コラム

住宅ローンの返済が苦しいときは「任意売却」が選択肢!メリット・デメリットを解説

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返済が始まった当初は問題がなかったとしても「転職をして収入が減った」「子どもが成長して毎月の生活費が増えた」などの理由で、住宅ローンの返済が苦しくなることがあります。

 

返済を滞納すると、やがてマイホームは金融機関に差し押さえられてしまうでしょう。そのため、住宅ローンの返済を滞納してしまったときは「任意売却」で対処するのも1つの方法です。

 

本記事では、任意売却と競売の違いやメリット、デメリットなどを解説します。

 

 

任意売却とは

 

任意売却とは、住宅ローンを返済できなくなったとき、借り入れ先の金融機関から承諾を得て不動産を売却することです。

 

任意売却であれば、住宅ローンが残っている住宅を競売にかけられてしまう前に売却することが可能です。

 

 

競売を回避できる

 

住宅ローンを長期間にわたって滞納すると、金融機関に自宅を差し押さえられて「競売」によって強制的に売却されてしまいます。

 

競売とは、債権者(金融機関)が裁判所に申し立てることで、担保となっている不動産を強制的に売却する手続きのことです。

 

住宅ローンを滞納してから競売にいたるまでの流れは、以下の通りです。

 

  1. 書面によって催告される 
  2. 一括返済を求められる 
  3. 保証会社が肩代わりする 
  4. 競売の申し立てが行われる
  5. 現地調査を経て競売開始
  6. 立ち退き

 

金融機関から書面で催告をされた段階で、滞納分を返済したのであれば問題ありません。

 

しかし、催告に応じずローンを分割して返済できる権利を失うと、一括返済を求められます。

 

一括返済にも応じないと、保証会社が残債を肩代わりし、その保証会社が裁判所に申し立てをすることで競売が始まるというのが、一般的な流れです。

 

任意売却は、住宅ローンを滞納したとき、物件が差し押さえられて競売にかけられる流れを避けることができる選択肢です。

 

また、競売とは異なり、所有者の意思で物件を売却できます。

 

 

ローンが残った住宅を売却できる

 

住宅ローンを組んだ物件を売却する場合、ローンの残りを売却代金と自己資金で完済しなければなりません。

 

住宅ローンを組んで取得した物件には一般的に「抵当権」が設定されており、それを金融機関に解除してもらわなければ売却できないためです。

 

任意売却であれば、住宅ローンの残債が多く売却代金と自己資金を足しても完済が困難である状況でも、売却時に抵当権を解除してもらうことができます。

 

 

任意売却のメリット

 

任意売却の主なメリットは、以下の通りです。

 

  • 相場と同程度で売却できる可能性がある
  • 所有者の情報が公開されない
  • 残債を分割で返済できる

 

1つずつ解説します。

 

 

相場と同程度で売却できる可能性がある

 

競売で売却された場合、売却金額は相場の5〜7割程度といわれています。そのため、自宅が競売にかけられてしまうと、多額の債務が残ってしまいかねません。

 

住宅ローンの返済が難しい状態で、競売によって多額の残債を抱えたことで、自己破産に至ってしまう方は少なくありません。

 

その点、任意売却であれば市場と同程度の価格で売却できる可能性があります。

 

競売よりも高値で売却することができれば、売却後の残債を圧縮できるため、自己破産も回避しやすくなるといえます。

 

 

所有者の情報が公開されない

 

自宅が競売にかけられた場合、その事実が近隣の住民や職場の人、友人などに知れわたってしまうかもしれません。

 

競売にかけられた物件の情報は、新聞やインターネットで広告されるためです。

 

任意売却の場合、販売活動の仕方は一般的な不動産売却と同じです。

 

物件の販売情報は、インターネットやチラシなどに掲載されますが、通常の不動産売却と任意売却の見分けはつきません。

 

そのため、周りの人に住宅ローンを滞納した事実を知られる心配はないでしょう。

 

 

残債を分割で返済できる

 

競売で売却した後に発生する残債は、基本的に一括で返済しなければなりません。

 

一方の任意売却は、金融機関の承認を得ることができれば、売却後に残った債務を分割で返済することも可能です。

 

金融機関やローン残高によっては、毎月1万円2万円など無理なく返済できる金額にしてもらえる可能性があります。

 

 

任意売却のデメリット

 

任意売却の主なデメリットは、以下の通りです。

 

  • 連帯保証人の同意が必要
  • 債権者の同意を得られるとは限らない
  • 期限までに売却をする必要がある

 

連帯保証人の同意が必要

 

任意売却をするときは、連帯保証人を始めとした連帯して債務を負っている人の同意を得なければなりません。

 

例えば、夫が主たる債務者、妻が連帯保証人となって住宅ローンを組んでいたとしましょう。夫婦は離婚しましたが、妻は連帯保証人のままです。

 

この場合、元夫が住宅ローンを返済できなくなったとき、元妻と連絡が取れず同意を得られない場合、任意売却はできません。

 

また、連帯保証人との関係が悪化しているために、任意売却の同意が得られないというケースもあります。

 

 

債権者の同意を得られるとは限らない

 

任意売却をするためには、住宅ローンの借入先である金融機関と交渉して同意を得なければなりません。

 

住宅の査定金額がローン残債よりも極端に少ないときは、任意売却に応じてくれないケースがあります。

 

金融機関の同意を得られるかどうかは交渉次第であるため、任意売却の実績が豊富な不動産会社の協力が不可欠といえます。

 

 

期限までに売却する必要がある

 

任意売却ができるのは「競売の開札日の前日まで」です。開札日とは、競売によって住宅を買い受ける人が決まる日のことです。

 

債権者が裁判所に競売の申し立てをすると、3〜6か月ほどで競売の開札日の前日を迎えます。

 

この日までに、金融機関と交渉をし不動産会社と協力して売却活動を進め、買主を見つけて売買契約を締結しなければなりません。

 

借り入れ先の金融機関の同意を得られたとしても、期日までに売却できなければ競売が始まってしまいます。そのため、一般的な不動産売却と比較してスケジュールがタイトになりやすいといえます。

 

 

任意売却をするときの流れ

 

任意売却をするときの大まかな流れは、以下の通りです。

 

  • 金融機関から返済を催促される
  • ローンの滞納状況や残債の金額など現状を把握する
  • 不動産会社に不動産を査定してもらう
  • 査定結果をもとに不動産会社を選び媒介契約を結ぶ
  • 金融機関(債権者)と交渉する
  • 任意売却を開始する

 

通常の不動産売却では、売主と不動産会社が話し合って物件の価格を決めて売り出します。

 

一方で任意売却の場合、販売価格を決めるのは債権者である金融機関です。

 

金融機関は不動産の査定結果をもとに、不動産会社の担当と話し合いのうえ、販売価格を決めます。

 

不動産を売却する能力や金融機関と交渉する能力が低い不動産会社に依頼してしまうと、任意売却の同意を得られないかもしれません。

 

そのため、不動産の査定結果や担当者の説明などをもとに、任意売却が得意な不動産会社に依頼することが重要となります。

まとめ

  • 任意売却は住宅ローンが残っている住宅を金融機関の同意を得て売却する方法
  • 任意売却であれば相場と同程度の金額で売却できるだけでなく、売却後の残債を分割で返済することも可能
  • 期日までに金融機関と交渉して買い手を見つける必要があるため、任意売却の実績が豊富な不動産会社に依頼することが大切

 

 

【コラム執筆者】

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品木 彰(シナキ アキラ)

プロフィール

保険・不動産・金融ライター。ファイナンシャルプランナー2級技能士。大手生命保険会社や人材会社での勤務を経て2019年1月に独立。年間で700本以上の記事執筆に加えて、不動産を始めとしたさまざまな記事の監修も担当している。

https://daisakukobayashi.com/