葬儀費用は、一般的に少なくない額の支出を必要とするため、故人の遺産から支出する方も少なくはありません。
今回のコラムでは、故人の遺産、相続財産から葬儀費用を支出した場合、相続税はどのように計算されるのか解説したいと思います。
相続財産から葬儀費用を控除できる
相続税を計算する際には、一定の範囲の債務は相続財産から控除することが可能であり、葬儀費用も控除の対象となります。
つまり、葬儀費用にかかった額の分だけ、相続財産を減らすことができるため、その分、相続税を節約することができます。
ただし、税法上の葬儀費用と認められるもの、すなわち控除が可能な費用と、認められないものがあるため、注意が必要です。
葬儀費用として認められるもの
●葬式や葬送に際し、又はこれらの前において、火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用(仮葬式と本葬式を行ったときにはその両方にかかった費用が認められます。)
●遺体や遺骨の回送にかかった費用
●葬式の前後に生じた費用で通常葬式にかかせない費用(例えば、お通夜などにかかった費用がこれにあたります。)
●葬式に当たりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用
●死体の捜索又は死体や遺骨の運搬にかかった費用
上記のような費用は、税法上、葬儀費用と認められ、相続財産から支出した額を差し引いて、相続税を計算することができます。
葬儀費用として認められないもの
●香典返しのためにかかった費用
●墓石や墓地の買入れのためにかかった費用や墓地を借りるためにかかった費用
●初七日や法事などのためにかかった費用
上記のような費用は、税法上、葬儀費用とは認められず、相続財産から支出したとしても、相続税を計算する際に控除することはできません。
相続法と相続税法は異なる
相続法(民法)の扱いと相続税法の扱いが異なる場合があるので注意が必要です。
相続法も相続税法も「法律である」という点では同じなため、混同されがちですが、両者は異なる目的のために制定された別の法律であるため、両者で取り扱いの異なるものが存在します。
税法上、葬儀費用として扱われ、相続財産から控除可能な費用であったとしても、相続法上、一般的に葬儀に必要な費用とは認められず、その支出を行ったことにより、後に相続放棄ができなくなるというケースも存在します。
逆に、税法上は、相続財産から葬儀費用として控除はできなかったとしても、相続法上は、葬儀に通常必要な費用として、後の相続放棄が許容されるというケースもあります。
判例では「墓石を購入したとしても、社会的に不相当とはいえない」として、相続財産による墓石購入後の相続放棄を認めていますが、相続税法では、墓石を購入したとしても、その額を相続財産から控除することは認められません。
【コラム執筆者】
髙橋 朋宏
プロフィール
経堂司法書士事務所代表司法書士。一般社団法人相続総合支援協会理事。不動産と相続に関する分野に専門性を有する。難しいことを分かりやすく説明することを得意とし、ラジオ出演、新聞・雑誌への寄稿、セミナー、講演活動などを行うタレント文化人。
経堂司法書士事務所|世田谷区で30年の実績 (kyodo-office.com)