固定金利と変動金利の返済シミュレーションを確認して返済額を比較し、どちらが自分自身に合っているのかを慎重に検討することが大切です。

 

 

変動金利と固定金利を選ぶときのポイント

 

最後に、変動金利と固定金利を選ぶ際に知っておきたいポイントをご紹介します。

 

 

変動金利を選ぶのであれば繰上返済資金を準備する

 

変動金利で借り入れをする場合は、返済途中で金利が上昇したときに備えて繰上返済資金を準備しておくと良いでしょう。

 

借入金利が上昇したタイミングで繰上返済をして元金を減らすと、返済額の上昇を抑えることができます。

 

低金利がいつまで続くのかは誰にも予測できません。金利上昇に対する不安を抑えるためにも、計画的に繰上返済の資金を準備しておくことをおすすめします。

 

 

固定金利を選ぶ場合は融資実行時の金利上昇に注意する

 

固定金利を借り入れる場合は、住宅の購入・建築契約を結んだときよりも融資を実行するときの借入金利が上昇する可能性があることを理解しておきましょう。

 

毎月の返済額や利息額を計算する際の金利は、融資の実行時点で決まります。

 

住宅の売買契約を結んでから、融資の実行と引き渡しが行われるまで1か月ほど開くのが一般的です。

 

マイホームを新築するとなると、契約を結んでから融資の実行まで数か月空くケースも少なくありません。

 

ここ数か月は、固定金利が毎月引き上げられています。今後もその傾向が続くのであれば、融資の実行時点の金利が、契約時よりも上昇する可能性があります。

 

融資の実行時に借入金利が上昇していると、契約時に立てた資金計画に狂いが生じてしまいかねません。

 

固定金利で借り入れをするときは、融資の実行時点で金利が上昇している可能性も考慮して資金計画を立てると良いでしょう。

 

まとめ

  • 変動金利は金融機関の競争が激化しており年0.2%後半〜年0.3%前半での借り入れも可能
  • 固定金利は上昇傾向にあり、変動金利との差は開きつつある
  • 変動金利で借り入れをするときは、金利が上昇したときに備えて繰上返済資金を準備する
  • 固定金利を借り入れる際は、変動金利との返済額の差をシミュレーションで確認し、融資の実行時に借入金利が上昇するケースも想定して資金計画を立てる

 

【コラム執筆者】

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品木 彰(シナキ アキラ)

プロフィール

保険・不動産・金融ライター。ファイナンシャルプランナー2級技能士。大手生命保険会社や人材会社での勤務を経て2019年1月に独立。年間で700本以上の記事執筆に加えて、不動産を始めとしたさまざまな記事の監修も担当している。

https://daisakukobayashi.com/