フルローンとは?メリットやデメリット、組むときのポイントを解説
マイホームを購入するとき、購入価格のすべてを住宅ローンで賄えることがあります。これを「フルローン」といいます。
フルローンを組めると、頭金を準備することなくマイホームを購入できます。その一方で、返済負担が重くなりやすいため、利用すべきかどうかは慎重に判断することが重要です。
今回は、フルローンを組むメリットやデメリットなどを解説します。
フルローンとは
フルローンとは、不動産の購入価格のすべてを住宅ローンの借り入れで賄うことです。
例えば、マイホームの価格が5,000万円であった場合、借入額が5,000万円であればフルローンとなります。
ひと昔前は、マイホームを購入するときは2割の頭金が必要といわれていましたが、2023年9月現在はフルローンを組んでマイホームを購入する人も少なくありません。
フルローンのメリット
フルローンを組む主なメリットは、以下の通りです。
- 手元に資金を残せる
- すぐに物件を購入できる
- 老後生活が始まる前に返済を終えやすい
- 住宅ローン控除のメリットが増える可能性がある
フルローンのメリットを1つずつ解説します。
手元に資金を残せる
フルローンでは、マイホームの購入資金のすべてを借りることができるため、自己資金を温存することができます。
手元にお金を多く残せることで、突発的な出費が生じたときに柔軟に対応できるようになるでしょう。
例えば、家族の誰かが病気で入院することになったとき、手元にまとまった資金が残っていれば、入院や手術などでかかる医療費をまかないやすくなります。
予期せぬ出費に備えて、資金を手元に確保しておきたい方は、フルローンを組むのも1つの方法です。
すぐに物件を購入できる
フルローンを組む場合、頭金を貯めるための時間が不要になるため、欲しい物件を迅速に購入することができます。
「人気のエリア」「価格がお手ごろ」など競合の多い物件は、頭金を準備しているあいだに他の人に先を越されてしまうかもしれません。
その点、フルローンであれば、競合の激しい物件を欲しいと思ったとき、すぐに購入手続きを進めやすいといえます。
立地や間取りなどが条件に希望どおりであり、他の人に取られたくない物件を見つけたときは、フルローンの利用を検討してはいかがでしょうか。
老後生活が始まる前に返済を終えやすい
フルローンであれば、頭金を準備することなくマイホームを購入するため、ローンの返済を早く終えやすいといえます。
若いうちにフルローンを組むと、返済期間を30年以上と長く設定しても、老後生活が始まる前に返済を終えられるかもしれません。
また、返済期間を長くすると、返済総額は増えるものの、毎月の返済額を抑えて家計が楽になる可能性もあります。
老後生活に入り主な収入源が年金となる前に住宅ローンを完済したい人は、フルローンを活用して早期の完済を目指す選択もあります。
住宅ローン控除のメリットが増える可能性がある
住宅ローンを組んだ人は、所定の要件を満たすと「住宅ローン控除」という制度を適用して所得税や住民税の負担を軽減できる可能性があります。
控除できる金額は「年末時点のローン残高×控除率」です。年末時点のローン残高が高いほど、税負担の軽減効果は高まっていきます。
フルローンを組むと、頭金を入れたときよりも年末時点のローン残高が増加して、より税負担を軽減できる可能性があります。
フルローンのデメリット
フルローンの主なデメリットは、次の通りです。
- 返済負担が重くなる
- 金利上昇リスクが増える
- 住宅ローンの審査に通りにくくなる
- オーバーローンが発生しやすくなる
返済負担が重くなる
フルローンを利用する場合、頭金を入れるときよりも借入額は増えるため、基本的に返済負担は重くなります。
例えば、金利1.7%、返済期間35年、返済方法は元利均等方式(毎月の返済額を一定にする返済方法)の住宅ローンを借り入れて、4,000万円の物件を購入するとしましょう。
500万円の頭金を準備し、借入額を3,500万円にすると、毎月の返済額は110,626円です。返済総額と頭金との合計金額は、約5,146万円です。
一方で、借入額4,000万円のフルローンを組むと、毎月の返済額は126,430円、返済総額は約5,310万円に増加します。
返済負担が重くなることで、支出が増えたときや収入が減少したときに、返済が困難になりやすくなるでしょう。
金利上昇リスクが増える
変動金利を選んだ場合、フルローンを組むと金利が上昇したときに返済額が増加しやすくなります。
また、固定期間選択型を選んでフルローンを組んだ場合、金利の固定期間が終わったタイミングで金利が上昇していたとき、返済額が大幅に増えてしまうかもしれません。
借入金額が大きければ大きいほど、金利上昇時に影響が生じやすくなるでしょう。
変動金利や固定期間選択型でフルローンを組むときは、金利が上昇しても返済が継続できるかどうかを返済シミュレーションで確認するのが望ましいといえます。
住宅ローンの審査に通りにくくなる
住宅ローンの審査で、金融機関は年収に対して借入金額が適切かどうかを確認します。
頭金を入れずに住宅ローンを組むと、年収に対する借入金額が増えるため、金融機関の審査に通過しにくくなる可能性があります。
また、審査に通過できたとしても、借入額を減らされるかもしれません。
住宅を売却しにくくなる可能性がある
住宅ローンを組んで取得した物件は、金融機関が担保に設定します。
担保に設定された物件は、住宅ローンの返済が長期にわたって滞ったとき、金融機関に差し押さえられて、競売によって強制的に売却されてしまいます。
住宅を売却するときは、住宅ローンを完済して、金融機関が担保物件を差し押さえられる権利(抵当権)を解除しなければなりません。
フルローンを組むと借入額が高くなるため、売却代金と自己資金を足してもローンを完済できない状態になりやすいと考えられます。
フルローンとオーバーローンの違い
オーバーローンとは、購入する土地や建物の価格を借入額が上回る状態のことです。
仲介手数料や登記費用など、マイホーム購入時の諸費用を組み込んで住宅ローンを組むと、オーバーローンの状態になることがあります。
また、マイホームを購入したあとに、土地や建物の評価額が借入残高を下回ってオーバーローンの状態になることもあります。
フルローンは物件購入価格の全額を借り入れで賄いますが、諸費用については自己資金で支払います。
対してオーバーローンは、購入価格と諸費用を含めて借り入れるため、自己資金が0円あるいは少ない金額でマイホームを購入することが可能です。
ただし、オーバーローンの返済負担はフルローンよりも重くなります。また、金融機関の融資審査にも通過しにくくなるでしょう。
無理なく返済できる住宅ローンを組むときのポイント
住宅ローンの返済は一般的に20年や30年など長期にわたります。マイホーム購入後の暮らしをより安心・快適なものとするためにも、以下の点を押さえて資金計画を慎重に立てることが大切です。
- 返済シミュレーションを入念に確認する
- 諸費用はできるだけ現金で支払う
住宅ローンを組むときは、最後まで返済できる見込みがあるかどうかを、返済シミュレーションで入念に確認して資金計画を立てることが重要です。
収支の変化や金利の変動などが起こったとき、返済が苦しくなる可能性があるときは、借入額を減らしたり、頭金を増やしたりした方が良いと考えられます。
【コラム執筆者】
品木 彰(シナキ アキラ)
プロフィール
保険・不動産・金融ライター。ファイナンシャルプランナー2級技能士。大手生命保険会社や人材会社での勤務を経て2019年1月に独立。年間で700本以上の記事執筆に加えて、不動産を始めとしたさまざまな記事の監修も担当している。
https://daisakukobayashi.com/
また、頭金を入れないとしても、仲介手数料や登記費用などの諸費用は、できるだけ現金で支払った方が良いでしょう。
諸費用をローンに組み込むと、借入金額が増加してさらに返済負担が重くなり、返済を滞納するリスクが増えてしまうためです。
まとめ
- フルローンであればマイホームの購入価格のすべてを住宅ローンで賄える
- フルローンの主なメリットには「手元に資金を残せる」「すぐに物件を購入できる」「老後生活が始まる前に返済を終えやすい」などが挙げられる
- 一方で「返済負担が重くなる」「金利上昇リスクが増える」「住宅ローンの審査に取りにくくなる」などのデメリットがある