コラム

不動産売却の落とし穴、「両手仲介」に気をつける

1613111752-ZgWAR.jpg

不動産売却の落とし穴、「両手仲介」に気をつける

 

不動産仲介会社の売り上げの大部分を占めるのは、不動産を売りたい人と買いたい人の間を取り持って得る仲介手数料です。営業担当のAさんが、不動産を売りたいというお客さまと、媒介(仲介)契約を結んだとします。その物件が5千万円で売れれば、Aさんの不動産会社は売主さんから、5千万円の3%+6万円に当たる156万円(税抜き)の仲介手数料がもらえます。

 

ところがこの156万円の手数料を、2倍にする方法があるのです。売主さんと媒介契約を結ぶところまでは同じですが、さらに買主さんも自社で探してくれば、売主さんから156万円、プラス、買主さんからもまた156万円、合計312万円の仲介手数料が転がり込みます。

 

同じ不動産会社が、片手で売主さんとつながり、もう片方の手で買主さんともつながっている。これを両手仲介といいます。これに対して、売主さんとだけつながり、買主さんはまた別の不動産業者が仲介しているのが片手仲介です。

 

 

売主が二の次になりやすい両手仲介

 

売主さんから物件の売却を依頼され、自分で買手を探してくる両手仲介には、一見何の問題もありません。売主さんと買主さんの両方のために働いて、両方から仲介手数料をもらうのも、理にかなっているように思えます。

 

でも両手仲介には、ひとつ大きな問題があります。できるだけ高く売りたい売主さんと、できるだけ安く買いたい買主さん、この利益相反する二者を一度に抱える両手仲介には、はじめから無理があるのです。

 

また、売却の媒介では、誰にいくらで売れようが、売買が成立しさえすれば売主さんからは必ず手数料がもらえます。その状況でさらに買主さんからも手数料を取ろうとすると、担当者の心理としては、「安くてもいいから、とにかく買ってもらう」ことが先決となり、結果、売主さんより買主さんの利益を優先しがちになります。

 

少なくとも、売主さんのために真剣に交渉する気持ちは薄れるでしょうし、ときには買主さんの希望に沿うように、売主さんに値下げを〝助言〟してくることすらあります。なにせ仲介手数料の何%かは自分のボーナスになるので、営業担当者も真剣です。あなたのために動いてくれているはずの担当者が自分の都合で買手を優先し、いつの間にやら、あなたの利益は後回しになってしまう︱これが両手仲介の大きな矛盾点です。

 

片手仲介であれば、売手も買手も、それぞれ別の不動産会社、別の担当者を介しますから、あなたの担当者にとってのお客さまはあなただけ。当然、あなたの利益を代表して動いてくれます。

 

両手仲介を狙わない会社と契約できれば、それに越したことはありませんが、そう都合よくはいかないかもしれません。もし契約しようとしている会社に不安があるときは、「ほかの不動産会社を介して買いたい人が現れた場合も、ちゃんと教えてくれますか?」と、担当者にたずねてください。両手仲介にこだわらないのであれば、「もちろんですよ」と快く応じてくれるでしょう。

 

 

 

まとめ

●売買仲介には、片手仲介と両手仲介がある

●倍の手数料を得る、両手仲介両手仲介では、売主より買主の利益が優先されがち

●両手仲介を狙わない会社を探して、不動産売却の依頼を依頼しよう

 

 

 

 

【コラム執筆者】

1613136167-2RGKI.jpg

山本 健司

プロフィール

ミライアス株式会社代表取締役。大手不動産会社で全国1位の成績を連続受賞。不動産相談件数16,000件超。著書『初めてでも損をしない 不動産売却のヒケツ(サンルクス出版)』『損しない! モメない! 実家の不動産相続のヒケツ(サンルクス出版)』