前回(9月25日)のコラムでは、超高齢化社会の到来とともに重要度が増している認知症対策として、任意後見制度について解説しました。
認知症対策の代表的な手法として、任意後見制度の他に、家族信託を活用する方法があります。
今回のコラムでは、認知症対策としての家族信託について解説したいと思います。
家族信託とは
家族信託とは、自身が認知症になってしまう場合に備えて、所有する不動産や預貯金などの財産を、信頼できる家族に託し、その管理・処分を任せるという財産管理手法です。
予めご自身の財産の管理を、信託契約という形式で、信頼できる家族に託しているため、万が一、認知症を発症してしまったとしても、財産の管理を任されたご家族が、そのまま財産の管理を行うことができるため、成年後見人を選任するという面倒な手続きを省くことが可能です。
また、財産の運用管理をご家族に託す場合には、信託銀行等に託す場合とは異なり、高額な報酬等を支払う必要がなくなります。
極端な話、ご家族との契約内容によっては報酬をゼロにすることも可能ですし、仮に報酬を支払うという契約内容にしても、それは一種の相続財産の前渡のような格好となるため、相続税対策にもなります。
任意後見制度との比較
元気なうちは自ら監督できる
家族信託も任意後見制度も、財産の管理を任された受託者や任意後見人が、本人に代わって財産の運用管理を行うという点では共通していますが、両者は財産管理の開始時期が異なります。
任意後見人は、あくまで本人が認知症を発症するなど、実際に本人による財産管理が困難になった時点から管理を開始することになりますが、家族信託の場合には、信託契約後すぐに管理が開始されます。
任意後見開始時には、本人の判断能力が低下してしまっているため、後見人が本当に自分の要望通りに事務処理を行ってくれるか不安が残ります。
しかし、家族信託の場合には、本人が元気なうちから管理が開始するため、受託者の運用管理の状況を自ら監督することが可能です。
柔軟な資産運用が可能
任意後見人には、任意後見監督人が付けられ、裁判所の監督の下で財産を保全・管理するため、どうしても柔軟な資産運用がしづらいという側面があります。
家族信託の場合には、信託契約の内容に沿って自由に資産を運用することが可能なため、任意後見人として資産を管理するよりも、運用管理の選択肢の幅が広くなります。
信託契約は認知症になる前に
任意後見契約と同様に、家族信託を利用する場合も、財産管理を行う受託者と信託契約という契約を結ぶ必要があります。
契約を結ぶ際には、契約内容等を理解し、判断する能力が必要となるため、認知症に既になっている方は、家族信託を利用することはできません。
ですので、家族信託を利用される場合には、「まだ元気なうちに」契約することが必要です。
当事務所では、相続・遺言について広く相談を受けており、家族信託についてのサポートも行っております。
認知症対策で最も大切なことは「まだ元気なうちに」対策することです。
相談は初回無料ですので、認知症対策や家族信託に興味のある方は、お気軽にご相談ください。
【コラム執筆者】
髙橋 朋宏
プロフィール
経堂司法書士事務所代表司法書士。一般社団法人相続総合支援協会理事。不動産と相続に関する分野に専門性を有する。難しいことを分かりやすく説明することを得意とし、ラジオ出演、新聞・雑誌への寄稿、セミナー、講演活動などを行うタレント文化人。
経堂司法書士事務所|世田谷区で30年の実績 (kyodo-office.com)