住宅ローンの繰り上げ返済とは?メリットやデメリットをわかりやすく解説
住宅ローンの返済期間は、一般的に20年や30年ほどの長期間にわたります。そこで、活用したいのが「繰り上げ返済」です。
繰り上げ返済をすることで、毎月の返済額を減らしたり返済期間を短縮したりできます。また、返済総額を軽減することも可能です。
本記事では、住宅ローンの繰り上げ返済の種類やメリット、デメリットなどを分かりやすく解説します。
住宅ローンの繰り上げ返済とは
繰り上げ返済とは、毎月の返済とは別にまとまった金額を返済することをいいます。通常、住宅ローンの毎月の返済額は、元金と利息の合計となりますが、繰り上げ返済の場合は、返済額がすべて元金に充当されます。
繰り上げ返済で減少した元金の分だけ利息を支払わなくて良くなるため、返済総額を軽減することが可能です。
住宅ローンの返済中であればいつでも繰り上げ返済はできますが、金融機関によって1回あたりの最低返済額や手数料は異なります。
繰り上げ返済には「期間短縮型」と「返済額軽減型」がある
住宅ローンの繰り上げ返済には「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類があります。
期間短縮型は、返済期間を短くできる繰り上げ返済です。繰り上げ返済された元金に応じて、残りの返済期間が短縮されるため、当初の計画よりも早く住宅ローンを完済できます。
一方の返済額軽減型は、繰り上げ返済によって減少した借入元金に応じて、毎月の返済額が軽減されます。そのため、家計を楽にしたいときに役立つでしょう。
繰り上げ返済による住宅ローン返済額の軽減シミュレーション
繰り上げ返済をすることで、どれくらい住宅ローンの返済額が軽減されるのでしょうか。シミュレーションで確認をしてみましょう。試算条件は以下の通りです。
- 当初の借入額:3,000万円
- 返済期間:35年
- 借入金利:2%(固定金利)
- 返済方法:元利均等方式
上記の条件で住宅ローンを借り入れた場合、毎月の返済額は99,378円となります。
返済開始から10年が経過した時点で300万円の繰り上げをする場合、シミュレーション結果は以下の通りとなりました。
期間短縮型の場合、繰り上げ返済をしたあとの返済期間は残り25年から21年1か月となり、3年11か月短縮されました。また、減少した利息額は約174.6万円です。毎月の返済額は99,378円のまま変わりません。
一方の返済額軽減型の場合、毎月の返済額が86,630円に減少しました。減少する利息額は811,817円となり、期間短縮型よりも934,322円少ない結果となりました。残りの返済期間は変わらず25年です。
繰り上げ返済をするメリットとデメリット
続いて、繰り上げ返済のメリットとデメリットをみていきましょう。
繰り上げ返済をする主なメリット
繰り上げ返済をする主なメリットは、以下の3点です。
- 返済総額を軽減できる
- 金利上昇時の対策となる
- 家計や今後のライフプランに応じて種類を選べる
繰り上げ返済をすると、減少した元金の分だけ利息額や返済総額を減らせるため、経済的な余裕が生まれやすくなります。
また、変動金利型の住宅ローンを組んでいた場合、金利が上昇したときに繰り上げ返済をして元金を減らすことで、毎月の返済額の上昇を抑えることが可能です。
家計や今後のライフプランなどに応じて期間短縮型と返済額軽減型を選べるのも、繰り上げ返済の主なメリットです。
例えば「子どもが成長して学費がかかるようになったから毎月の返済額を減らしたい」と考えているのであれば、返済額軽減型を選ぶことで家計を楽にできるでしょう。
「定年退職後を迎える前の完済を目指したい」と考えている場合は、期間短縮型を選ぶことでセカンドライフが始まる前に返済を終えやすくなります。
繰り上げ返済をする主なデメリット
繰り上げ返済の主なデメリットは、以下の通りです。
- 手持ち資金が減る
- 住宅ローンの金利が低いと利息があまり軽減されない
- 住宅ローン控除の控除額が少なくなる
繰り上げ返済をすると、手元にある現金は減ります。そのため「病気で入院と手術をすることになった」「自家用車が故障して修理が必要になった」など、急な出費が発生したときに対応が困難となるかもしれません。
低金利の住宅ローンを組んでいる場合は、そもそもの利息負担が少ないため、繰り上げ返済をしたとしても利息負担をあまり軽減できない場合があります。
住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んだ人の所得税を優遇する制度のことです。所得税から差し引かれる金額は「年末時点の借入残高×控除率」で計算します。
控除を受けられる最長期間は、10年または13年です。控除期間中に繰り上げ返済をして借入残高を減らしてしまうと、控除額が減ってしまい税負担の軽減効果が薄れる可能性があります。
繰り上げ返済に失敗しないためのポイント
繰り上げ返済の失敗を防ぐためには、以下のポイントを押さえておくと良いでしょう。
- 借り換えも検討する
- 今後のライフイベントや緊急時に支障がない範囲で繰り上げ返済をする
1つずつみていきましょう。
借り換えも検討する
返済負担を軽減したいのであれば、現在とは異なる金融機関の住宅ローンに借り換える方法もあります。より低金利の商品に借り換えることで、毎月の返済額を軽減したり返済期間を短縮したりできます。
借り換えをするときは、事務手数料や印紙税などの諸費用がかかるため、金利が低い住宅ローンに借り換えてもメリットがあるとは限りません。
一般的には、以下のすべてを満たすとメリットがあるといわれています。
- 金利差が1%以上
- 住宅ローンの借入残高が1,000万円以上
- 残りの返済期間が10年以上
ただし、上記はあくまで目安に過ぎません。例えば、住宅ローンの借入残高が1,000万円未満であっても、金利差が大きいのであればメリットを得られることがあります。
借金融機関の窓口やファイナンシャルプランナーにも相談のうえ、返済負担を軽減する手段として借り換えが有効かどうかを慎重に検討しましょう。
今後のライフイベントや緊急時に支障がない範囲で繰り上げ返済をする
繰り上げ返済を検討するときは、子どもの進学や定年退職後の生活などに支障がないかを確認することが重要です。
例えば、繰り上げ返済をして家計が楽になったとしても、手持ち資金が減ったことで子どもが進学するときに入学金や初年度の授業料などの支払いが苦しくなるかもしれません。
また、病気やけがで万が一働けなくなったとき、繰り上げ返済をしたことで貯蓄が減っていると生活が苦しくなる恐れもあります。
繰り上げ返済をするときは金融機関の担当者やファイナンシャルプランナーなどに相談し、今後の人生で起こりうるライフイベントに支障がないことを確認しましょう。
また、病気やケガなど万一のことがあったときに備えて、ある程度の緊急予備資金は残しておくことをおすすめします。緊急予備資金として確保する金額は、半年〜1年分の生活費が目安です。
まとめ
- 繰り上げ返済には「期間短縮型」と「返済額軽減形」がある
- 繰り上げ返済には「返済総額を軽減できる」「金利上昇時の対策となる」などのメリットがある一方で「手持ち資金が減る」「住宅ローン控除の控除額が少なくなる」などのデメリットもある
- 毎月の返済負担を軽減したいのであれば借り換えも検討すると良い
【コラム執筆者】
品木 彰(シナキ アキラ)
プロフィール
保険・不動産・金融ライター。ファイナンシャルプランナー2級技能士。大手生命保険会社や人材会社での勤務を経て2019年1月に独立。年間で700本以上の記事執筆に加えて、不動産を始めとしたさまざまな記事の監修も担当している。
https://daisakukobayashi.com/