コラム

「遺言の内容が不自然」、「遺言に不備がある」 そんな場合の遺言無効確認訴訟とは

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故人が遺した最終意思である遺言書。故人の意思は最大限尊重されるべきですが、遺言の内容が不自然であったり、形式に不備がある場合には、そのまま遺言内容が実現されてしまうのを防ぐ必要があります。
 
そのような場合に取られる手段のひとつが遺言無効確認訴訟。今回のコラムでは、遺言の内容や形式に不備がある場合に、その遺言の有効性を争う手段について解説したいと思います。
 
 

遺言無効確認訴訟とは

 
遺言無効確認訴訟とは、裁判所に対して、遺言が法律的に無効である旨の確認を求める手続です。裁判所によって遺言が無効であることが確認されると、無効とされた遺言の内容が実現されることを防ぐことができます。
 
一度、遺言として法律的な文書が作成されている以上、その実現を止めるためには、裁判で証拠等によって無効であることをきちんと証明し、裁判所に無効であることのお墨付きをもらう必要があるのです。
 
ただ、遺言や相続に関する争いについては、「調停前置主義」という制度が設けられているため、裁判をする前に、まずは調停を申し立てる必要があります。
 
調停というのは、調停委員という第三者介入のもとに、当事者間で話し合いを行い、争いの解決を図る制度です。調停による話し合いでも解決しない場合には裁判に移行することになります。
 
 

遺留分侵害額請求との違い

 
遺言について争う制度として、もうひとつ遺留分侵害額請求というものがあります。遺言について争うケースの代表的なものは、この「遺留分侵害額請求」と「遺言無効確認訴訟」になります。
 
遺言無効確認訴訟は、遺言自体が無効であることを主張し、遺言がなかったことにする手続きなのに対して、 遺留分侵害額請求は、遺言自体は有効と認めつつも、自身に認められる最低限の取り分である遺留分を主張し、遺留分を侵害している範囲について清算金を求める請求になります。
 
 

遺言が無効となる場合

 
遺言無効確認訴訟は、遺言自体の有効・無効を争うものなのですが、では、遺言はどのような場合に、無効とされるのでしょうか。
 
 

遺言書に形式的な不備がある場合

 
遺言が有効に成立するためには、法律で定めれた形式で遺言を作成する必要があります。その法律で定めれた要件を満たさない遺言は無効となります。
 
例えば、自筆証書遺言として遺言が作成された場合に、「遺言をワープロで作成したため『自書』という要件を満たさない」、「署名や押印が抜けている」等のケースです。
 
公正証書遺言として遺言を作成した場合には、公証人という専門家が関与し、遺言書が作成されるため、形式的な不備により無効となるケースは稀ですが、例えば、公正証書遺言には、証人が必要なところ、誤って本来証人にはなれない推定相続人を証人としてしまった等の場合には、形式な不備があるとして遺言は無効となります。
 
 

遺言者に遺言能力がない

 
遺言書を有効に作成するためには、遺言者に遺言能力というものが必要になります。遺言能力とは、簡単に言うと、遺言を書くのに必要となる判断能力のことを言います。
 
例えば、遺言者が認知症を患っているため、法律的な判断能力がないとみなされると、遺言能力がないとして、作成された遺言が無効になってしまいます。
 
 

共同遺言

 
2名以上の者によって作成された遺言書を「共同遺言」といい、それは民法975条によって禁止されています。よくあるケースとして、夫婦が共同(連名など)で遺言書を作成するという場合です。そのような遺言は民法975条違反として、無効になります。
 
 

共同遺言の禁止

 
第975条 遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。
 
 

公序良俗違反の遺言

 
社会秩序を乱すような内容の遺言は、法律が社会秩序を乱す行為に手助けすることはできないため、無効となります。
 
例えば、「不倫関係を維持することを条件に、遺産を譲る」などの内容の遺言は、公序良俗違反の遺言として無効となります。
 
 

遺言が無効になると遺産分割協議が必要

 
遺言が無効と判断されると、遺言によって遺産を分配することは当然できなくなりますので、遺産分割協議によって遺産を相続人間で分配することになります。

 

 

【コラム執筆者】

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髙橋 朋宏

プロフィール

経堂司法書士事務所代表司法書士。一般社団法人相続総合支援協会理事。不動産と相続に関する分野に専門性を有する。難しいことを分かりやすく説明することを得意とし、ラジオ出演、新聞・雑誌への寄稿、セミナー、講演活動などを行うタレント文化人。

経堂司法書士事務所|世田谷区で30年の実績 (kyodo-office.com)