コラム

住宅ローンを支払えないとどうなる?競売の流れや対処方法を解説

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「転職によって収入が減った」「毎月の支出が増えた」などの理由で、住宅ローンの返済が困難になるケースは少なくありません。

 

住宅ローンの返済を滞納してしまうと、借入先の金融機関に自宅を差し押さえられることがあります。自宅が差し押さえられると、競売にかけられて自宅を失ってしまうため、早めに対策をすることが大切です。

 

今回は、住宅ローンの返済を滞納したときの流れや、返済が難しくなったときの対処方法を解説します。

 

住宅ローンを滞納したときの流れ

 
1. 書面によって催告される
 
2. 一括返済を求められる
 
3. 保証会社が肩代わりする
 
4. 競売の申し立てが行われる
 
5. 現地調査を経て競売開始
 
6. 立ち退き
 
 

 

書面によって催促される

 

住宅ローンの滞納が1〜2か月ほど続くと、契約している金融機関から督促状や催告書などが届き、返済を催促されます。

 

この時点で返済をすれば、自宅が差し押さえられる心配はありません。しかし、金融機関からの催促を無視して滞納を続けると、一括返済を求められることになります。

 

 

一括返済を求められる

 

住宅ローンを長期間にわたって滞納すると「期限の利益」を失います。期限の利益とは、簡単にいえば住宅ローンを分割で返済できる権利のことです。

 

住宅ローンを30年や35年など長期間にわたって分割で返済できるのは期限の利益があるためです。しかし期限の利益を失うと、分割返済ができなくなり、金融機関から一括の返済を求められます。

 

 

保証会社がローンを肩代わりする

 

金融機関からの一括返済にも応じないと、保証会社がローンを肩代わりするのが一般的です。これを「代位弁済」といいます。

 

代位弁済が行われたとしても、住宅ローンの返済が免除されるわけではありません。代位弁済をすると、ローンを返してもらえる権利(債権)が、住宅ローンを組んだ金融機関から保証会社に移り、引き続き一括返済を求められます。

 

一括返済ができない場合は、担保になっている自宅が競売にかけられます。

 

 

競売の申し立てが行われる

 

競売は、法律にもとづいて債権者(保証会社)が申し立てをし、地方裁判所主導のもとで不動産を売却することです。裁判所が所有者の代わりに、オークション形式で住宅を売却します。

 

競売が申し立てられると、裁判所から「競売決定通知」が届きます。

 

 

現地調査を経て競売開始

 

競売決定通知が届くと、執行官と不動産鑑定人による現地調査が行われます。その後、調査結果をもとに最低競売価格が決まり、競売が開始されます。

 

競売が開始したあとは、債権者である保証会社の申し立てによって、取り下げることが可能です。申し立ての期限は、競売物件が売却されて売却代金が納付されるまでとなります。

 

 

立ち退き

 

競売によって自宅が落札された場合、元の所有者は立ち退きをしなければなりません。立ち退きが必要であるにもかかわらず、居住を続けた場合は不法滞在者となります。

 

また、落札されたあとも住宅ローンの残債がある場合は、返済をする必要があります。

 

 

 

住宅ローンを滞納してはいけない理由

 

住宅ローンの返済が厳しくなったとしても、滞納は避けましょう。返済を滞納すると、さまざまな不利益を被ることになるためです。

 

住宅ローンを滞納する主なデメリットは、以下の2点です。

 

  • 自宅が競売にかけられる
  • 信用情報にキズが付く

 

 

自宅が競売にかけられる

 

住宅ローンを長期間にわたって滞納すると、最終的に自宅が競売にかけられて、強制的に売却されてしまいます。

 

競売での売却価格は、一般的に相場の7割程度です。そのため、競売にかけられたとしても住宅ローンの残債がすべてなくなるとは限りません。

 

競売にかけられたあとの残債は、一括での返済を求められます。しかし、毎月の住宅ローンの返済も困難である人が、まとまった金額の残債を返済するのは困難です。最悪の場合、自己破産をしてしまうこともあります。

 

 

信用情報にキズが付く

 

クレジットカードの申込状況やローンの返済状況など個人の信用情報は、信用情報機関に登録されています。住宅ローンを3か月以上滞納すると、信用情報機関に事故情報として記録され、いわゆるブラックリスト入りとなります。

 

信用情報機関に事故情報が登録された場合、クレジットカードやローンを申し込んでも審査に通過できなくなるため、不自由な生活を強いられることになるでしょう。

 

 

住宅ローンを支払えないときの対処方法

 

住宅ローンの支払いが難しいときは、滞納をする前に対処することが大切です。返済が困難なときの主な対処方法は、以下の通りです。

 

  • 住宅ローン付帯保険の保障内容を確認する
  • 金融機関に相談する
  • 住宅ローンを借り換える

 

 

住宅ローン付帯保険の保障内容を確認する

 

住宅ローンを組んでマイホームを購入する場合、団体信用生命保険に加入するケースがほとんどです。団体信用生命保険に加入すると、住宅ローンの契約者が亡くなったり所定の重い障害状態になったりしたとき、保険金によってローンが完済されます。

 

団信によっては、死亡・高度障害以外にも、がんや心筋梗塞、脳卒中などの疾病も保障の対象です。また、病気やけがによって一定期間入院したり働けなくなったりしたときに保障されるものもあります。

 

病気やけがによる治療費の支払いや収入の減少などで、住宅ローンの返済が難しいのであれば、加入している団信の保障内容を確認してみましょう。

 

 

金融機関に相談する

 

住宅ローンの返済が難しいときは、契約先である金融機関に早めに相談をしましょう。金融機関に相談することで、毎月の返済額の減額や返済期間の延長などを認めてくれることがあります。

 

また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で住宅ローンの返済が困難になった人については、条件の変更に柔軟に対応するよう、金融庁は各金融機関に対して要請を出しています。返済が困難なのであれば早めに金融機関に相談することが大切です。

 

ただし、金融機関を納得させられる理由が説明できないと、返済額の減額や返済期間の延長などが認められないことがあります。家計の見直しなど自分自身でできる対策をしたうえで、金融機関に相談しましょう。

 

 

借り換えをする

 

金利が低い住宅ローンに借り換えて、返済負担を軽減するのも方法です。

 

住宅ローンの金利は、年々低下しています。特に変動金利については、2022年5月現在、底値ともいえる状況です。住宅ローンを組んでから一定期間が経過しているのであれば、借り換えによって金利が下がり、返済負担を軽減できる可能性があります。

 

一方で借り換えをする場合、事務手数料や保証料、登記費用などのコストが発生するため、メリットがあることをよく確認することが大切です。

 

 

すでに滞納してしまっているなら「任意売却」をする

 

任意売却とは、売却後も住宅ローンが残ってしまう不動産を、金融機関の合意を得て売却する方法です。売却代金と自己資金で住宅ローンを完済できないときや、返済を滞納して一括返済を迫られているときは、任意売却ができれば抵当権を解除してもらえます。

 

任意売却をすると、通常の不動産会社の仲介による売却と同様に相場と同程度の価格で売却できる可能性があります。売却後に残債が発生したとしても、金融機関との交渉次第では、10,000円や20,000円など無理のない返済額に分割してもらうことが可能です。

 

任意売却ができるのは、競売の開札日の前日までとなります。開札日とは、競売によって住宅を買い受ける人が決まる日であり、債権者(保証会社)による申し立てから3〜6か月で迎えます。

 

不動産の売却には、数か月ほどかかることがあります。また、任意売却をするためには、金融機関と交渉しなければなりません。交渉には、専門的な知識が必要です。任意売却をする際は、早めに不動産会社に相談することをおすすめします。

 

 

 

まとめ

 

・住宅ローンを3〜6か月にわたって滞納すると、保証会社による代位弁済が行われ最終的に自宅が競売にかけられる

・住宅ローンを3か月以上滞納すると、信用情報機関に事故情報として記録される

・住宅ローンの返済が難しくなったときは、滞納する前に「団信の保障内容を確認する」「金融機関に相談する」「住宅ローンを借り換える」などの対策をする

・住宅ローンの返済をすでに滞納しているときは任意売却を検討する

 

 

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【コラム執筆者】

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山本 健司

プロフィール

ミライアス株式会社代表取締役。大手不動産会社で全国1位の成績を連続受賞。不動産相談件数16,000件超。著書『初めてでも損をしない 不動産売却のヒケツ(サンルクス出版)』『損しない! モメない! 実家の不動産相続のヒケツ(サンルクス出版)』