コラム

日銀が金融緩和政策を修正!住宅ローン金利の影響とは?

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日銀(日本銀行)は2022年12月に金融政策の方針を一部修正しました。これにより、2023年1月から住宅ローンの固定金利が全体的に引き上げられています。

 

では、日銀はどのように金融緩和政策を修正し、なぜ固定金利の上昇につながったのでしょうか。本記事では、日銀の金融政策や修正内容などをわかりやすく解説します。

 

そもそも日銀はどのような金融政策をしている?

日銀は2016年9月から「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という政策を実施しています。主な政策は「イールドカーブコントロール」と「マイナス金利政策」の2つです。

マイナス金利政策

マイナス金利政策とは、民間の金融機関が中央銀行(日銀)に預けている当座預金の金利をマイナスにする政策のことです。

 

当座預金の金利がマイナスになると、金融機関は中央銀行にお金を預けているあいだ、利息を支払わなければなりません。

 

すると、金融機関は日銀に利息を払ってお金を預けるよりも、金利を下げて積極的に個人や企業などに投資や融資をしたほうが有利であると考えるようになります。

 

その結果、個人や企業はお金を借りやすくなり、お金が世の中に出回りやすくなって景気が向上する可能性があります。

イールドカーブコントロール

国や企業が投資家からお金を借りた際に発行する「債券」には、基本的に5年や10年などの満期(償還期間)が定められています。満期までの期間と債券の利回りの関係性を示すグラフを「イールドカーブ」といいます。

 

イールドカーブコントロール(長短金利操作)とは、償還期間が10年である国債(10年物国債)の金利がおおむね0%で推移するようにコントロールする政策です。

 

債券には、売却したい人が増えたことで価格が下がると金利(利回り)が上がるという特徴があります。もし債券の金利が上がりそうなときは、日銀が指定する利回りで10年物国債を買うことで、価格の下落が抑えられ、金利の上昇を防ぐことができます。

2022年12月に日銀は金融緩和政策の一部を修正

日銀は、1〜2か月に1回の頻度で、金融政策決定会合を開いて今後の方針を決めています。

 

2022年12月の金融政策決定会合では、イールドカーブコントロールにおける長期金利の変動幅をこれまでの±0.25%から±0.5%に修正することが決まりました。

 

日銀は、10年物国債をはじめとした長期金利がちょうど0%となるようにコントロールするのではなく、上下0.25%は許容範囲としていました。その許容範囲が、方針の変更により±0.5%に拡大されたため、市場では事実上の利上げといわれています。

 

日銀の方針転換により住宅ローンの固定金利が上昇

変動幅の拡大の影響を特に受けるのが、住宅ローンの固定金利です。というのも、各金融機関は、10年物国債をはじめとした長期金利をもとに、固定金利を決めているためです。

 

日銀が長期金利の変動幅を拡大したあと、10年物国債の金利は上昇しました。

 

その結果、2023年1月には多くの金融機関が住宅ローンの全期間固定金利と固定期間選択型を引き上げています。

変動金利は影響なし

一方の変動金利は「短期プライムレート」をもとに決められています。短期プライムレートは、銀行が企業で貸し出しをする際の最優遇金利のうち、貸出期間が1年以内の融資に適用される金利です。

 

短期プライムレートは、マイナス金利政策の影響を受けます。2022年12月の金融政策決定会合では、引き続きマイナス金利政策が続けられると発表されたため、住宅ローンの変動金利に影響はありませんでした。

日銀の金融緩和政策はいつまで続く?

日銀が金融緩和政策をする目的は「2%の物価安定目標」を達成することです。2%の物価安定目標は、物価が前年と比較して2%ずつゆるやかに上昇している状態を指します。

 

日本の物価がいくら上昇したのかを表す指標として、総務省統計局が発表する「消費者物価指数」があります。

 

2022年4月から消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は2.0%を超えています。また、同年9月からは3.0%以上になり、12月には4.0%に達しました。
※出典:総務省統計局「2020年基準 消費者物価指数 全国 2022年(令和4年)12月分(2023年1月20日公表)

 

昨今は、前年よりも物価が2%を超えて上昇しています。にもかかわらず、日銀が金融緩和政策を続けると明言しているのはなぜなのでしょうか。

 

金融緩和政策は賃金をともなった物価上昇が起きるまで続く可能性がある

日銀が金融緩和政策を続けるのは「賃金上昇をともなった物価上昇ではないため」です。

 

日銀の「2%の物価安定目標」とは、景気が上向いたことで賃金が上昇して物価がゆるやかに上昇している状態を指しています。

 

2023年2月現在も続く物価上昇は、エネルギー価格や小麦などの原材料価格の高騰によるものです。その背景には、コロナ禍で停滞した経済の再開やロシア・ウクライナ情勢、世界的な小麦の不作などが要因となる供給不足があります。

 

そのため、日本の物価は上昇していますが、賃金の上昇によるものではないため、今後もしばらくは金融緩和政策が続く可能性が高いと考えられます。

住宅ローン金利を選ぶときのポイント

住宅ローンの返済期間は、一般的に20年や30年などの長期間となります。住宅ローンの金利が今後どのように推移するのかは、専門家でも予測が困難です。

 

そのため、借り入れの際は今後のライフプランを立てたうえで入念に資金計画を立てることが大切です。

 

また、金利タイプを選ぶときは、返済シミュレーションを比較すると良いでしょう。変動金利の住宅ローンを組む場合は、繰り上げ返済資金を準備しておくと安心です。

 

入念に資金計画を立てる

人生では、結婚や出産、子どもの独立、転職、老後生活などさまざまなライフイベントが発生します。

 

先行きの予測が困難な状況で住宅ローンを組むときこそ、返済を始めたあとに起こりうるライフイベントで資金不足とならないよう、計画を立てることが重要です。

 

不動産会社や金融機関の担当者、ファイナンシャルプランナーにも相談のうえ、慎重に資金計画を立てたうえで住宅ローンを組むことをおすすめします。

返済シミュレーションを比較して選ぶ

変動金利は借入当初の金利が固定金利よりも低いですが、返済途中で返済負担が増える可能性があります。一方の固定金利は完済まで毎月の返済額は変わりませんが、借入当初の金利は変動金利よりも高いです。

 

金利タイプごとに異なったメリットとデメリットがあるため、返済シミュレーションを比較したうえで選ぶことが大切です。

 

例えば、変動金利で借りたときよりも毎月の返済額が高いとしても、完済まで返済負担が変わらない安心を優先したいのであれば、固定金利を選ぶと良いでしょう。

 

変動金利で組む場合は繰り上げ返済資金を貯める

変動金利型の住宅ローンを組む場合、返済途中で金利が上昇したときに備えて、繰り上げ返済資金を準備しておくと安心です。

 

繰り上げ返済をすると借入元金が減って、支払う利息が減ります。金利が上昇したときに繰り上げ返済をして元金を減らすと、返済負担の増加を抑えることが可能です。

 

そのため、金利が上昇したときに備えて繰り上げ返済の資金を積み立てることで、返済負担の増加に対する不安を軽減できるでしょう。

 

毎月の積立額をいくらにすべきか迷うときは、固定金利で借り入れたときの差額を積み立てる方法があります。

まとめ

  • 2022年12月の金融政策決定会合で日銀は長期金利の変動幅を±0.25%から±0.5%に拡大した
  • 長期金利の変動幅が拡大したことで金融機関の多くは住宅ローンの固定金利を引き上げた
  • 住宅ローンを組む際は、入念に資金計画を立てたうえで返済シミュレーションを比較して金利タイプを選ぶことが大切
  • 変動金利型の住宅ローンを選ぶ場合は、将来の金利上昇に備えて繰り上げ返済資金を積み立てると良い

 

【コラム執筆者】

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品木 彰(シナキ アキラ)

プロフィール

保険・不動産・金融ライター。ファイナンシャルプランナー2級技能士。大手生命保険会社や人材会社での勤務を経て2019年1月に独立。年間で700本以上の記事執筆に加えて、不動産を始めとしたさまざまな記事の監修も担当している。

https://daisakukobayashi.com/