コラム

住宅ローンの繰り上げ返済とは?メリットデメリットをわかりやすく解説

住宅ローンを返済中に繰り上げ返済をすべきか悩む方は少なくありません。

 

繰り上げ返済をすると、毎月の返済額を軽減したり返済期間を短くしたりできます。一方でデメリットもあるため、慎重に検討しなければなりません。

 

本記事では、住宅ローンの繰り上げ返済の種類やメリット、デメリットなどをわかりやすく解説します。 

住宅ローンの繰り上げ返済とは

繰り上げ返済は、毎月の返済額とは別にまとまった金額を返済する方法です。

 

住宅ローンの利息は、前回の返済後の元金に金利をかけて計算するため、返済が進むと支払う利息額は減っていきます。

 

そのため、繰り上げ返済すると住宅ローンの返済元金が減り、利息負担を軽減することが可能です。

 

繰り上げ返済には、返済予定の元金の一部を前倒しで返済する「一部繰り上げ返済」と、元金のすべてを返済する「全部繰り上げ返済」の2種類があります。

繰り上げ返済には2種類ある

一部繰り上げ返済には「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類があります。それぞれの特徴は、以下の通りです。

 

  • 期間短縮型:毎月の返済額は変えずに返済期間を短縮する方法
  • 返済額軽減型:返済期間は変えずに毎月の返済額を軽減する方法

 

繰り上げ返済する金額が同じである場合、返済額軽減型よりも期間短縮型のほうが、 利息の軽減効果が高くなります。

期間短縮型と返済額軽減型の違い

では、期間短縮型と返済額軽減型には返済負担の軽減効果にどのような違いがあるのでしょうか。下記のモデルケースでシミュレーションしてみましょう。

 

  • 借入元金:4,000万円(ボーナス返済分はなし)
  • 返済期間:35年
  • 返済済み期間:10年
  • 返済方法:元利均等方式(毎月の返済額を一定にする方法)
  • 借入金利:1.0%

 

以上の条件の場合、毎月の返済額は112,914円、残りの返済期間は25年となります。

 

300万円を繰り上げ返済した場合、毎月の返済額や残りの返済期間、支払わずに済む利息額は、それぞれ以下の通りです。

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期間短縮型の繰り上げ返済をすると、返済期間を2年9か月短縮できました。また、減少する利息総額は期間短縮型のほうが返済額軽減型よりも405,902円(計算式:796,374円−390,472円)多いです。

 

一方の返済額軽減型を選択すると、毎月の返済額を11,340円安くできました。減少する利息総額は期間短縮型よりも少ないですが、毎月の返済負担を軽くしたいのであれば返済額軽減型を選ぶと良いでしょう。

住宅ローンを繰り上げ返済するメリット

住宅ローンを繰り上げ返済する主なメリットは、以下の2点です。

 

  • 返済負担を軽減できる
  • 当初の予定よりも早く完済できる

 

1つずつみていきましょう。

返済負担を軽減できる

住宅ローンの返済期間は、20年や30年など長期にわたるのが一般的です。返済途中で家計の収支が変わると、当初は問題なかった住宅ローンの返済が苦しくなるかもしれません。

 

毎月の返済が苦しくなったときは、返済額軽減型の繰り上げ返済をして毎月の返済額を減らすことで家計への負担を減らせます。

 

また、繰り上げ返済をした場合、前倒しで返済した元金分の利息を支払う必要はありません。一時的に手持ち資金は減りますが、長期的にみれば繰り上げ返済をしなかったときよりも、多くの資産を形成できる可能性があります。

当初の予定よりも早く完済できる

期間短縮型の繰り上げ返済をすると、住宅ローンの返済を当初の予定よりも早く終えることができます。

 

住宅ローンの返済期間が定年退職を迎えたあとの老後にまでおよぶ場合、主な収入源が国からの年金となり世帯収入が減少すると、返済が苦しくなるかもしれません。

 

そこで、期間短縮型の繰り上げ返済をして、老後生活を迎える前に住宅ローンを完済できると、老後の家計が楽になるでしょう。

住宅ローンを繰り上げ返済するデメリット

住宅ローンの繰り上げ返済には、以下2点のデメリットがあると考えられます。

 

  • 手持ち資金が減る
  • 金融機関によっては手数料がかかる

 

繰り上げ返済をする際は、以上のデメリットが問題ないかを確認することが重要です。

手持ち資金が減る

繰り上げ返済をして、300万円や500万円などをまとめて返済すると、その分手持ち資金が減ってしまいます。 

 

毎月の支出の増加や収入の減少によって住宅ローンの返済が苦しくなったとき、手持ち資金が少ないと返済が滞りやすくなります。また、子どもが進学するときや老後生活を迎えるときなどに、資金不足となるリスクも高まるでしょう。

 

繰り上げ返済をする際は、今後の生活やローンの返済、将来のライフイベントなどに支障が生じないかをよく考えることが大切です。

住宅ローン控除による節税効果が薄れることも

住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んでいる人が受けられる税の優遇制度です。年末時点の借入残高に応じた一定金額が、所得税や一部の住民税から控除されます。

 

住宅ローンの控除期間は最長10年または13年です。控除期間中に繰り上げ返済すると住宅ローンの返済元金が減るため、所得税から控除される金額が減ります。

 

また、住宅ローン控除を受けるためには、返済期間が10年以上の借り入れをしなければなりません。期間短縮型の繰り上げ返済をした結果、住宅ローンの返済期間が10年未満になると、住宅ローン控除を受けられなくなってしまいます。

繰り上げ返済をする前に検討すると良いこと

繰り上げ返済のほかにも、余剰資金の運用や住宅ローンの借り換えといった選択肢もあります。余剰資金があるときや、返済負担を軽減したいときは、繰り上げ返済以外の方法も検討すると良いでしょう。

住宅ローンの借り換え

現在返済中の住宅ローンの借入金利よりも低い金融機関の商品に借り換えると、毎月の返済負担や利息の支払総額を下げられることがあります。

 

ただし、住宅ローンを借り換えるときは、事務手数料や印紙税などの諸費用がかかります。そのため、金利が低い住宅ローンに借り換えをしても必ずメリットを得られるわけではありません。

 

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一般的に「借り換え後の金利差が年1%以上」「住宅ローンの残高が1,000万円以上」「返済期間が10年以上」のすべてに該当していれば、メリットがあるといわれています。

 

しかし、これはあくまで目安に過ぎないため、金融機関の窓口やファイナンシャルプランナーに相談をしたり、インターネットで試算をしたりして慎重に検討することが大切です。

手持ち資金の運用

余剰資金がある場合、住宅ローンを繰り上げ返済するのではなく、運用するのも1つの方法です。例えば、毎月一定金額の投資信託を積み立てていくことで、現在返済中の住宅ローンの借入金利を上回る利回りで運用できるかもしれません。

 

投資信託であれば、投資家から集めたお金は運用のプロによって国内外の株式や債券などに投資され、利益が発生したときは出資金額に応じて分配を受け取ることができます。専門家に運用を任せられるため、投資の初心者でも比較的購入しやすいです。

 

ただし、投資信託には元本割れするリスクがあるため、必ずしも住宅ローンの金利を上回るリターンを得られるとは限りません。リスクを取って運用するよりも、着実に利息負担を減らすことを優先したいときは、繰り上げ返済をすると良いでしょう。

まとめ

  • 住宅ローンの繰り上げ返済は、当初の返済とは別でまとまった金額を返済する方法
  • 繰り上げ返済には、毎月の返済額を軽減する「返済額軽減型」と返済期間を短縮する「期間短縮型」の2種類がある
  • 繰り上げ返済をすると「返済負担を減らせる」「返済期間を短くできる」というメリットがある
  • 一方で「手持ち資金が減る」「住宅ローン控除の節税効果が薄れる」といったデメリットもあるため、今後のライフプランをもとに慎重に検討することが大切

 

【コラム執筆者】

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品木 彰(シナキ アキラ)

プロフィール

保険・不動産・金融ライター。ファイナンシャルプランナー2級技能士。大手生命保険会社や人材会社での勤務を経て2019年1月に独立。年間で700本以上の記事執筆に加えて、不動産を始めとしたさまざまな記事の監修も担当している。

https://daisakukobayashi.com/