コラム

返済期間が50年の住宅ローンを組んでも良い?メリットやデメリットを解説

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住宅ローンの返済期間は基本的に最長35年ですが、近ごろは最長50年のローンを組める金融機関が増えてきました。

 

返済期間が50年であれば、毎月の返済額が減って夢のマイホームを購入しやすくなる反面、複数のデメリットもあるため、慎重に検討することが大切です。

 

本記事では、返済期間50年の住宅ローンを組むメリットやデメリットなどを解説します。

 

 

返済期間が最長50年の住宅ローンを取り扱う金融機関が増加

 

2023年8月から、住信SBIネット銀行が返済期間50年の住宅ローンを取り扱い始めました。

 

また、西日本シティ銀行や福井銀行、足利銀行などでも、返済期間が最長50年の住宅ローンを組むことができます。

 

他にも、返済期間が最長40年の住宅ローンを取り扱う金融機関も少なくありません。

 

返済期間35年超の住宅ローンを取り扱う金融機関が増えた背景には、不動産価格の上昇があります。

 

不動産経済研究所の調査によると、2023年1月から6月に販売された新築分譲マンションの一戸あたりの平均価格は8,873万円です。

 

前年の同期と比較すると、平均価格は2,363万円(36.3%)も上昇しました。

 

※出典:株式会社不動産経済研究所「首都圏新築分譲マンション市場動向2023年上半期1〜6月

 

返済期間を長くすると、毎月の返済負担を抑えることができます。

 

不動産価格が高騰するなか、20代や30代でもマイホームの購入・新築ができるよう、返済期間50年の住宅ローンを取り扱う金融機関が増えていると考えられます。

 

 

返済期間が50年になると返済負担はどう変わるのか

 

では、返済期間が50年になると返済負担はどのように変わるのでしょうか。返済期間が35年の住宅ローンと比較してみましょう。

 

試算条件は次の通りです。

 

  • 借入金額:4,000万円(ボーナス返済分なし)
  • 返済方法:元利均等方式(毎月の返済額が一定の返済方法)

 

上記の条件で、固定金利または変動金利の住宅ローンを組んだときの返済額を比較します。

 

 

固定金利

 

借入金利が年1.8%の固定金利で住宅ローンを組む場合、毎月の返済額や総返済額は、以下の通りです。

 

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返済期間50年の方が、毎月の返済額が27,283円少ない結果となりました。

 

その一方で、総返済額と利息総額は、返済期間50年の方が約675万円多くなっています。

 

借入金額や借入金利などの条件が同じでも、返済期間が15年延びることで、約675万円の利息を多く支払うことになります。

 

 

変動金利

 

続いて、借入金利が年0.6%の変動金利で借り入れたときの返済額をみていきましょう。

 

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返済期間50年の方が、毎月の返済額は28,429円少なくなります。借入金利年1.8%の固定金利を選択したときと、減少幅にさほど変わりはありません。

 

総返済額と利息額の差については、約195万円となりました。金利が低いと利息額も減るため、返済期間を長くしたときの増加分も減少します。

 

 

返済期間50年の住宅ローンを組むメリット

 

続いて、返済期間が50年の住宅ローンを組むことのメリットをご紹介します。主なメリットは、以下の2点です。

 

  • 毎月の返済負担を減らせる
  • 団体信用生命保険に長く加入できる

 

1つずつ解説します。

 

 

毎月の返済負担を減らせる

 

2023年12月現在も、住宅ローン金利は変動金利を中心に歴史的な低金利が続いている一方で、不動産価格は上昇傾向にあります。

 

そのため「マイホームを購入したいとは思うが、毎月の返済額が高くて手が届かない」と感じたことがある人も多いのではないでしょうか。

 

返済期間を50年にすると、毎月の返済額を少なくできるため、借入金額を減らさずとも住宅を購入できる可能性が高まります。

 

また、返済期間が35年未満の住宅ローンでは手が届かない価格帯の住宅を購入することも可能になるでしょう。

 

 

団体信用生命保険に長く加入できる

 

団体信用生命保険(以下、団信)とは、住宅ローンの借り手が亡くなったときや、所定の高度障害状態になったときに、ローン残債を保障する保険のことです。

 

住宅ローンの返済途中で、家計を経済的に支える人に万が一のことがあったとしても、団信に加入していれば、残された家族は返済負担を負わずに済みます。

 

団信の保障期間は、住宅ローンの返済期間と同じです。返済期間が50年の住宅ローンを組むと、団信の保障を長く受けられることになります。

 

また、団信に特約を付けると、がんや三大疾病(がん・心筋梗塞・脳卒中)などにも、長期にわたって備えることも可能です。

 

特約を付ける場合はローン金利に上乗せをして保険料を支払う必要がありますが、近年は上乗せ金利なしで、がんや働けなくなる状態などに備えられる団信も増えてきました。

 

 

返済期間50年の住宅ローンを組むデメリット

 

毎月の返済額を抑えられるからといって、よく検討することなく返済期間50年の住宅ローンを組むのはおすすめできません。

 

返済期間が長期にわたる住宅ローンには、以下のようなデメリットがあるためです。

 

  • 返済総額が増える
  • 返済途中で売却しにくくなる
  • 老後生活にも返済が及ぶ可能性がある

 

それぞれについて解説します。

 

 

総返済額が重くなる

 

返済期間50年になると毎月の返済負担を減らせますが、利息総額や総返済額は増えてしまいます。

 

十分に返済計画を立てずにローンを組んでしまうと、将来的に手元に残るお金が少なくなって、資金不足が生じやすくなるでしょう。

 

また、返済期間が長くなると、金利上昇リスクも高くなってしまいます。

 

変動金利は借入当初の返済負担を抑えられますが、それが50年も続くとは限りません。

 

変動金利で長期の住宅ローンを組む場合は、返済途中で金利が上昇し毎月の返済額が増えることも想定して返済計画を立てることが大切です。

 

 

返済途中で売却しにくくなる

 

元利均等方式の住宅ローンを組む場合、返済当初は毎月の返済額に占める利息の割合が多く、元金は少なくなります。

 

返済期間が長ければ長いほど元金の減りは遅くなるため、途中でマイホームを売却する際、物件価格が残債を下回る「アンダーローン」になるリスクが高まります。

 

「転勤で勤務地が変わった」「子どもが独立して家の広さを持て余すようになった」「離婚が決まった」などの理由で、返済中に住宅を手放す人は少なくありません。

 

売却代金でローンを完済できない場合、マイホームを売却するためには手持ち資金で補わななければません。

 

手持ち資金が不足しているために住宅ローンの完済が見込めず、家を手放したくても手放せない状況になることもあります。

 

 

老後生活にも返済が及ぶ可能性がある

 

定年退職を迎えて老後生活に入ると、主な収入源は給与収入から国の年金に変わり、世帯収入は低下するのが一般的です。

 

働いていたころは問題なく返済できていたとしても、収入が減少したセカンドライフでは、返済負担が家計を圧迫しやすくなります。

 

返済期間が50年の住宅ローンを組むと、老後も返済が長く続き、生活が苦しくなってしまうことがあります。

 

 

今後のライフプランも踏まえて慎重な検討を

 

返済期間が50年にもなると、転職や転勤、子どもの進学や独立、定年退職など、さまざまなライフイベントが、住宅ローンの返済と重なりやすくなります。

 

借入当初は毎月の返済額が問題なかったとしても、生活背景が変わることで、将来的に家計の収支が変化して返済が苦しくなるかもしれません。

 

返済期間が50年の住宅ローンを組む場合は、不動産会社やファイナンシャルプランナーなどに相談し、今後のライフプランを踏まえて慎重に返済計画を立てることが重要です。

 

まとめ

  • 返済期間35年超の住宅ローンを組める金融機関が増える背景には、近年の不動産価格の高騰がある
  • 返済期間が50年の住宅ローンには「毎月の返済負担を抑えられる」「団信に長く加入できる」といったメリットがある
  • 一方で「総返済額が増える」「返済途中で売却しにくくなる」「老後生活も返済が続く可能性がある」といったデメリットもある

 

 

【コラム執筆者】

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品木 彰(シナキ アキラ)

プロフィール

保険・不動産・金融ライター。ファイナンシャルプランナー2級技能士。大手生命保険会社や人材会社での勤務を経て2019年1月に独立。年間で700本以上の記事執筆に加えて、不動産を始めとしたさまざまな記事の監修も担当している。

https://daisakukobayashi.com/